日経平均株価が31年ぶりの高値を付けた理由
9月14日の東京株式市場では、前日比222円73銭高の3万0670円10銭となり、2月につけた年初来高値を上回り、1990年8月以来約31年ぶりの高値をつけた。
日経平均株価の推移をみると、8月20日あたりまでやや下降トレンドを描いていた。しかし、8月23日あたりから上昇トレンドに変わり、8月31日から上昇ピッチが加速するような格好となった。
この間の米国株式市場は上値の重い展開となっており、例えば米国のダウ平均と日経平均の日足チャートを見比べると全く違ったものとなっていた。これはドル円と日経平均のチャートを比べても同様であった。
これをどのように解釈すべきであろうか。東京株式市場は比較的、米国株式市場やドル円の動きに影響を受けやすかったはずである。しかし、この間の関連性は薄れていた。つまり、東京株式市場は米国株式市場やドル円とは別な要因で動いていたということが窺える。
今回の東京株式市場の上昇については、欧米の株価に比較し、割安感があり、それが修正されてきたとの見方がある。欧米の株価指数先物を売って日経平均先物を買うといった手口が入っていた可能性は確かにあったかもしれない。しかし、むしろ単独で日経平均先物を買い進めたような動きに見えた。
新型コロナウイルスの感染が減少傾向にあることが材料視されたとの見方もあるが、後講釈のように思える。
最も材料として考えられるのは、菅首相の辞任表明によるものではないかと思われる。トレンドが変化した8月20日から23日の間には横浜市長選挙があった。このあたりから菅首相を取り巻く様相が変化しつつあった。
上昇ピッチが加速した8月31日には、菅首相が9月中にも自民党役員人事を行い、二階幹事長ら幹部を交代させる方針を固めたと報じられていた。これを受けて菅首相が孤立しかねないとみて、株式市場で買い仕掛けが入ったとは考えられないだろうか。
菅首相が辞任を表明したのが9月3日、そこからさらに日経平均は上昇基調を強めたが、その前にすでにトレンドは形成されていた。
菅内閣の支持率は低迷し、菅首相では衆院選では自民党が敗北する可能性が強まった。政局の不透明感が強まりかねない。ところが菅首相が辞任し、あらためて自民党総裁選となればあらたな首相が誕生することで、少なくとも最悪の状況からは脱出できる。これにより閉塞感を打ち破れるとの期待が出たのではなかろうか。首相が誰になろうと閉塞感は打ち破れる。大型の景気対策などへの期待も出よう。これは2012年末のアベノミクス登場時の相場状況とも似ていると思われる。