【福岡市】プラごみを蝶の飾りに!大丸福岡のクリスマスツリーに込められた環境メッセージ
陽が沈んだ夕暮れ時、点灯すると光り輝き、無数の蝶で飾られたクリスマスツリー。このツリーの装飾は、一見美しいだけでなく、海洋ごみや廃プラスチックなどから生まれた、環境への想いが込められている。
大丸福岡天神店での点灯式
11月9日、大丸福岡天神店のエルガーラ・パサージュ広場で、環境問題をテーマにしたクリスマスツリーの点灯式が行われた。テレビやラジオでおなじみの中島浩二氏の合図と共に、クリスマスツリーが点灯した。
その瞬間、白いシャボン玉が舞い上がり、ツリーの上部から雪が降っているかのような演出が施された。観覧者からは歓声が上がり、クリスマスシーズンの到来を感じさせた。
クリスマスツリーの足元には、長崎県対馬市の流木で作られたハート型のフォトスポットが展示されている。たくさんの白い蝶が宿り、飛び立つような姿が神秘的な雰囲気を漂わせている。
クリスマスツリーの飾りには、2022年の大丸福岡天神店のツリーで使用されたものが引き継がれている。飾りの中には対馬に流れ着いた発泡スチロールが使われており、雪が積もったように見える冬らしいデザインが施されている。
会場では、クリスマスの雰囲気を盛り上げる多彩なエンターテインメントが披露された。「雙葉中学校・高等学校」のハンドベル演奏、「対馬SDGs劇団ともに」の朗読劇、「福岡スクールオブミュージック&ダンス専門学校」のFSMゴスペルアンサンブル、そして「クリスマススペシャル楽器メドレー」など、バラエティ豊かなプログラムが来場者を楽しませた。
日本一海洋ごみが流れ着く対馬
ツリー点灯前のトークセッションでは、博多大丸の九州探検隊、対馬市SDGs推進課、対馬高校ユネスコスクール部の関係者が、今回のプロジェクトについて説明した。
九州探検隊は、九州の人々や地域の魅力を発見し、広く発信するプロジェクトであり、対馬市とSDGs包括連携協定を結んでいる。
また、対馬高校は、教育・科学・文化の分野で国際協力を行う国連機関「ユネスコ(UNESCO)」から認定を受けた学校である。
長崎県対馬市は日本一海洋ごみが流れ着く地域として知られている。その量は年間3万~4万立方メートルにも及び、家庭用浴槽の16万倍に相当するという。
流れ着くごみのほとんどはプラスチックであり、海洋汚染の深刻さを如実に示している。実際に対馬市のクジカ浜が映し出されたが、衝撃的なゴミの量だった。
九州探検隊の担当者は、「ある福岡の海岸で見つかったマイクロプラスチックは、いくら拾っても減らない状況だった」と語る。
その体験を経て、対馬を訪れた結果、驚くべき現実を目の当たりにしたという。このツリーは対馬市と連携し、その問題を多くの人に伝えるための手段として生まれた。
絶滅危惧種「ツシマウラボシシジミ」との共生
今年のツリーには、もう一つの重要な要素がある。それは「生物多様性の保全」だ。人間活動の影響で、種の絶滅速度がかつてないほど速まっている。
そこで、絶滅危惧種を保全している対馬高校ユネスコスクール部とのデザイン会議が始まったとのことだ。対馬には絶滅危惧種「ツシマウラボシシジミ」という蝶が生息している。
この蝶をモチーフにした装飾は、廃プラスチックを活用して制作された。オスの蝶は青い羽が特徴であり、ツリーの飾りや展示パネルには青い蝶がアクセントとして加えられている。
また、蝶の羽の一部にはICチップが埋め込まれており、スマートフォンをかざすと対馬高校の学生が環境問題について語る動画が再生される。
この仕組みは、来場者に環境問題への関心を持ってもらうための一つの手段として用意されている。動画を再生する楽しさを感じながら、環境問題について学べる良い方法だと思う。
不要品を価値ある製品に再生するアップサイクル
今回の点灯式では、たくさんの蝶のキーホルダーが用意され、SNSをフォローした方にプレゼントされた。生物多様性を表現するかのように、一つひとつ柄の違うカラフルで可愛らしいデザインが特徴だ。
このキーホルダーの原材料はペットボトルキャップで、不要品を価値ある製品に再生する「アップサイクル」の手法が使われている。この手法は、今後の環境問題解決に役立つ可能性を秘めている。
この蝶のモチーフは、九州探検隊とプレシャスプラスチック唐津(NPO法人唐津Farm&Foodの環境教育事業)のコラボレーションで生まれたもので、オーナメントの蝶はプレシャスプラスチック唐津と名古屋市にある「ムツミ工業」が制作を担当した。
会場に来場していたムツミ工業の副社長によると、「この素材で椅子などの家具を作る予定です。」とのことだ。
確かに家具を作成するのであれば、一定量のペットボトルキャップや廃プラスチックが必要だ。大量生産すれば環境問題解決への貢献が期待できる。
この可愛らしいキーホルダーのプレゼントも、環境問題への関心を高める手段として素晴らしい方法だと感じた。
行動変容を促すテーマ「Change」
今回のクリスマスツリーのテーマは「Change」。環境問題を回復させるための「行動変容」を促すテーマが付けられた。蝶が幼虫から成虫へと劇的に変化するように、人々の行動が環境問題を改善する大きな力となることを示している。
博多大丸の村本光児社長は「一つひとつの行動を変えることで、大きな問題も変えていける」と語り、対馬市の比田勝尚喜市長も「このようなプロジェクトが解決への第一歩になる」とコメントした。
大丸福岡天神店のクリスマスツリーは、12月25日まで点灯されている。近くには対馬の環境問題について学べる展示パネルも用意されている。ぜひ美しいツリーを楽しむとともに、未来に向けた行動について考える機会を得てほしい。
2024 大丸福岡のクリスマスツリー 〜Change 未来にむけて私たちができること
日程:2024年11月9日(土)~12月25日(水)
時間:午前10時~午後11時(※11月9日午後6時30分~、12月25日午後9時まで)
場所:大丸福岡天神店 エルガーラ・パサージュ広場
住所:〒810-8717 福岡市中央区天神1-4-1
2024 大丸福岡のクリスマスツリー協力団体
対馬市SDGs推進課、対馬高校ユネスコスクール部、Precious Plastic Tsushima、Precious Plastic Karatsu(NPO法人唐津Farm&Foodの地域環境教育事業)