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LINEが1番、Google+が2番…!? 総務省のメディア調査結果を検証する

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ Google+って日本でそこまで利用されてたっけ?

Google+が実質最多利用のソーシャルメディア、とな?

総務省は2014年4月15日、情報通信政策研究所の調査結果として「平成25年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の速報データなどを発表した。この発表値では日本のソーシャルメディアの利用状況として、LINEに続きGoogle+の利用率が高いとの結果が出ている。今回はこの値に関して「Google+はここまで使われているのだろうか?」との疑問に基づき、検証を行うことにする。

今調査は2013年11月30日から12月8日にわたり、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。このランダムロケーションクォーターサンプリングでは、世代別抽出の割合は現実にほぼ即したものとなる。今調査でも調査対象母集団の世代別構成比と、同年齢階層の人口比(直近の国勢調査の結果を基に算出した該当世代全体に占める世代別構成比)では大体一致する値が出る。「回答しやすい高齢者が多いから数字が偏る」という仮説は成り立たない。

↑ 回答者数(世代別)
↑ 回答者数(世代別)
↑ 回答者の世代比率
↑ 回答者の世代比率

今調査ではウェブサービス・アプリとしてLINE、Google+(今回年から)、Facebook、Twitter(ツイッター)、mixi、Mobage、GREEから成るソーシャルメディアの類を提示し、これらを使っているかを尋ねている。そしてそれらの使用状況などから、ソーシャルメディア全体の利用状況を勘案している。次のグラフはその比率で、個々ソーシャルメディアの利用率は「全体比」を示している。

↑ ソーシャルメディア利用者率(世代別)
↑ ソーシャルメディア利用者率(世代別)
↑ ソーシャルメディアの利用率(サービス毎・全体)
↑ ソーシャルメディアの利用率(サービス毎・全体)

ソーシャルメディア全体は20代が最多利用でそれ以降は利用率が落ちる、LINEがもっとも使われ、FacebookやTwitterなどが堅調、mixiはそれらに続くなどは他調査と変わらない。今回問題としているのは、Google+(プラス)の値である。

Google+の利用者率は今調査の限りでは27.3%。Facebookを抜き、LINEに次いで第2位。LINEは厳密にはソーシャルメディアでは無くコミュニケーションツールなので、Google+がFacebook、Twitterなどを抜いて日本でもっとも使われているソーシャルメディアという結果となる……え? という次第だ。

Google+の利用者の利用者の内情を探る

Google+も含めた日本のソーシャルメディアに関する利用率の調査はこれまでにも複数か所で行われているが、それらを見てもここまで高利用率を示した、他のソーシャルメディアと比べて抜きんでた結果を見せているものは無い。例えば次のグラフはソニー生命保険が2013年9月に発表した「シニアの生活意識調査」からのものだが(「シニアのソーシャルメディア利用、一番人気はFacebook」)、シニア層に限ってもGoolg+の利用率は5.1%、FacebookやTwitterはおろか、LINEやmixiよりも低い値に留まっている。

↑ 現在利用しているソーシャルメディア(シニアを対象とした調査対象母集団全体比)(複数回答)
↑ 現在利用しているソーシャルメディア(シニアを対象とした調査対象母集団全体比)(複数回答)

そこでまずは今調査のGoogle+利用者の内情を確認する。イレギュラーな値があれば、そこに問題点があるかもしれないからだ。各世代別の構成人数、及び利用率は公開されているので、それを基に世代別Google+利用者数を算出し、Google+利用者全体における世代構成比を導き出す。

↑ Google+利用者全体における世代構成比
↑ Google+利用者全体における世代構成比

ソーシャルメディア利用者率と大きな違いは無く、歪みも見られない。特定世代が不自然な値を示しているわけではないようだ。

次にソーシャルメディア利用者全体に占める、Google+利用者率を算出する。特定世代で大きく値が跳ねるようなら、その世代で回答時に何らかのトラブルが生じていた可能性がある。

↑ ソーシャルメディア利用者におけるGoogle+利用者率(世代別)
↑ ソーシャルメディア利用者におけるGoogle+利用者率(世代別)

やや振れ幅が大きいものの、特定世代の異常値は確認できない。「ソーシャルメディアを使っている」と回答した人の半数前後はGoogle+を利用しており、数字そのものには問題はなさそうだ。

シニアほど「一番使っているソーシャルメディアはGoogle+」…!?

