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日銀の金融緩和これくしょんの行く末

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 艦隊これくしょん(艦これ)というゲームがある。元々はパソコンのブラウザゲームであったが、現在ではスマートホンでもできる。ユーザー数は200万人を突破し、人気ゲームといえる。実は私もこのゲームをしており、先日、ユーザーのオフ会に参加した。その席での会話のなかで、面白い事実が明らかとなった。

 艦隊これくしょんのブラウザ版のサービスを開始したのが、2013年4月23日であった。つまり開始して5年以上経過している。このゲームは太平洋戦争における日本海軍の艦隊がモデルになっている。その太平洋戦争は1941年12月8日の真珠湾攻撃に始まり、1945年8月15日に終戦を迎えた。

 つまり太平洋戦争の日本海軍の艦隊がモデルとなってゲームが、太平洋戦争の期間を超えてきたのである。それだけ人気を博しているともいえる。私自身、このゲームを通じてこれだけの数の戦争に投じられた船が存在し、多くの海戦があったことを思い知らされた。日本海軍がどのようにして負けていったのかもこのゲームを通じてあらためて知るようになった。

 ちなみに私は横須賀生まれだが、父親が親戚の元海軍将校を頼って横須賀に住んでいたことを、父の死後だいぶ経ってから知った。

 それはさておき、その面白い事実というのは、2013年4月に、やはりこれほど長く続くと予想されていなかったものが始まっていたのである。日銀は2013年4月4日に量的・質的緩和政策、いわゆる異次元緩和策を決定した。これは2年で2%の物価目標を達成するためとして、非常に大胆な非常時対応ともいえる緩和策を講じた。

 太平洋戦争も山本五十六など現実には米国を相手にまともに戦えるとは思っていなかったようで、短期決戦で講和条約に持ち込むことが目的であったとされる。しかし、初戦では戦果を挙げてもミッドウェー海戦あたりから状勢は変わり、泥沼化する。

 日銀の異次元緩和も当初1年間は順調に見えた。しかし、日銀が目標とする消費者物価指数は2014年4月の前年比プラス1.5%まで上昇した後は低迷する。これをこのタイミングでスタートした消費増税による影響が大きかったためとする意見がある。まったく影響はなかったとは言わないまでも、それよりも大胆な緩和策が物価に波及する経路そのものが見いだされていないなか、他の要因を含めた一時的な物価上昇ではなかったのかとの見方ができる。

 結局、日銀の金融政策もそれから泥沼化する。緩和の総動員となり、結果として「長短金利操作付き量的・質的緩和策」となり、現在に至る。まさに金融緩和これくしょん(緩これ?)とも言える状況にある。しかし、いまだ物価目標は達成されていない。現在ではこの異次元の金融緩和策をどのようにして続けられるのかを模索しているような状況にも映る。

 現在の日銀の金融政策の末路が太平洋戦争のようになると言うわけではないものの、両者ともに予想された戦果は上がらず、出口政策が取れなくなってしまったという状況は似ている。始めてしまった以上、負けを負けとして認められないというのはわからなくはない。しかし、それにより大きな犠牲を生んでしまう懸念はある。このあたり歴史に習うことも必要ではないかと思うのである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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