個人が外貨定期預金に資金シフト。当然の流れだが、潜在するリスクも意識する必要がある
長期で外貨に投資する外貨定期預金の開設が活況だ。新生銀行の外貨定期預金残高は半年間で6割超増え、ソニー銀行では1カ月間の新たな預入額が半年前から8割増えた。海外の利上げが背景にあり、ソニー銀のドル預金金利は半年で10倍超に上昇した(6日付日本経済新聞)。
世界的に物価が大きく上昇しており、それに応じて欧米の中央銀行は積極的な利上げを行っている。これを受けて、外貨預金の金利が上昇している。
外貨預金の利用者が多いソニー銀ではドル定期預金金利(6カ月物)は足元で2.00%と、2月の0.15%に比べて約13倍に上昇した。新生銀行も1年物や5年物が3.50%と、3月末の1.00%から大幅に上がった(6日付日本経済新聞)。
インフレファイターとして積極的な利上げを進める米国の中央銀行にあたるFRBに対し、日銀の黒田総裁は持続的な金融緩和を行う以外に選択肢はないと語ったように緩和姿勢をあらためる様子はない。この状態が継続される限り、日米の金利差は拡大するばかりとなる。
その上、日米の金利差拡大はドル高円安要因ともなり、9月に入りドル円は24年ぶりとなる140円台に乗せてきた。この円安はドル預金の円換算額を押し上げるため、ドル預金のさらなる増加につながる。
個人はこのあたりかなり敏感である。現状は個人による外貨定期預金への資金シフトは当然の流れだと思う。
ただし、ひとつだけ注意したいことがある。日銀の黒田総裁は持続的な金融緩和を行う以外に選択肢はないと語ったが、そのような政策がこのまま続けられることの方が実はおかしい。黒田総裁の任期中は意地源緩和、ではなく異次元緩和は続くとの見方は多い。しかし、私のようにこのまま来年4月まで本当に続けられるのかとの疑問を持つ者もいる。
何かしらあって日銀が異次元緩和の修正を行うことがないとは限らない点にも注意してほしい。その際には、急激な円安の反動が起きることが想定されるのである。
1998年6月15日に146円台に上昇してきたドル円は、17日に協調介入が実施されて136円台にまで下落(円高ドル安)した。ちなみに今回については米国が協調介入に応じる可能性は極めて低い。それよりも日銀の政策修正による影響が大きいと考えている。