近年、若者を中心に人気が広がる「エナジードリンク」。10代の子どもが自動販売機やコンビニで買える清涼飲料水だが、よく飲んでいる子どもたちの心身の異変を懸念する声が教育現場から上がっている。疑われているのが、エナジードリンクに含まれる成分「カフェイン」の影響だ。今回、日本体育大学・野井真吾研究室と共同で、全国の小中高など1096人の養護教諭にアンケートを実施。その結果をもとに広く実例を取材した。子どもたちの身に何が起きているのか。(ジャーナリスト・秋山千佳/Yahoo!ニュース 特集編集部)
「人が変わった」中3男子
「テンションのアップダウンが激しすぎて、(飲み続けていたら)包丁持って暴れたりしていたんじゃないかな」
静岡県に住む中学3年生のツバサ君(仮名)は、1日1本以上エナジードリンクを飲んでいた中学1〜2年生の時を振り返る。当時は周囲から「人が変わった」と言われていたという。
入学当初はどちらかというとおとなしい生徒だった。だが、ある時期から、教室中に響き渡るような高笑いをしたり場違いなふざけ方をしたりするなど、周囲が戸惑う行動を繰り返すようになった。それを注意する教師に激しく食ってかかるようにもなった。一方で、帰宅すると、ゆううつになり、母親に「頭痛い」「死にたい」と頻繁に訴えていた。
ツバサ君が初めてエナジードリンクを手に取ったのは小学校卒業からまもない時期。最初は体がだるいと感じた時にときどき飲む程度だったが、中1の冬頃から毎日飲むようになる。カフェイン量のより多い商品を選ぶことが多くなった。
「モヤモヤした気持ちを消したくて、寝たくないから飲む。夜10時ごろに飲んで1時間くらいして効いてくると、もうじっとしてられない。スマホでチャットしたり、テンションの高い曲を聴いたりして、気づいたら朝という感じ」
この時期のツバサ君の様子を、小学生時代からツバサ君を知る保健室の養護教諭は「彼本来の姿じゃなく、おかしいと感じていた」という。
このような心身の異変は、ツバサ君に限らない。全国の養護教諭から、エナジードリンクを常飲する子どもたちについて、懸念の声が上がっている。
養護教諭1096人のアンケート
筆者は2010年から各地の中学校の保健室の取材を続けており、その過程で養護教諭から子どもたちの「異変」を耳にするようになった。エナジードリンクを飲んだ後に、頭痛や頻脈(脈拍数が多い状態)などで保健室を訪れた子どもたちからも直接話を聞いていた。
子どもへの影響に焦点を絞ったエナジードリンクやカフェインについての調査や研究は見当たらなかった。そこで、筆者は日本体育大学の野井真吾教授(学校保健学)と共同で、小中高校などの養護教諭を対象に、子どものエナジードリンク摂取に関するアンケートの準備を今年1月から進め、8月に実施した。全国養護教諭連絡協議会など1都2県で行われた計4回の研修会で、全国各地から参加した養護教諭にアンケート用紙を配布。1096人から回答を得た。
アンケート結果で「自分の学校に、エナジードリンクを習慣的に飲んでいる子どもがいる」と答えたのは、中学で24.4%、高校では48.4%だった。自由記述欄では「問題がある子どもを把握している」という趣旨の回答が80件あった。
こうした回答を寄せた養護教諭の協力を得て、子どもたちへの取材を行った。冒頭のツバサ君もその一人だ。
「心臓がバクバクした」高1男子
新宿から電車で約30分の私立の進学校。高校1年生の男子は、中学生の時、先輩が手にしているのを見て興味本位で飲んでみたら「夜遅くまで起きられちゃった」ことから、テスト前夜には連日2本飲むことが習慣となった。
今年5月、中間テストの前夜、いつものように飲んだところ、突然心臓が痛み始めた。痛みは1時間ほど続き、「1キロくらい猛ダッシュした後みたいに心臓がバクバクして焦った」。結局、その夜は勉強できないまま、翌日試験に臨んだという。
今回のアンケートとは別に、筆者は問題事例を取材の過程で見てきた。
東京都内の中学校。3年生の女子生徒は、受験勉強のため、エナジードリンクを1日2〜4本飲んでいた。頭痛や頻脈が頻繁に起こるようになり、勉強をやめて、夜通しポルノ描写のある映像を見ては「私もやりたい」などと保健室で口にしだした。
