中国の航空会社、既に日本~中国路線を続々と運休。静岡空港など地方空港発着路線の運休が目立つ
中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の影響による運休は日本路線にも波及してきている。1月30日には世界保健機関(WHO)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」であると宣言したことで、更に各国の検疫が強化されることになる。日本の航空会社では、ANA(全日本空輸)とスプリング・ジャパン(春秋航空日本)が運航する成田~武漢線のみとなっているが、中国の航空会社では、地方路線を中心に日本~中国路線で続々と運休を発表している。
初めて聞く航空会社の名前も多い中国の航空会社
現在、中国の航空会社で日本に乗り入れているのは、中国の3大航空会社である中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空に加えて、上海航空、吉祥航空、厦門航空、深セン航空、山東航空、天津航空、北京首都航空、奥凱航空 、四川航空、海南航空、中国聯合航空、更にはLCC(格安航空会社)の春秋航空など初めて名前を聞く航空会社も実は多く日本に乗り入れている。
筆者も調べてみたが、全ての欠航便の情報を調べるのは難しい状況であるが、既に欠航を決めている便を多数確認することができた。中国国際航空では、成田~北京線、成田~上海線、成田~重慶線、成田~成都線の減便・運休をはじめ、関西・中部・仙台・那覇などを発着する一部路線での運休を決めているほか、中国東方航空でも成田~武漢線、成田~上海線、羽田~上海線をはじめ、中部・福岡・岡山・北九州などを発着する路線で減便・運休を決めている。
静岡空港では中国路線8路線のうち7路線を運休
現在、中国全土において海外への団体旅行が制限されているなかで、影響がより大きいのが地方空港発着便となる。例えば、静岡空港では中国路線が8路線(上海、寧波、杭州、南昌、温州、連雲港、煙台経由北京)があり、中国東方航空、北京首都航空、中国聯合航空、四川航空、上海航空の5社が乗り入れているが、静岡空港関係者への取材では2月~3月にかけて7路線の欠航もしくは減便が決定し、上海線(中国東方航空)のみ通常通りの運航を継続するとのことだ。
地方空港にとっては、一時的な措置であり不可抗力ではあるが、運休の期間が見通せないことによる空港利用者減少が長期間に及ぶことが想定される。昨年、民営化がスタートし、好調に利用者数を伸ばしていたなかでの今回のニュースによる落胆は大きい。空港はもちろんであるが、周辺の宿泊施設や観光施設、バス事業者、飲食店やデパート、スーパー、ドラッグストア、免税店など影響は計り知れないだろう。
日本の航空会社の中国路線は、羽田・成田・関西など大都市空港からのみ就航しており、出張者や個人旅行者が占める割合が高いが、中国の航空会社では中国人団体客の利用が中心となっている。加えて今回の新型コロナウイルスの中心である武漢をはじめ、重慶、成都、西安など中国内陸部からの路線が近年増えているが、上海や北京以上に団体旅行者の比率が高くなっており、団体旅行中心の影響を即座に受けている状況にある。
日韓関係悪化による韓国の観光客減とダブルパンチ
地方空港においては、飛行時間が短い韓国線・中国線・台湾線が中心となっているなかで、昨年夏の日韓関係の悪化で、ビジネス需要より観光需要が中心に韓国と日本の地方都市を結ぶ路線が軒並み運休もしくは減便となり、現在もほとんどの便が運休したままの状況となっている。近年、日中の関係も良好であることに加えて、日本~中国線の発着枠拡大や旺盛な中国人の訪日旅行者に対応すべく地方空港への乗り入れも増加しており、韓国人観光客のマイナスを中国人観光客でカバーするという状況であった。しかし、今回の新型コロナウイルスの発生により、中国からの観光客も期待できない状況に陥ってしまった。まさにダブルパンチの状態になっている。
韓国人の日本入国者は昨年8月以降、毎月前年比の約半分の水準で推移しており、今年も劇的に日韓関係が改善されない限りは7月までは前年比約半分の水準が続く可能性が高い。中国においても、終息宣言が出るまでは半分以下の入国者数になる可能性が高く、韓国・中国の合計で2018年・2019年共に訪日旅行者(約3200万人)の約半分を占めることから、地方経済に与えるマイナスは想像以上に大きいだろう。
まずは新型コロナウイルス対策、その後は
現段階では、まずは新型コロナウイルスを蔓延させないことに注力する必要があるが、タイミングを見て、地方を衰退させない為の新たな施策を国・自治体を中心に早急に考えなければならないだろう。欠航便は今後、更に増えることが想定されるほか、現時点で日系航空会社の武漢線以外の欠航便発表はないが、利用者が減少することで一時運休に踏み切る可能性も出てくるだろう。今後の情報にも注視していく必要があるだろう。