見方を変えて、世代別の各ソーシャルメディア利用率をグラフ化する。個々の世代全体数に対し、それぞれのソーシャルメディアを何%の人が使っているかを示したものである。

↑ ソーシャルメディアの利用率(世代別、全体比)
↑ ソーシャルメディアの利用率(世代別、全体比)

Google+の利用者率が若年層で高く、高齢層で落ちるのは上記グラフの通り。一方、同一世代の他のソーシャルメディア利用率との比較では、奇妙な動きが確認できる。若年層ほど「他のソーシャルメディアと比べて」低めに留まり、歳を経るに連れて高くなる。単純な順位でも、20代では4位に留まっているが、30代では3位、40代・50代では2位、そして60代ではトップの利用ソーシャルメディアとなる。Google+が汎用的検索エンジンGoogleの連動的なサービスとはいえ、これは少々説明がつきにくい。

そこで報告書をもう一度見返すことにした。今件は速報であり、現状では調査結果の概要しか公開されていない。しかし前年、2013年にはほぼ同じ様式で前回分(2012年調査分)として「平成24年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」が実施・結果発表が行われている。こちらは詳細報告書の他、アンケート調査票なども確認できる。そこで、該当項目を調べることにした。

Google+は今回調査から加わったもので、前回は未掲載となっている。しかしどこの項目で行われたかは容易に確認ができる。今速報では前年調査との比較も随所で行われているからだ。具体的には「問3」に該当する項目で、この問いから今件「ソーシャルメディアの利用状況」を計測したと考えられるのだが……

↑ 2012年分における該当箇所と考えられる質問様式
↑ 2012年分における該当箇所と考えられる質問様式

「ソーシャルメディア」という文言は無い。「ソーシャルメディア」と表記することで何らかの偏見で回答する可能性を危惧したからなのか、単に「ウェブサイト/アプリ」とのみ表記し、ソーシャルメディア(とその類)が一覧に挙げられ、利用しているか否かを質問している。次の問い「問4」でようやく「あなたはふだん、Twitter、Facebook、ミクシィなどのソーシャルメディアで以下のようなことをどのくらいの頻度でしていますか」とし、上記サービスがソーシャルメディアらしいことをうかがわせている。もっともその前の「問2」ではパソコンやスマホの利用スタイルそのものを尋ね、「問3」がソーシャルメディアについて尋ねているという連想は(事前知識が無ければ)しにくい。

前年と今年で値の比較をするため、設問の様式を大きく変更するとも考えにくい。今年の調査票では「問3」において、選択肢に「Google+(グーグルプラス)」を加えただけであろうことは容易に想像が出来る。

そして、検索エンジンとしての「Google」は多くの人が知っているが、ソーシャルメディアの「Google+(グーグルプラス)」は必ずしもそうとは言い切れない。ソーシャルメディアと明言されていない設問で、他のサービスと並んで「Google+(グーグルプラス)」が並べられ、使っているか否かを問われた場合、「Google+(グーグルプラス)」そのものを詳しく知らない人はどのような判断を示すだろうか。

素直に、設問者の意図通り「聞いたことが無いから」として「利用していない」を選ぶだろうか。「Googleなら毎日検索に使っている」と誤回答してしまわないだろうか。「Google+とは、Googleの何か付加価値的なものだろうか。Googleを使っているのだから、使っているも同然だな」と、「Google+」という表記そのものを認識しつつも、中身を把握せずに答えていることはないだろうか。さらにはGoogleの他サービスにおいてアカウント取得・ログインをした上で利用するサービスを用いていて、それを使っていれば「Google+、利用中」と勘違いしていないだろうか。

それらの誤認回答の可能性は十分に考えられる。どの世代にも一定数の誤回答者が存在しているのなら、本当に使っている人が多い若年層世代ほど高い値を示しつつ、他のソーシャルメディアと比べて歳を経た上での下落率が低い(一定数が底上げされているのだから)のも納得がいく。

↑ 推論に基づいたGoogle+利用層(イメージ)
↑ 推論に基づいたGoogle+利用層(イメージ)

結論:Google検索と勘違いした人が多分にいるっぽい

現時点では2013年調査・今回発表分の調査票が未公開のため確定はできないが、今件は「検索サービスのGoogleと、ソーシャルメディアのGoogle+を勘違いして回答した人がどの世代にも一定数おり、それが全体のGoogle+利用率を底上げする形となった」と推論づけられる。もちろんGoogle+がそれなりに高い利用率を示していることに違いはないが、今件素データのようにFacebookを超えた値であることは考えにくい。

ではどうすればこのようなトラブルが防ぎ得たのか。設問の前に各サービスの概要を説明として加える、例えば今件Google+なら「Google+とはGoogleが提供しているソーシャルメディアです」、これを選択肢分だけ追加すれば良い。さらに問いの文面を「以下にいくつかのウェブサイト/アプリのリストがあげられています」では無く、「以下にいくつかのソーシャルメディアなどのサービスを提供するウェブサイト/アプリのリストがあげられています」とし、ソーシャルメディアかその類であることを回答者に認識させる配慮が必要となる。

FacebookやTwitter、mixiなどは単独のソーシャルメディアサービスとして展開しているが、Google+はGoogleというメジャーな検索サービスと深い連動性を持ったソーシャルメディアで、名前もよく似ている。今件推論が正しいとすれば、Googleそのものがあまりにもメジャーすぎるが故のトラブルということになる。そしてその可能性は容易に推測される。今件のような調査においては、配慮した設問を願いたいものである。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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