「エナジードリンクを飲まないとやってらんない」。その言葉に依存を疑った養護教諭が諭すと、生徒は「それでも手が出ちゃうの!」と叫んだ。養護教諭や友人らが説得を続け、生徒が飲むのをやめると、次第に異変は落ち着いていったという。
頻脈、胸痛を引き起こす「カフェイン中毒」
「興奮状態やいらつき、頭痛はカフェイン中毒のよくある症状です。頻脈や頻呼吸、胸痛などが現れる人もいるし、依存性もあります」
カフェイン中毒に詳しい上條吉人・埼玉医科大教授はそう語る。
冒頭のツバサ君の問題行動や身体的な異変についても、エナジードリンクを日々飲む習慣と一致して出現していることから、カフェイン中毒の影響である可能性が「十分にある」と上條教授は指摘する。
日本でカフェインの健康被害が注目されるようになったのは2015年12月、九州の20代男性の死亡例が報道されたことだった。24時間営業のガソリンスタンド勤務だったその男性は、エナジードリンクを常飲しており、福岡大学法医学教室の分析では、胃からはカフェイン錠剤も見つかったという。血液からは致死量に達する1mlあたり0.182mgのカフェインが検出された。
今年6月、上條教授が日本中毒学会で発表した調査では、2011〜2015年度に全国38の救急施設に搬送されたカフェイン中毒患者は101人。7人が心停止で、うち3人が死亡した。患者の多くは濃度が高く安価なカフェイン錠剤が主因と診断されているが、エナジードリンクだけで搬送された例も4人あった。
「子どもの手が届きやすい」エナジードリンク
そもそもカフェインは、コーヒー(1杯あたり約65mg)やお茶など多くの嗜好品に含まれる。だが、清涼感のある炭酸飲料であるエナジードリンクは「子どもの手が届きやすい」と複数の養護教諭が指摘する。代表的なエナジードリンクのカフェイン含有量は、レッドブルが250ml缶で80mg、モンスターエナジーは355ml缶で142mgだ。
市場調査会社の富士経済によると、国内のエナジードリンク販売額は2007年からの10年でおよそ34倍に伸びている。
「飲んだら受験勉強に集中できるよ」と
野井教授とのアンケートや調査後の養護教諭や生徒への聞き取りを整理していくと、子どもがエナジードリンクを摂取する目的は、おおよそ二つに大別される。
一つは勉強やスポーツのため、もう一つは日常の息苦しさ・生きづらさを紛らわせるため、だ。
まず前者の勉強やスポーツ。中学や高校、特に進学校では、テスト勉強や受験勉強を機にのめり込む生徒がいるという回答が複数あった。
筆者が会った都内屈指の進学校である私立高校に通う1年生女子は「高校受験の時に、進学塾の大学生の先生から『飲んだら集中できるよ』と勧められて飲み始めた」と取材に答えた。
神奈川県の県立高校では、バスケットボール部の2年生の女子生徒が、試合間の休憩時間に「気持ち悪いし、心臓が痛い」と訴えた。平常時は1分間に70回台の脈拍数が、運動直後ではないのに110回を超えていた。同校の養護教諭が聞き取りをしたところ、直前にエナジードリンク2本(カフェイン計280mg)を飲んでいたことがわかった。女子生徒は「飲めばパフォーマンスが向上する」と信じ、試合前の「ルーティン」となっていた。
養護教諭はこの女子生徒について「彼女は『食事代わり』というくらいよく飲んでいた」と話す。
「それが関係しているのか、内科健診で心臓に異常がなかったのに、突然頻脈が発生し、心臓が痛いという訴えが1年間で4回もありました」
家庭などに複雑な事情を抱える子どもがエナジードリンクを常飲するケースもある。
過剰摂取後に救急搬送の短大生
静岡県内の中学校の養護教諭は、経済的に厳しい家庭環境の子どもほどエナジードリンクへの依存性が高い可能性があると指摘した。2017年3月に卒業した男子2人は「多い日は5本」と日常的に飲んでいた。2人とも母子家庭で、ワイシャツが破けても買い換えずに着続けるなど、経済的に苦しいところがあったが、どちらも親から食費として渡されるお金までエナジードリンクに費やしていた。
