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再び、タイガー・ウッズとフィル・ミケルソンの黄金時代!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
タイガー・ウッズとフィル・ミケルソン。2人の人気と存在感は昔も今も多大だ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 カリフォルニア州ロサンゼルス近郊の名門リビエラCCで開催されるジェネシス・オープン(2月14日~17日)に大きな注目が集まっている。

 人々の視線が向けられているのは、タイガー・ウッズとフィル・ミケルソンの2人だ。ウッズ43歳、ミケルソン48歳。若年化に拍車がかかる米ツアーにおいては、どちらも「オールド」には違いない。

 だが、ウッズはメジャー14勝を含む通算80勝、ミケルソンはメジャー5勝を含む通算44勝。彼ら2人を上回る選手は、現在の世界ランキング上位に付ける若者たちの中には、まだ一人もいない。

 とはいえ、ウッズもミケルソンも、すべて順風満帆な人生を過ごしてきたわけではない。「引退」の二文字を現実として感じ、苦悩した日々を経験しながらも、再び奮起し、再び「優勝」の二文字を手に入れたばかりだ。

 ウッズは生涯4度に渡る膝の手術と4度に渡る腰の手術、さらには2009年の不倫騒動や離婚、2017年の逮捕劇といった私生活面の「あれこれ」も乗り越え、昨年9月の米ツアー最終戦、ツアー選手権を制して、2013年以来、5年ぶり、1876日ぶりの復活優勝を遂げた。

 ミケルソンは2013年の全英オープン優勝後は持病の関節炎が悪化し、一時期はゴルフへのモチベーションを失いかけていた。2017年は長女の高校の卒業式を優先して、優勝を悲願に掲げているはずの全米オープンを欠場し、世界を驚かせた。だが、昨春、47歳にしてメキシコ選手権を制し、4年半ぶりの復活優勝を遂げてからは輝きを取り戻した。

 そして今年は年明け早々からデザート・クラシックで優勝争いを演じ、勝利こそ逃したものの2位でシーズンを発進。先週(2月7日~11日)はAT&Tペブルビーチ・プロアマを48歳で制して、通算44勝目を達成。「通算50勝」の目標に、また1つ近づいた。

【再び、2人の時代!?】

 腰の手術とリハビリを経て、昨年からようやく戦線復帰したウッズは「腰が回復したら30歳代前半のスイングスピードを取り戻せると主治医から言われて、半信半疑だったけど、本当だった」と目を輝かせた。

 試合に挑む際も「これまでこんなにアドレナリンが湧き出たことはない」と興奮混じりに話す表情に喜びが溢れている。

 ミケルソンは昨年暮れのオフの間、生体力学を自ら学び、練習方法からスイングまでをトータルに見直したという。新しい栄養士を雇って新たな食事療法も採用。ジムでのトレーニングも増やしたり、改良したり。

 そんなあらゆる努力が実り、「スイングスピードがすごく上がっている」「こんなにいいオフを過ごせたことはない」「勝つための準備は整っている」。

 90年代後半から2000年代にかけて、ウッズとミケルソンは「最大のライバル」で「犬猿の仲」と言われていたが、齢を重ね、人生を重ねる日々の中、今、2人は徐々に「親友」となりつつある。ウッズが4度目の腰の手術から復帰するまでの過程において、彼を一番サポートした選手は、実はミケルソンだったそうだ。

 そして2人は昨秋、優勝賞金900万ドル(約10億円)がかかったテレビ用のドリームマッチ、その名も「ザ・マッチ」を戦い、そのときはミケルソンが勝利した。

 ウッズもミケルソンも、このマッチをすこぶるエンジョイしたらしく、スポンサーもファンも大喜びだった。ということで、この世紀のドリームマッチは、どうやら今後も拡大バージョンで継続開催される見通しだという。

 ウッズとミケルソンの2人が揃えば、もたらす経済効果や集客効果は相変わらず絶大ということなのだろう。2人の人気と存在感はいまなお健在。いや、2人の復活ぶりが目覚ましい今、2人の人気と存在感は、むしろ再び急上昇中と言えそうだ。

 戦線復帰した昨季、18試合に出場したウッズは、シーズン終了後に心身の疲弊を感じ、2019年は試合数を抑えると語っていた。だが、1月のファーマーズ・インシュアランス・オープンに出場し、今週はジェネシス・オープンに出場。そして来週は、出場しない可能性が高いとされていた世界選手権シリーズのメキシコ選手権に「心変わりして出るつもりのようだ」と、すでに米メディアが報じている。

 その後は1週間のオフを経て、得意のベイヒルで開催されるアーノルド・パーマー招待と「第5のメジャー」プレーヤーズ選手権の2連戦に挑む。意気軒高なウッズのスケジュールは、どうやら今季も過密になりそうな気配だ。

 ミケルソンは「若くて強い選手たちがひしめいている現在のツアーにおいて、僕やタイガーが勝つためには、僕らの最高のプレーが求められる。でも、最高のプレーができれば、僕らはまだまだ勝てる」と自信を示している。

「今年、僕とタイガーは、とてもとても、いい年を迎えようとしている」

 なるほど。ウッズとミケルソンの黄金時代は、一度は過ぎ去り、彼らが43歳と48歳になった今年、今度は熟年になった彼らの黄金時代が開花しようとしている。

 「とてもとても、いい年」は、果たしてどんな年になるのだろうか。それが、とてもとても、楽しみだ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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