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国民が考えるODAの必要性とその理由

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ ODAの戦略とそれを介して形成される「自由と繁栄の弧」(外務省解説ページより

ODAは「資源安定供給に貢献」

ODA(Official Development Assistance、政府開発援助。政府あるいは政府の実施機関により、開発途上国や国際機関に供与・貸与される、資金や技術提供による協力行為。開発途上国の経済や社会の発展、福祉の向上を目的としている)は支援地域の適正化や額などの点で、しばしば報道で見聞きすることがある。しかしその一方、ODAが果たした成果に関してはほとんど伝えられることは無い。外務省などでは専用ページを設け(一例:外務省: 国際協力 政府開発援助 ODAホームページ)、その実績や現象を伝えている。それによればODAは「国際社会での重要な責務であり、日本の信頼をつちかい、存在感を高めることに資する役割を持つ」「開発途上国の安定・発展化に寄与することで、国際平和に依拠し、資源・食料を海外に依存する日本にはプラスとなる」などとし、その存在意義を解説している。

それでは世間一般からは、日本が提供しているODAはどのような意義、必要性があると思われているのだろうか。次のグラフは内閣府が2013年11月に発表した外交に関する世論調査の結果を基にしたものだが、一番多い意見は「エネルギー資源などの安定供給の確保に資するから」とするものだった。

↑ 政府開発援助を実施すべき観点(複数回答)
↑ 政府開発援助を実施すべき観点(複数回答)

日本は石油、ガス、石炭などエネルギー資源の大部分を海外に依存している。諸外国の情勢不安定化は資源供給の不安定化につながる。前世紀のオイルショックが良い例だ。回答率が高いのも当然の話。

次いで多いのは「国際社会での日本への信頼を高める必要があるから」「先進国として開発途上国を助けるのは、人道上の義務または国際的責任だから」。双方とも表現は異なるものの、目指すところはほぼ同じ。

さらに「東日本大震災に際して得られた各国からの支援に応えるためにも、引き続き協力すべきだから」との意見が42.6%。「恩には恩で報いるべき」という、当たり前ではあるが、だからこそ難しい行動としてODAを認識している意見が多数に及んでいる。

他方ODAそのものへの反対派も4.8%と少数ではあるが存在する。また「中国などによる開発途上国への進出が著しく、日本の存在感を確保する必要があるから」との意見も2割強確認できる。今件調査項目は今回がはじめてのようで経年データは無いものの、昨今とみに語られている要件であり、今後この項目の回答率は上昇していくものと考えられる。

世代で異なるODAへの意識

この回答を世代別に再整理すると、中堅層が高い値を示し、若年層と高齢層は低い傾向が見受けられる。

↑ 政府開発援助を実施すべき観点(複数回答)(世代別)
↑ 政府開発援助を実施すべき観点(複数回答)(世代別)

若年層はどの項目でも回答率が低めで関心そのものの薄さが確認できる。ただし「国際社会での信頼向上」「海外進出の観点で日本の経済に資する」の2点では他世代と同じ程度の回答率を示しており、最低限の情報は知っているようだ。一方、高齢層はODAそのものへの否定と「分からない」との意見が多いのが目に留まる。

また特定項目、具体的には「東日本大震災への恩に報いる」「中国の攻勢に対抗する」の2項目では世代間格差がほとんど無く、とりわけ前者では若年層で高い値を示している。世代による差異が無い、世代を超えた意見として、注目に値する動きといえよう。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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