また、夜中まで起き続けることで2人とも睡眠時間が短く、そのせいか学校でささいなことにもイライラするような態度が続いていた。荒れた生活を心配していた養護教諭は2人と保健室で話をするようにした。「受験勉強が手につかず、自己肯定感も著しく低下していた」という。
「原因不明」と診断されているものの、エナジードリンクの過剰摂取後、救急搬送された事例もある。
東京都内の短大。養護教諭によると、4年前、男子学生がテストの最中に過呼吸状態になった。学生は「心臓のあたりにドンと衝撃が走った」と語り、さらに手足のしびれも訴えたため、救急車を呼んだ。
男子学生は前日あまり食事を取らずに、テスト勉強のために一晩でエナジードリンクを5本飲み、さらに朝登校してテスト前にもう1本飲んでいたという。24時間のカフェイン摂取量は合計840mgになっていた。養護教諭はカフェイン中毒を疑い、学生にその可能性を指摘した。
「しかし、このことを学生自身が搬送先の医師に伝えても、カフェインに対する検査はされなかった。結局、『原因不明』ということで終わったそうです」(養護教諭)
都内の中学校でもエナジードリンクを1日4本(カフェイン計560mg)ほど飲んでいるという男子生徒が授業中に倒れて救急搬送されたが、行われた検査の内容としては異常なし。診断は原因不明とされたという。
前出の上條教授は、「診断する医師にカフェイン中毒という観点がなく、見逃されている症例がたくさんあると思う」と言う。
「カフェインは昔からコーヒーなどの嗜好品に入っている天然の成分だから、たいしたものじゃないという先入観が一般にある」
カフェインの半減期は成人で2〜7時間
米国精神医学会の医師らによる医学書『アディクション・ケースブック』によると、カフェイン中毒の特徴的な症状としては、興奮/不安/ふるえ/頻脈/利尿/胃腸系の障害/痙攣/不眠がある。さらには、黙っていることができず話し続けたり異常な妄想にとらわれたりといった、躁病に似た症状も見られるという。
カフェインの血中濃度が最大になるのは摂取から1時間以内で、その濃度が半減するまでの「半減期」は、成人でおおむね2〜7時間だ。
そこで問題となるのが、子どもにおけるカフェインの作用だ。
国立成育医療研究センターの和田友香医師は、「代謝酵素が未熟な子どもの場合、カフェインの半減期はもっと長く、新生児の場合は100時間以上かかる」と警鐘を鳴らす。
「子どもにとってタバコやお酒は危険だと誰もが思うでしょうが、カフェインも同じ。中毒になりかねないものなのに、あまりに知られておらず啓発もされていないのが現状です」
死亡例でも子どもと成人ではカフェインの摂取量で違いがある。
日本中毒学会理事の監修による『臨床中毒学』によれば、成人でも短時間にカフェイン1g以上の過剰摂取をするとカフェイン中毒を引き起こし、5〜50gでは死に至る可能性がある。だが、体が小さい子どもの場合、その量より少なくても中毒を引き起こす可能性がある。
米国では、2011年にメリーランド州の14歳の少女が、24時間で700ml入りモンスターエナジー2本(カフェイン計480mg)を摂取し死亡。検死によって死因は「カフェインの毒性による不整脈」とされ、訴訟が起こされた。その米国では、薬物乱用・精神衛生管理庁(SAMHSA)によると、救急外来で受診したエナジードリンク関連の患者数は、2011年で2万人超。2005年のおよそ14倍に増えている。1日に50人以上が救急外来で病院を訪れたことになっている。
カナダ保健省は注意喚起
カナダ保健省は2010年、13歳以上の青少年や成人について1日に体重1kgあたり2.5mg以上のカフェインを摂取しないようよう、注意喚起を行った(12歳以下はさらに少量)。日本では独自の基準値を設けず、農林水産省や内閣府の食品安全委員会が、カナダのこの数値を引用して「過剰摂取には注意が必要」と示している。
この基準値に照らすと、「モンスターエナジー」の場合、355mlの缶1本分にカフェイン約142mgが含有されているため、体重56kg未満の子どもは1日で飲みきると基準を超える計算になる(カフェイン2.5mg×体重56kg=140mg)。
欧米におけるカフェイン摂取の事例に詳しい米国在住の内科医・大西睦子氏によると、科学的検証はまだ必要だとしつつも、米国の医学界ではエナジードリンクのリスクを指摘する報告が複数上がっているという。
