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僕がツイッターの面白系botをRTしないワケ

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 「面白かったらRT」「同意できたらRT」その背景にあるものを探る

面白系botの背景に潜むもの

これまでにも何度となく目に留まり気にかけていたのだが、先日の積雪で東京渋谷のハチ公の横に、もう一つ雪像のハチ公が創られた写真が、あまりにも多くの面白系引用・盗用bot、あるいは疑似bot(bot:一定時間毎、あるいは何らかの特定タイミングで自動ツイートを行う自動アカウント)に流用され、そのほとんどが「自らが撮った」かのような口調でツイート(ツイッター上における発言)されたことを受け、今回背景の一部をまとめることにした。案の定、ハチ公の写真を自らの撮影のような口調でツイートしたbotも、そのアカウントの履歴をさかのぼると、ほとんどがこのタイプだった。

仕組みは次のような形となる。運用側があらかじめ「集客用アカウント」と「広告アカウント」を併設。普段は「集客用アカウント」でひたすら注目を集めるツイートを流す。そして「面白かったらRT」「同意できたらRT」などと織り交ぜ、そのツイートが拡散しやすいように誘導する。一方「広告アカウント」では「集客用アカウント」の言い回しに似せて宣伝文句を書き連ね、広告リンクを貼り、誘導する。

(RT…ReTweet。ここでは公式RT、つまり自分のタイムライン上に登った他人のツイートを、そのまま自分のツイートとして再ツイートすることを意味する。ボタン一押しで実行できる、手軽な情報拡散方法である)

↑ 面白系引用・盗用botのビジネスモデル(一例)
↑ 面白系引用・盗用botのビジネスモデル(一例)

ツイートが拡散されるにつれて、そのツイートが目に留まり、気に入ったのでフォローしようとする人も現れる。これが繰り返され、「集客用アカウント」にはフォロワー(自分のツイートをタイムライン上に表示する人。いわば「ツイートの追っかけ」の人)が増えていく。

そして「集客用アカウント」側では一定間隔で、「広告アカウント」の広告ツイートを公式RTする。「集客用アカウント」をフォローした人にはもれなく周知され、表現が面白系ツイートと似ているので広告と気が付かずにクリックしてしまう可能性すらある。かくして広告展開は大成功。

他の媒体の広告同様、ツイッターの広告展開もまた、「多くの人の目に留まる」ことが大切。「集客用アカウント」のフォロワーが多ければ多いほど、広告効果は高まる。そのためには「集客用アカウント」が多くの人に注目されるよう、人気のある言い回し、画像をツイートする必要がある。だからこそ、先の雪像ハチ公のような事態が起きることとなった。

問題はどこにある? コンテンツの盗用とビジネス利用

今件手法のポイントは「集客用アカウント」と「広告アカウント」が別々に存在する点にある。同じアカウント上で広告ツイートを行うとフォロワーからは怪しまれ、離れていく人も出てくるかもしれない。そこであえて別の広告用アカウントを用意し、公式RTという形でツイートすることで、疑われないようにしている。何か問題が生じても、公式RTを外せばそれで済む。「間違って公式RTしてしまいました」とでも言い訳すれば良い。何しろボタン一つで出来てしまうのだから。あるいは複数の集客用botを創っても、公式RT用の「広告アカウント」の広告ツイートを共用できるというメリットもある。

ビジネスモデルとしては「広告アカウントで別途広告ツイートをして公式RTを行う」と偽装的なことをしている点で多少問題はあるものの、非難されるほどのものではない。今件で問題なのは、「集客用アカウント」が集客のために行っているツイートの多分において、文章・画像の無断盗用が行われている点にある。

ビジネスのために著作物を法上の引用の範囲を超えて、しかも無断で、著作者が自分であるかのように偽装して(つまり盗用して)ツイートするのは、許されるお話ではない。

「ツイッターってチャットみたいなものでしょ? 短時間で消えるから別にいいのでは?」との反論もあるだろう。だがツイッターは元々「ミニブログ」と呼ばれている点からも分かる通り、短文のブログの集合体に過ぎない。それをシステム上、チャットのように見えやすくしているだけ。ブログに他人の写真などを勝手に、しかも自分が撮影したかのような表現で、ビジネスのために掲載したら問題なのは、誰の目にも明らか。要はそれと同じである。

無論、ビジネスのことなど考えず、単に面白いからと(盗用の)ツイートを繰り返すアカウントも存在する。またフォロワーを集めて価値ある「集客用アカウント」を創った上で第三者に転用させたり、プロフィールから自分の商用サイトなどに誘導するのが目的の場合もある。

商用のための「集客用アカウント」なのか否かを判断するのは、実はさほど難しくはない。それらしい公式RTを見かけたら、そのアカウントのツイートをさかのぼり、広告ツイートを定期的にしているか否かを確認する。「広告アカウント」を複数有し、代わる代わる公式RTすることで自然さを装う場合もあるが、大抵は一定間隔ごとに広告ツイートを公式RTしているので、すぐに分かるはずだ。

商用の「集客アカウント」のツイートを公式RTすることは、多分に盗用ツイートを用いた広告宣伝活動に加担することになる。残念ながら商用と思われる「集客アカウント」系botにおいては、非盗用の、オリジナルコンテンツを用いたものは少数派でしかない。よく考えて判断をしてほしいものだ。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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