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トップ「ビッグコミックオリジナル」29.3万部…男性向けコミック誌部数動向(2022年10~12月)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
毎週、あるいは隔週などで発売される男性向けコミック誌群(筆者撮影)

「ビッグコミックオリジナル」が29.3万部でトップ

専用の電子書籍・雑誌リーダーだけでなくパソコンやスマートフォン、タブレット型端末を用いたインターネット経由で漫画や文章を読む機会が多数設けられるようになったことで、人々の読書欲はむしろ上昇しているとの見方もある。一方で紙媒体を用いた本はその立ち位置を落とし、ビジネスモデルの再定義・再構築を迫られる事態に陥っている。今回はその雑誌のうち、特にすき間時間のよき相棒である男性向けコミック誌(少年向けコミック誌よりも対象年齢が上の雑誌。青年向けも含む)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から、その実情をさぐる。

まずは男性向けコミック誌の直近四半期、2022年10~12月の実情。今期で「モーニング2」と「イブニング」が非公開化された。両誌いずれも事実上の休刊によるものである。

↑ 印刷証明付き部数(男性向けコミック誌、万部)(2022年7~9月期と2022年10~12月期)
↑ 印刷証明付き部数(男性向けコミック誌、万部)(2022年7~9月期と2022年10~12月期)

男性向けコミック誌は少年向けと比べると印刷証明付き部数の規模が小さく、また飛びぬけた値を示すコミック誌が無いため、上位陣では僅差で順位を競り合う雑誌が複数見られる。ちょっとしたヒット作の登場があれば、印刷証明付き部数の順位が塗り替えられるような状況。

トップを行くのは「ビッグコミックオリジナル」の29.3万部、ついで「週刊ヤングジャンプ」の28.2万部、そして「ヤングマガジン」の20.0万部、「ビッグコミック」の17.6万部。「ビッグコミックオリジナル」と「週刊ヤングジャンプ」との部数差はわずかで、今後両者の順位が入れ替わる可能性は十分にある。

「モーニング2」は週刊モーニング増刊的なポジションのコミック誌として2006年8月に創刊、「聖☆おにいさん」や「もやしもん」(「イブニング」からの移籍)など多数のヒット作を生み出したが、コミック誌不況の波にもまれ部数は低迷。2022年9月26日発売号で紙媒体としての発行は終了し、以後ウェブマンガサイト「モーニング・ツー」として提供されている。

↑ 印刷証明付き部数(モーニング2、部)
↑ 印刷証明付き部数(モーニング2、部)

ウェブマンガサイトへの移行時の際には紙媒体版の全連載が移行されているが、やはり紙媒体が無くなるのは寂しい話に違いない。

「モーニング2」と同じ講談社発の男性向けコミック誌「イブニング」も、2023年2月28日売り号で休刊が決定。2022年10~12月期分の部数は公開可能なはずだが、同じ講談社ということもあり、「モーニング2」と同じタイミングで印刷証明付部数の非公開化をしたようだ。

↑ 印刷証明付き部数(イブニング、部)
↑ 印刷証明付き部数(イブニング、部)

イブニングは2001年に月刊誌として創刊され、2003年からは月2回刊となった男性向けコミック誌。「K2」「少女ファイト」「レッド」「よんでますよ、アザゼルさん。」「勇午」(「月刊アフタヌーン」からの移籍)など多数のヒット作を生み出している。「モーニング2」同様に部数は低迷していたものの、まだ4万部強もの部数を示しており、もう少し頑張れたのではと思う人もいるかもしれない。連載中の漫画は一部が同じく講談社の「モーニング」に移籍し、大部分はウェブマンガサイト「コミックDAYS」で連載を継続することになる。

プラス誌は無し…前四半期比

続いて公開データを基に各誌の前・今期間の販売数変移を独自に算出し、状況の精査を行う。雑誌は季節でセールスの影響を受けやすいため、四半期の差異による精査は、雑誌そのものの勢いとはズレが生じる可能性がある。一方でシンプルに直近の変化を見るのには、この単純四半期推移を見るのが一番。

↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前期比)(2022年10~12月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前期比)(2022年10~12月期)

プラスを示した雑誌はなく、プラスマイナスゼロが1誌。それ以外はすべてマイナスで、誤差領域を超えたマイナス幅を示したのは4誌。1割以上のマイナス幅も「月刊!スピリッツ」で確認できる。

前期比では最大の下げ幅を示した「月刊!スピリッツ」だが、前期比だけでなく印刷証明付き部数そのものも危機的な状況にある。

↑ 印刷証明付き部数(月刊!スピリッツ、部)
↑ 印刷証明付き部数(月刊!スピリッツ、部)

「月刊!スピリッツ」は2008年7月に休刊した「週刊ヤングサンデー」の後継誌として2008年8月に創刊。「重版出来!」などの有力作品を生み出しているが、部数の低迷は否めない。直近期の印刷証明付き部数は2500部。大手雑誌なら1期の変動部数分ですらない。その中で、さらに中長期的に部数は減少傾向にある。早急に部数底上げの手立てが必要な状況に違いない。

季節変動を除外できる前年同期比では

続いて季節変動を考慮しなくて済む、前年同期比を算出してグラフ化する。今回は2022年10~12月分に関する検証なので、その1年前にあたる2021年10~12月分の部数との比較となる。これにより季節変動を除外し、より厳密にすう勢を知ることができる。数十年もの歴史を誇る雑誌もある中で、わずか1年で何割もの下げ幅を示す雑誌も見受けられるが、それだけ雑誌業界は大きく動いていることを再確認させられる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)(2022年10~12月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)(2022年10~12月期)

男性向けコミック誌でプラスを示したのは皆無で、すべてがマイナス。しかもすべて誤差領域を超えたマイナス幅。「月刊!スピリッツ」「ビッグコミックスピリッツ」「ヤングアニマル」「ビッグコミックスペリオール」なとのような名だたる男性向けコミック誌たちが1割どころか2割を超えるマイナス幅を示している。有名どころ、コンビニなどでも多々目にとまるコミック誌が軒並み名を連ねているのを見るに、もの悲しさを覚えるものがある。同時に「そういえば最近になって立ち寄り先のコンビニで見かけなくなったな」と思い返したコミック誌も複数あるだけに、複雑な心境にも追いやられる。

ただし男性向けコミック誌も多くが電子化されており、電子版に読者がシフトした結果である可能性は否定できない。例えば「アフタヌーン」はページ数も多く厚い雑誌であることから、電子版にシフトしている読者が少なからずいるものと推定できる。2023年2月号(2022年12月23日発売)の場合、791ページもの分厚い雑誌となっており、これを持ち歩く、さらには通勤・通学の際に読むのは少々難があるのは否めない。電子版ならば端末自身の持ち運びができれば、1000ページの雑誌でも容易に読むことができる。

現在は電子書籍、ウェブ漫画が浸透する中で、小規模書店の閉店、コンビニでのコミック誌のシュリンク化・棚からの撤去が続き、紙媒体を手に取る機会が減少している。漫画を提供し、市場を支えていくための仕組みも選択肢が増え、領域が広がり、これまでとは異なる発想が求められつつある。

なお今件の各値はあくまでも印刷証明付き部数であり、紙媒体としての展開動向。コミック誌の内容が電子化されて対価が支払われた上でダウンロード販売された場合、その値は反映されない。そして電子雑誌の利用者も確実に増えている。印刷証明付き部数が減少を続けても、各雑誌、コミックそのものの需要がそれと連動する形で減少しているとは限らないことは認識しておく必要がある。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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