「紀州のドン・ファン」事件 公判の争点と今後のポイント #専門家のまとめ
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家の男性が急性覚醒剤中毒で死亡した事件の初公判で、殺人罪などに問われている元妻が無罪を主張しました。遺産目当てに完全犯罪をもくろんだというのが検察の描く構図ですが、殺害方法など不明な点も多く、検察は状況証拠を積み上げ、自殺や事故ではなく他殺であり、元妻が犯人に間違いないという難しい立証を迫られます。公判の争点と今後のポイントについて、参考となる記事をまとめました。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
検察は今回のケースと類似する和歌山白浜・水難偽装殺人事件での立証方法を参考にしているものと思われます。妻に不倫が発覚した夫が、妻との関係を清算して保険金を得るため、海中で妻を押さえ付けて溺死させたとされる事件です。夫は黙秘を貫き、殺人か否か、夫が犯人か否かが争点となりました。
検察は事件前に夫がスマホで「溺死にみせかける」などと検索していた事実を計画性や動機を裏付ける事情として挙げました。また、主治医や解剖医、水難学の専門家、現場付近にいた監視員らの証言により、自殺や事故、病死の可能性がなく、現場には夫しかおらず、時間的にも夫の犯行が可能だったと立証しました。この結果、一審の裁判員裁判は2021年に夫を殺人罪で懲役19年に処しており、ことし3月の控訴審判決もその結論を支持しました(夫が上告中)。
今回の事件も、検察は「完全犯罪」といった元妻によるネットの検索履歴など様々な状況証拠を積み上げて有罪立証を行おうとしています。ただ、そのまま飲むと苦い大量の覚醒剤をどのようなやり方で飲ませたのか、殺害の態様については「何らかの方法により」といった形で不明のまま終わるかもしれません。(了)