「泣き叫ぶ妻子に村中が…」北朝鮮で最も"残酷な夜"
2019年に韓国に亡命した北朝鮮のリュ・ヒョヌ元駐クウェート大使代理が、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)とのインタビューで、自身が目撃した「残酷な場面」について語っている。
その場面とは、2010年3月に貨幣改革失敗の責任を問われて処刑された朴南基(パク・ナムギ)元朝鮮労働党計画財政部長の家族が、管理所(政治犯収容所)に連行された時の様子だ。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
リュ氏によれば、連行は夜に行われ、朴元部長の妻子が泣き叫ぶ声を聞き、「同じ村(隣近所)」に住むエリート官僚たちが皆、起き出してきたという。リュ氏は管理所への連行を見たのはこれが初めてだったとのことで、「心臓の動悸が激しくなり、その夜は眠れなかった。もしかしたら自分たちも、あのような運命に陥るかもしれないと考え…」と語っている。
デイリーNKの現地情報筋によれば、管理所への連行は通常、夜中に密かに行われ、近所の人達が気づいたころには家はもぬけの殻になっているという。しかしときどき、ある種のアクシデントが起きる。
情報筋によると、2018年11月に咸鏡南道(ハムギョンナムド)の端川(タンチョン)市である一家が連行された際には、一家を乗せて出発しようとしたトラックのエンジンがかからず、夜通し修理をして午前8時になってようやく出発した。そのため、近隣住民に目撃され、噂が一瞬のうちにして広がった。
このときには、連行にきた保衛員(秘密警察)と一家の妻がもみ合いになり、妻は殴る蹴るの暴行を加えられたという。
朴元部長の妻子やこの家族がどの管理所に送り込まれたのかは不明だが、過酷な運命が待ち受けていることは想像に難くない。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
管理所には、刑期が定められ釈放がありうる革命化区域と、一生釈放が許されない完全統制区域があるが、前者であっても生きて出てこられる確率は高いとは言えない。
ちなみに、これまでに北朝鮮から逃れてきた脱北者の中には革命化区域出身の人々はいるが、完全統制区域の出身者は1人もいないと見られる。