ベビーカーマークの世間認知度は5割強、都心部ほど高めの傾向
ベビーカーの利用機会の増加に伴い、さまざまなトラブルが発生していることを受け、ベビーカー使用者のマナー向上や周囲の理解・配慮を促進する目的で制定されたのが「ベビーカーマーク」。詳細は「「公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会」決定事項の公表について」(国土交通省)などにある通りだが、マークが無い場所でも原則として利用は可能だが、特段の配慮がなされている場所、利用を推挙・案内する場所に掲示される。また使用を禁止する場所・設備などには「ベビーカー使用禁止マーク」が掲示されることになる。
それではこの「ベビーカーマーク」をどの程度の人が知っているのだろうか。内閣府が2016年2月15日に発表した、ベビーカーマークに関する世論調査の詳細値から確認していく。
ベビーカーマークを「見た事があり、その内容も知っている人」「見た事は無いが内容を知っている人」「見た事はあるが内容は知らない人」「見た事も無いし内容も知らない人」の中から一つを選んでもらい(「分からない」も例外選択肢としてあり)、そのうち前者3つを認知しているとの分類として集計した結果が次のグラフ。
全体では5割強が認知している。ただし見ただけでその内容が分からないのではさほど意味は無いので、前者2つ、見た事があるか否かはともかく内容を知っている人に限定すると、ほぼ1/3程度が把握していることになる。見方を変えると2/3はベビーカーマークの意義を知らない。
男女別では女性の方が認知度が高い。これはベビーカーを利用するのが大よそ女性であるため、より身近な話であるからと考えれば道理は通る。また男性では30代でもっとも認知度が低く、40代から50代に渡って大きく値が伸びる。これはあるいは子育ての過程で夫婦ともに子供と出かける際に、妻と共に、あるいは妻に代わってベビーカーを使う機会が多々あるからかもしれない。ただし30代でもそれなりにベビーカーは使われているはずなので、この発想にはやや無理がある。
女性では身近な立場にあることから、70歳以上でやや低い値を示すものの、大よそ年齢別で差異は無く5割台をキープしている。内容を知っている人に限定しても1/3は確保されており、それなりに高い認知度を示している。
速報値のみで今件調査が先行発表された際に、「都市部ほど目撃・利用ケースが多いから、認知度も高くなるのでは」との指摘があった。それを確認できるのが次に示す、回答者の居住環境別の動向。
都市規模別では大よそ人口が密集する都市部ほど、高い視認・認知度を示している。見方を変えれば都市部ほどベビーカーマークが貼られる必要がある場所が多いことにもなるが、やはりそれなりに身近な存在であるほど、よく知られ、中身も理解されることになる。ただし町村部では視認度が高めとなり、認知度は東京都区部とほぼ同じ値を示している。町村部では注意をうながす必要がある場所が限定されるからこそ、余計に目立つ、認識されやすくなるのだろうか。
居住地域別では東京都区部を含む関東、そして北海道や九州が高めで、四国や北陸、東山(山梨県と長野県)などが低めの値となっている。ただしそれらの地域でも見た事があり内容を知っている人の割合は相応に高めで、見た事がある人のみが少なく、結果として認知度が低い値として計上されている。
子供の有無別では、子供がいる人の方が認知度は高い。ただし子供が成人して社会人となると、その値は大きく下がる。子供が乳幼児の人の認知度がずば抜けて高いのは、ひとえに自分自身の利用時に直接係わるからに他ならない。
さらにベビーカーの使用状況別では、現在使用している人の認知度が一番高く、6割近くに達している。ただし見方を変えると、ベビーカーを今使っている人ですら、マークを見た事があり内容を知っている人は4割にも届かず、見た事がある・無いを別にして内容を知っている人は4割でしかないことになる。
上記に有る通りベビーカーマークは交通規制上の罰則規定付きのルールなどでは無く、使用者のマナー向上や周囲の理解・配慮を促進するための、啓蒙的なものに過ぎない。本来ならばこのようなマークが無くとも、使用者自身も周囲もスマートな環境が構築できれば良いのだが。
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