トランプ集会で、PokemonGoをプレイしたら怒られた
7月の2週間のうちに、こんなに異なる党大会と、両候補者の集会を見るとは。
共和党大会が開かれたオハイオ州クリーブランドで、先輩のジャーナリストや、エコノミストに会った。
「こんなに白人ばかりの大会は、見たことがない」
と口をそろえる。 本当に、共和党大会は白く、民主党大会は、いろんな人種がいて、カラーが様々で、非白人の筆者としては居心地が良かった。
会場の外でも、大統領候補となったドナルド・トランプ氏の支持者は、ニューヨークのような大都会では見たことがないような人ばかりだった。
オハイオ州は、「オープンキャリー」と言って、公共の場所で誰もが銃を携帯していいことになっている。
「(武器を保持する権利を認めた)合衆国憲法修正2条を行使しているんだ」と、短銃だけでなく、マシンガンまで複数携帯している人もいた。
白人至上主義者やキリスト教至上主義者もたくさんいた。
「差別主義者と話をしたい人、どうぞ」
という模造紙を持っている若者がいた。フォトグラファーらは、皆遠くから撮影していて、近づかない。思い切って話しかけると、こう言う。
「自分は、白人だから、自分の人々のことを心配しているんだ。移民は来るべきではないし、女性は警察や軍隊に入るべきではない」
彼が話せば話すほど、私との会話を撮影していたジャーナリストやらブロガーが「白人だって、移民だったんだ」と反論し、やがて言い争いになり、インタビューは続かない。
「エイズや結核は、難民移民が持ってきたんだ」と主張する白人の宗教グループもいた。
7月27日、ペンシルベニア州フィラデルフィアで、民主党大会が開かれている最中、普通は対立候補が集会を開いたりしないのだが、なんとトランプ氏は、同州スクラントンで集会を開いた。
「俺は、集会を開くぞ。誰が気にするというんだ」
とトランプ氏。
メディアとして入れなかったので、体育館のベンチに座らされ、2時間以上、トランプ氏がフロリダ州から飛んでくるのを待つ。そこで、ポケモンGOをプレイしていた。
すると、真後ろに座っていた男の子づれの父親が、太い声で、私とフォトグラファーに怒鳴った。
「ポケモンフリークめ、それをやめろ、ガキの時代から卒業するんだ!」
見渡すと、白人ばかり。アジア系もアフリカ系もラティーノもいない。1000人ほどの会場で、非白人は、自分一人といってよかった。
暇つぶしにいつも読むニューヨーク・タイムズも、リベラル系だから、後ろから見られていると思うと、読めない。米国人フォトグラファーが、手洗いに行ってしまうと、ますます心細くなった。
怖い瞬間は、トランプ氏がスピーチしている間にもあった。毎度のことだが、ステージ真ん前にあり、テレビカメラがずらりと並び、その下では、記者が原稿を書いているメディア・プールを人差し指で指して、「メインストリーム・メディアは、最も不誠実なやつらだ」と叫ぶ。
すると、スクラントンの人々は、ブーっと言って総立ちとなり、メディア・プールを指差し、まるで犯罪人であるかのように、メディア陣の写真をスマホで撮り始めた。毎回のことだが、メディア・プールにいなくても、ぞっとする瞬間だ。
これに対し、民主党大会の参加者や、ヒラリー・クリントン氏のライバルだったバーニー・サンダース上院議員への代議員投票を集めようとしていた「オキュパイDNC(民主党大会)」は、若い人が多く、開放的な雰囲気で、作ってくる看板などもクリエイティブだった。いろんな人種の人がいて、子供の参加も多かった。
7月29日、民主党大会が終わった翌日、クリントン氏の集会がフィラデルフィアであった。初の女性大統領候補を見ようという人々が3000人以上集まり、会場に入りきれない人が溢れた。
DJ経験が長い友人フォトグラファーは、クリントン陣営の方の音楽の選択が、トランプ氏よりずっといい、と指摘した。アリシア・キーズやレディ・ガガの最新曲があり、ファレル・ウィリアムズのHappyも流れて、クリントン氏を待っている間、人々が踊り始め、ウェーブを始めた。
これに対し、トランプ氏の音楽は、プッチーニの「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」に始まり、カントリーミュージックが続き、なぜかエルトン・ジョンの「Funeral For A Friend/Love Lies Bleeding」という楽器が中心の重たい曲が流れ、それでもトランプ氏が到着していなかったので、「誰も寝てはならぬ」に再び戻った。これで、DJを雇っていないことがバレている。
若くて、多様な人が集まるリベラル派に比べ、白人ばかりで年齢層が高く、トランプ集会では、ツイートしたり、セルフィする人もほとんど見なかった。これほどの隔たりを目の当たりにすると、米国の有権者は、大きく二つに分断されているのを痛感する。