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「お母さんをもっと面白く」母親たちが「母親像」のアップデートに取り組む理由

高島太士FIRST APARTMET代表/ドキュメンタリスト

 育児休暇を長期取得し、子どもを保育園に送り迎えし、家でも子守や家事をこなし……。「母親は子どもや家族のためだけに生きているのか?」。そんな疑問を持つ母親たちが集まり、これまでの母親像を「アップデート」しようとしている。昨年1月に結成された「母親アップデートコミュニティ」(HUC)の取り組みだ。参加メンバーは国内外から約170人に上る。母親たちは何を思い、何を目指すのか。取り組みを取材した。

「女性が子どもを見なきゃいけない」に抱いた違和感

 「今の母親像は、子どもに寄り添って家庭を大事にするか、キャリアに突っ走っていくかに二極化している。でも実際はその2つに当てはまらない人もいる」。そう話すのはHUC代表の鈴木なつみさんだ。HUC結成前、鈴木さん自身も母親像の枠組みを自分で作り、そこに当てはまるように生きてきたという。

 新卒で2002年に女性活躍を掲げる企業に入社した鈴木さん。入社12年目で妊娠・出産を経験。半年間の休職を経て、「女性が子どもを見なきゃいけない、という価値観で動いていた」。ただ、子どもが4歳になったころ、「自分が勝手に作った『母親』の枠組みに縛られているんじゃないかと、違和感を持ち始めた。母親だけど自分の人生を生きていいんじゃないかって、思い直したんです」。母親の生き方がもっと面白くなるように――。そんな思いから昨年1月、母親の生き方をテーマにしたインターネット番組を観覧し、そこで知り合った母親たちとHUCを立ち上げた。

子どもや家族ではなく、自分を主語にして話す。

 結成後、メンバーは自然と170人に拡大。国内各地の30~40代を中心に、フランスやシンガポール、コスタリカなどに住むメンバーも加わった。HUCで取り組んでいるのは固定観念、同調圧力、自己犠牲を捨て、日常生活における母親像を変えていくことだ。

 たとえば、家事は母親がしなければいけないという固定観念を捨てること。「○○ちゃんママ」ではなく名前で呼んでもらうこと。子どもを家族に任せて数日間の出張へ行くこと……。小さな「アップデート」をそれぞれが重ね、それをメンバー同士でシェアし合うことで、また他メンバーが触発される。メンバーが1年でシェアし合った「アップデート」は1800件を超えた。子連れ勉強会をはじめ、子連れ100人フェスや、子連れワーケーションなどにも取り組んでいる。

 鈴木さんは言う。「母親は子どものため、家族のため、仕事のため、というのが先に来て、『自分のため』が置き去りにされてしまう。自分を主語にして話す場を持てるというのが大切だと思う。今の活動をどう広げていくか、これから取り組んでいきたい」。母親たちによる母親像の「アップデート」の挑戦は、まだ始まったばかりだ。

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本作品は【DOCS for SDGs】で制作された作品です。
【DOCS for SDGs】他作品は下記URLより、ご覧いただけます。
https://original.yahoo.co.jp/collection/movie/feature/docs4sdgs/5/

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受賞歴

TokyoDocs 2019 ショート・ドキュメンタリー・ショーケース優秀作品賞

FIRST APARTMET代表/ドキュメンタリスト

1979年 大阪生まれ。人の一度しかない瞬間や感情を引きだし、映像に切りとる。心を動かす強さと透明感のあるメッセージが特徴。ソーシャルグッドに特化した演出で、これまで手がけた作品は国内はもとより海外広告祭での受賞も多数。代表作はP&Gパンパースの「ママも1歳、おめでとう。」など。最近の取り組みは、広告映像で培った表現手法やアイデアを、社会課題解決の分野に応用し、人の心に届く映像をひとつでも多く生み出すこと。ドキュメンタリストの育成にも力を注いでいる。

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