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真相はいまだ闇の中、メアリー・セレスト号

華盛頓Webライター
credit:pixabay

メアリー・セレスト号はあたかも海の精がいたずらに乗組員を攫ってしまったかのように、静かに漂っていたのだといいます。

だが、真相はまだ霧の中に包まれているのです。

諸説あるものの、いまだ真相はわからず

まずは、船長ブリッグズ家族の逃亡説です。

彼らが叛乱を起こし、こっそりと船を後にしたのではないかといいますが、あの真面目で正直なブリッグズ船長がそんな不名誉なことをするとは信じがたいです。

もし彼が陰謀を企んだというなら、それはあくまでどこかの小説の中の話でしょう。

船員たちもまた、戦争帰りの優れた者ばかり。

裏切りや反乱とは縁遠いです。

次に、海賊の襲撃という説もあります。

だが、いざ船に乗り込んで何も盗らずに去る海賊がいるでしょうか?

頑丈な船も積み荷もそのまま、しかも身代金の要求すらないのだから、どうにも不可解です。

おそらくこの海賊、酔っ払って自分たちの仕事をすっかり忘れてしまったのではないか、と冗談の一つも言いたくなります。

そして、自然現象の説

海震や水上竜巻などの異常気象に巻き込まれたといいますが、竜巻が船を持ち上げるほどの力を持っていたなら、船体はとっくに木っ端微塵になっていたでしょう

海の上で激しい風に吹かれ、乗組員たちが慌てふためき、救命ボートに飛び乗ったのは理解できるものの、船が無傷で残っていたというのが、どうにも釈然としません。

さて、最後に一番説得力のあるのが、アルコール樽の漏出による恐怖説です。

船倉から漏れ出したアルコール蒸気に驚き、船を放棄したというのは、もっともらしいでしょう。

実際にロンドン大学での実験で、アルコール蒸気が爆発しても船に大きな損傷がなかったという結果が出ました

この実験によれば、火の気が船を焦がすことなく、恐怖に駆られた乗組員たちは引き縄を結びつける余裕もなくボートに乗り込み、暴風雨でロープが切れてしまったのでしょう。

そうして、彼らは漂流の果てに姿を消しました。

さらに、フォスダイク文書なるものが後に登場したのです。

これによれば、船長は気まぐれで乗組員を海に飛び込ませ、みんながそれに続いたところ、サメに襲われたといいます。

何とも荒唐無稽な話であるものの、この文書もまた多くの事実誤認が含まれており、信じるには無理があります。

そして極めつけは、未確認飛行物体やバミューダトライアングル、大ダコに引きずり込まれた説です。

これらの説は、まさに海のロマンをかき立てるが、現実の枠を超えることはありません。

メアリー・セレスト号の謎は、今も海の底に沈んだままです。

参考文献

Begg, Paul (2014). Mary Celeste: The Greatest Mystery of the Sea

Webライター

歴史能力検定2級の華盛頓です。以前の大学では経済史と経済学史を学んでおり、現在は別の大学で考古学と西洋史を学んでいます。面白くてわかりやすい記事を執筆していきます。

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