「たとえば、2013年2月、医学雑誌『Pediatrics in Review』でバージニア州のポーツマス海軍医療センターの研究者は、アルコール入りエナジードリンク1缶(695ml)を飲むことは『ワインのボトル1本あるいはビール6缶(355ml)と、5杯ものコーヒーを一緒に飲むのと同じ影響がある』と指摘しています」
大西氏は「カフェインにはある程度のリスクがあることは、子どもにもっと知られてよいのではと思います」と話す。
カフェインの「依存性」
米国精神医学会の診断基準(DSM-5)によれば、カフェインには「依存性」はあるものの、使用そのものを治療の対象としなければならないような「依存症」はないとされる。つまり、カフェインの過剰摂取は様々な問題を引き起こすものの、「十分に教育して理解すれば自分の意思でやめられるはずだ」と見なされている。
だが、社会的な背景を含めて考えると、そう単純なわけではないと指摘する研究者がいる。精神科医で国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部長の松本俊彦氏だ。
「依存には、単に物質の薬理作用だけでなく、その人の置かれているつらい状況、抱えているトラウマという心理・社会的な要因も関係しています。その物質を摂取することで、悩みや苦しみが一瞬でも和らいだり消えたりするという体験をすると、やめられなくなる」
松本氏は、「カフェインは、薬理学的には覚せい剤と同じく気分を高揚させるアッパー系ドラッグの一種」だと言う。
たとえば受験生や進学校に通っているような子どもの場合、「ちょっとでも気を抜いたらライバルが迫ってくるのでパフォーマンスを維持しないといけない、というものすごいプレッシャーの中で生きている子たちにとって、エナジードリンクは大きな必要性がある」と松本氏は解説する。
前出の米国在住の大西医師によると、米国でも「スタディドラッグ」という言葉がある。多くの子どもが夜遅くまで勉強するためにエナジードリンクを摂取しているというのだ。
松本氏が最も不安視するのが、日常の息苦しさ・生きづらさを紛らわせるための摂取だ。
いじめ、暴力、家庭内の不和、貧困など、身近な問題やトラウマを抱えている子どもの場合、カフェインをなかなかやめられないという。
「健康な子たちであれば、エナジードリンクもすぐ飽きるかもしれない。しかし、つらい境遇を抱え、やっとこさ表向き普通の中学生をやっているような子たちは、飲むとすこし気分がスッキリする。そこで、ハマっちゃうんだろうなと。つまり快感じゃなくて苦痛の緩和こそが、子どもを依存症にさせるのです」
厚生労働省とメーカーの考え
松本氏は「子どもたちがあまりに早い段階でカフェインに遭遇しないような販売上の気遣いは必要」と話す。だが、エナジードリンクは清涼飲料水という「食品」。自動販売機やコンビニエンスストアで目立つ位置にあることも珍しくない。また、一部商品に「お子様、妊娠中または授乳中の方、カフェインに敏感な方にはお勧めしません」といった注意喚起表示はあるが、実際の販売現場では子どもに対する規制はない。
こうした状況の中、厚生労働省はどう考えているのか。
厚生労働省の食品基準審査課と医薬品審査管理課の担当官は、死亡事故を含め、カフェイン中毒による搬送事例が起きていることは把握していると認める。その一方で、カフェインに対して規制まで行うのは難しいという見解を示した。
カフェインは天然由来の食品に含まれる成分のため、含有量ではなく、効果効能をうたうかどうかで医薬品か食品かの線引きがされる。そしてエナジードリンクのような食品の場合、「カフェインの量に法的な上限はない」と解説した。
だが、カフェイン含有量や販売上の規制がないままで、子どもたちへの健康被害は防げるのだろうか。その問いに同省の新井剛史衛生専門官はこう答える。
「人によって(カフェインへの)感受性は異なるので、まずはカフェインのリスクを知っていただくことが大事かと思っております」
そのため子どもに特化せず、周知を図る方針で、今年7月、同省のサイトに過剰摂取への注意喚起の文章を掲載した、という。
