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ヘンリー公爵とメーガン夫人が“公務”のような海外訪問を重ねる理由

木村正人在英国際ジャーナリスト
ヘンリー公爵とメーガン夫人のコロンビア訪問(写真:ロイター/アフロ)

■レッドカーペットで熱烈歓迎

[ロンドン発]英王室を離脱したヘンリー公爵(王位継承順位5位)とメーガン夫人が今年に入ってナイジェリアに続きコロンビアを訪問した。

チャールズ国王とキャサリン皇太子妃が「がん治療」を告白する中、ヘンリー公爵とメーガン夫人が“公務”のような海外訪問を重ねる理由は何なのか。

5月、ナイジェリアの首都アブジャに到着したヘンリー公爵とメーガン夫人はレッドカーペットで熱烈歓迎を受けた。

メーガン夫人は約2年前、自身のポッドキャストで遺伝子検査の結果「自分は43%ナイジェリア人 」と分かったと打ち明けている。

3日間の私的訪問だが、幼いヘンリー公爵が最愛の母ダイアナ元皇太子妃と一緒の感動的な肖像画を含む贈り物でもてなされた。

ナイジェリアは北東部のイスラム国西アフリカとボコ・ハラムというテロリストの問題を抱える。

■ナイジェリア国防参謀総長が招待

ナイジェリアのクリストファー・ムーサ国防参謀総長が個人的な立場でヘンリー公爵とメーガン夫人を招待した。

学校、病院訪問、スポーツを通じて若者に力を与えるジャイアンツ・オブ・アフリカ財団との交流が行われた。

メンタルヘルス、女性のエンパワーメント、スポーツなど普段から2人が力を入れているテーマに焦点が当てられた。

ハイライトは、女性として、またアフリカ出身者として初めて世界貿易機関(WTO)を率いることになったンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長と共同開催した女性のリーダーシップ・イベントだ。

メーガン夫人は自身のナイジェリアのルーツを明らかした上で「ナイジェリアは私の『母なる国』。ナイジェリア女性は勇敢で、たくましく、勇気があり、美しい」と称えた。

■「ネットで起きたことは数分以内に街頭に広がる」

8月にはコロンビア初の黒人女性副大統領フランシア・マルケス氏に招かれ、ボゴタから始まる4日間のツアーに出掛けた。

さまざまな社会問題に焦点を当て、コロンビア文化を称える多面的な訪問となった。

中心テーマの一つはデジタル・テクノロジーが子供たちに与える悪影響への対処。

ヘンリー公爵はネット上のAI(人工知能)や偽ニュースの影響について「私たちはもはや事実を議論しているわけではない」と警戒を呼びかけた。

「10年前ならネットで起きたことはネットにとどまると言えたが、今ではネットで起きたことは数分以内に街頭に広がる」(ヘンリー公爵)

メンタルヘルス、女性のエンパワーメント、文化鑑賞を促進するイベントにも参加した。

■女性とアフリカのルーツにフォーカス

2人はアフリカとのつながりが強い村サンバジリオデパレンケを訪れ、メーガン夫人は「アフリカにルーツを持つ女性とパワー、平等の声」サミットで講演、公平性と女性のエンパワーメントの重要性を強調した。

チャールズ国王とウィリアム皇太子の露出度が低下する中、ヘンリー公爵とメーガン夫人の影響力が増したのは間違いない。

“人寄せパンダ”として利用されただけという皮肉な見方もあるが、女性とアフリカのルーツにフォーカスしたメーガン夫人の交流戦略はしたたかだ。

キャサリン妃はウィリアム皇太子を支える女性という枠から踏み出すことができないだけに、自由なメーガン夫人に大きな差をつけられている。

ヘンリー公爵は兄のウィリアム皇太子を見返したいというライバル意識を燃やす。

ヘンリー公爵とメーガン夫人の海外訪問は、英王室という古臭い物差しがいかに時代遅れなのかを浮き彫りにしている。

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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