日本自衛隊が小型軽量無人ヘリコプター型早期警戒機で巡航ミサイル探知を計画
9月24日に防衛省から「令和6年度 事前の事業評価 評価書一覧」が発表されました。11種類の新兵器の開発研究の概要が掲載されています。その中に「無人回転翼機搭載レーダによる見通し外探知システムの研究」という項目があります。
※見通し外:地球は球形であり低高度を飛ぶミサイルは遠くからでは水平線の陰に隠れて見えなくなる。視点が高ければ水平線までの見通し距離は長くなり遠くまで見渡せるので、空中を飛ぶ早期警戒機(AEW)が必要になる。
無人ヘリコプター型の早期警戒機(AEW)で巡航ミサイル(特に対艦ミサイル)を探知・追尾しようという計画です。
無人回転翼機搭載レーダによる見通し外探知システムの研究
小型軽量無人ヘリコプター型早期警戒機ということは、空母型だけでなく一般的な護衛艦でも運用できることを意味します。陸上運用の早期警戒機を艦隊の援護に出してもよいのですが数が少ないので、各護衛艦が搭載できる装備も必要となりました。
この能力が発展すれば、長射程の艦対空ミサイルを護衛艦の見通し外からでも射撃することが可能となり得ます。また見通し外で射撃できなくても、脅威対象の飛来方向や速度などのデータを早期に把握できれば余裕をもって待ち構えることが可能となり、見通し内での迎撃成功率は飛躍的に上がります。
イメージ絵の「無人回転翼機」は川崎重工製のヘリコプター型無人機「K-RACER X1」「K-RACER IV」によく似ています。テイルローターは無く左右両舷に主翼と推進用プロペラを持つ複合ヘリコプター(コンパウンド・ヘリコプター)と呼ばれる種類のもので、ガソリンエンジンによって駆動します。
※参考:川崎重工より無人コンパウンド・ヘリコプター「K-RACER IV」
◆当該事業を行う必要性
「見通し距離内に入った後に加速するようなミサイル」とはロシア軍のカリブル巡航ミサイルの本国仕様の対艦型である「3M-54E(3М-54Э)」のことになります。同ミサイルは巡航時はジェットエンジンを用いて亜音速で低空飛行してきますが、目標に接近して見通し距離内に入った後にロケット加速を行い超音速で突入してきます。中国軍もこのコンセプトを模倣して同仕様の対艦ミサイル「YJ-18(鷹撃-18)」を開発して配備しています。
このコンセプトの対艦ミサイルは亜音速巡航ミサイルの特徴である軽量ながら長大な射程と、超音速巡航ミサイルの特徴である高速力での迎撃突破力の高さを両立します。ただしこれはロケット加速する前に撃墜してしまえば一般的な亜音速巡航ミサイルと同じ迎撃難易度ということを意味しています。
無人回転翼機搭載レーダーによって見通し距離外から早期に探知することで、3M-54EやYJ-18に対処しやすくなることが期待できます。
関連:実用試験中の新艦対空誘導弾は2024年に海上自衛隊で装備化予定 ※追記:2023年に装備化済みと判明(2023年3月21日)
※日本国産の新型長射程艦対空ミサイル「23式艦対空誘導弾」。