メーカー側はどのように考えているのか。
世界のエナジードリンクを代表する2社、モンスターエナジー社(本社・米国)とレッドブル社(本社・オーストリア)に日本法人を通じて、書面で2点について回答を求めた。
1点目は、子どもの飲み方について摂取量や頻度での目安があるのかどうか。2点目は、われわれの行ったアンケートに基づき、頻脈や頭痛など心身の不調が出ており、カフェインの影響が疑われていることについて、どのように考えているか。
モンスター社は、1点目について、「10代を含めた全ての年齢層で、エナジードリンクの消費量は低水準を維持しています」とし、カフェイン含有量は同容量のコーヒー飲料よりも低く、安全だとしたうえで「エナジードリンクを日常的に飲んでいるのはごくわずかな割合の未成年のみです」と回答。2点目の問いについては、欧州食品安全機関(EFSA)の研究から、「エナジードリンクを摂取する10代において、エナジードリンクまたはカフェイン摂取により健康に影響を及ぼすリスクが増加したり、特有のリスクが現れたりするということはない」とし、「エナジードリンクが多くの重篤な症状の原因であるという指摘には全く根拠がなく、医学・科学文献により裏付けられているものではない」と回答した。
レッドブル社は、1点目の問いについては、「子どもは体重が軽いので、一般的に成人よりカフェイン摂取を控える必要があります」と体重とカフェインの関係から摂取を控える必要性を指摘。その上で「そのため、レッドブル・エナジードリンクは子どもたちにマーケティングはしておりません」と記した。ただし、2点目の問い──子どもに起きている頻脈や頭痛などの心身の不調に関する問いには直接答えず、250mlのレッドブルに含まれるカフェインはコーヒーと同じ含有量であることから、「すべての年齢層の人々が日々カフェインを摂取する主な方法とエナジードリンクを分けて扱う科学的な根拠はありません」とした。
無規制の販売のあり方は妥当か
エナジードリンクの販売のあり方については、世界保健機関(WHO)欧州事務局が2014年、小児・青少年へのエナジードリンク販売の規制を提唱しており、すでに取り組みを始めた国もある。
リトアニアは2014年、未成年(18歳未満)へのエナジードリンクの販売を禁止、未成年に販売した者は400リタス(約16300円)の罰金が科せられることになった。エジプトでは2014年、エナジードリンクの広告が全面的に禁止されるとともに、教育・スポーツ関連施設でのエナジードリンク販売が禁止された。また米国でも、2013年、米国医師会が20歳未満へのエナジードリンク販売禁止を呼びかけるといった動きが広がっている。
前出の松本氏は、「日本でもたとえばコンビニでアルコールの販売エリアを分けているようにエナジードリンクも別枠にするとか、15歳以下や、せめて小学生への販売はダメとか、どんなことができるか広く議論したらいい」と述べる。
一方で、それ以前に考えなければいけない大事なことがある、とも言う。
「エナジードリンクにはまる子どもたちは、カフェインというターボチャージャーをつけてやっと普通の子になれると思っている可能性がある。そんな彼らからすれば、大人に無理やり取り上げられたら『もう人並みに生きていけない』という絶望感が生まれる。そういう子たちを救うためには、『ありのままでいいんだよ』というメッセージをいかにいろんな形で伝えられるかと考えることも必要です」
アンケートの詳細など関連記事『「エナジードリンク」養護教諭アンケートから――現場の懸念浮き彫りに』はこちら。
秋山千佳(あきやま・ちか)
1980年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社に入社。記者として大津、広島の両総局を経て、大阪社会部、東京社会部で事件や教育などを担当。2013年に退社し、フリーのジャーナリストに。著書に『ルポ 保健室 子どもの貧困・虐待・性のリアル』『戸籍のない日本人』。公式サイトで本件に関する情報を募集中。
[写真]
撮影:長谷川美祈
写真監修:リマインダーズ・プロジェクト
後藤勝