日銀の物価目標は1%でも良いのではとの甘利税制調査会長からの指摘
自民党の甘利明税制調査会長は1日に都内で講演し、アベノミクスの物価目標2%の達成は非常に厳しいと指摘、個人的見解として「(物価)1%でも、デフレ脱却と言っていいのではないか」と述べた(ロイター)。
甘利氏はアベノミクス推進派のひとりといえる。2014年3月27日のロイターによると、甘利明経済財政相(当時)は、ロイターとの26日のインタビューで、2年で2%の物価上昇率を目指す日銀の物価安定目標について、順調に進んでおり、達成は可能だとの見方を示した。
日銀の物価目標は当初、総合指数であり、その後、コア指数と呼ばれる生鮮食料品を除く総合となった。そのコア指数でみてみると日銀の異次元緩和と呼ばれた量的・質的金融緩和政策が決定された2013年4月は前年同月比でマイナス0.4%となっていた。それから1年後の2014年4月にはプラス1.5%に上昇していた。
2014年3月27日の時点では2月の数字が確認できるかどうかであったと思われるが、2月ですでにプラス1.3%となっていたことで、日銀の物価安定目標について、順調に進んでおり、との発言となったものとみられる。
しかし、2014年4月のプラス1.5%がピークとなり、2015年8月にはマイナスに転じた。これについては2014年4月の消費増税による影響を指摘する声も多いが、あくまでタイミングがそうであっただけとみている。消費増税によって駆け込み需要が後退し、便乗値上げなども一巡したことは確かだが、それで物価目標を阻害されたとみるのもおかしい。
2014年4月以降の物価の低迷については、消費増税が即座に影響を与えたというよりも、原油価格の下落による影響が大きかったといえる。そもそもプラス1.5%まで引き上げられたことが、ある意味特殊要因による積み重なりとなっていた。2012年12月あたりからの円高調整や株価の反発などによる影響もあった。
結果として日銀の2%の物価目標が達成されなかったことは確かである。2014年4月の消費増税がなかったとして2%が達成されたとは考えづらい。結論としては、最近の甘利氏の発言のように、日本の場合には物価1%でも、デフレ脱却と言っていいのではないかと思われる。
甘利氏は2014年3月27日のインタビューで、物価安定目標2%が高くてけしからんという話は国際的にはないと発言していた。これは国際的にはないかもしれないが、国内的にはあったということになろうか。
いずれ日銀は2%と言う物価目標を修正する必要があると思われるが、それにはタイミングも重要となる。ただ、今回の甘利氏の発言からみても、政権側はすでに2%という物価目標は重要視していないということにもなるのではなかろうか。何を今更感がなくもないが。