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東京五輪延期。ツール・ド・フランスはどうなる?

宮本あさか自転車ロードレースジャーナリスト
photo: jeep.vidon

2020年3月24日、東京五輪の延期が正式に発表された。

4年に1度の地球最大のスポーツの祭典が、苦渋の決断を下したニュースを受け、自転車界は大いに揺れている。ツール・ド・フランスは……毎年開催のスポーツイベントとしては世界最大級を誇る自転車レースは、果たしてどうなるのか、と。

本来7月24日に開幕するはずの五輪が延期に追い込まれ、6月27日にスタート予定の自転車大会の運命も、当然、危ぶまれている。

春のレースは全滅

昨年末に中国・武漢に端を発した新型コロナウイルスCOVID-19は、自転車シーズンがいよいよ本番を迎えた3月、急速に猛威を振るい始めた。

次々とレースが中止された。3月13日にはシーズン最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアが早々と延期を余儀なくされた。3月8日開幕のパリ〜ニースは、2日目から「無観客」で対応するも、あちこちで国境封鎖が始まり……1日早く切り上げる羽目になった。

そして3月14日、パリからニース第7ステージを最後に、ヨーロッパ全土からプロトンが消えた。

地球上で最後に行われたUCI国際自転車競技連合登録レースは、現時点では、3月15日南米・チリのGPパタゴニアということになる。3月19日付けの通知で、UCIが、4月末までの全レース停止を申し渡したからだ。

4月1日現在、最も早い「再開」レースは、5月6日開催のツアー・オブ・アップサラ(女子エリート、スウェーデン)。自転車の本場ヨーロッパの男子エリートレースに関しては、5月16日のGPプリュムレク(フランス)が、いまだかろうじてレースカレンダーに留まっている。

トップカテゴリーのUCIワールドツアーは、すべてが上手く行けば、5月31日のクリテリウム・デュ・ドーフィネから再出発する予定だ。

※4月1日夕方遅くにUCIは6月1日までレース中止期間の延長を決定。ドーフィネも自ずと中止・延期を余儀なくされる。

開催委員会はノーコメント

少なくとも主催者のASO=ツール・ド・フランス開催委員会は、現時点では、ドーフィネの中止を発表してはいない。

かといって開催を宣言しているわけでも、ほのめかしているわけでもない。むしろノーコメントを貫いている。主催レースの中止を告げるプレスリリースを、ただ淡々と発表するだけ。最後の公式アナウンスは3月18日。5月1日予定のフランクフルト一周の延期だった。

大会委員長クリスティアン・プリュドムも、パリ〜ニース最終日の以下のコメントを最後に、一切の発言を控えている。

「あらゆるスポーツが歩みを止めた。自転車競技もまた例外ではない。ただしツール開幕まで100日以上ある。そして人々が普通の生活を取り戻したとき……そんな日ができるだけ早く来て欲しいと誰もが願ってるけれど……、おそらくこれまでよりも激しい熱狂と欲求に、世間はあふれていることだろう!」

選手176人の勇姿をひとめ見ようと、3週間で約1200万人ものファンが沿道に詰めかける。(photo: jeep.vidon)
選手176人の勇姿をひとめ見ようと、3週間で約1200万人ものファンが沿道に詰めかける。(photo: jeep.vidon)

スポーツ大臣は「無観客」開催を示唆

フランスを代表するもう1つの国際的スポーツイベント、5月開幕の全仏オープンテニスは、3月17日に新日程を発表した。国内で最もメディア注目度の高いカンヌ映画祭も、3月19日に日程変更。6月中旬から1ヶ月かけて欧州各地で行われるはずだったサッカーEURO2020さえ、早くも3月17日に延期を決断している。

そこに東京五輪1年延期の報が飛び込んできたのだ。自ずとツール・ド・フランスの動向に、世間は注目した。

3月25日、つまり東京五輪延期決定の翌日、仏ラジオ局フランス・ブルーに出演した仏スポーツ省大臣ロクサナ・マラシネアヌは、ツール開催問題を回避することはできなかった。

「現時点ではASOと話し合いの最中だ。あらゆるシナリオを検討している。ツール・ド・フランスの運営は入場料ではなく、テレビ放映権でまかなわれている。外出制限令が敷かれ、誰もが家に留まっている現状を考慮すると、集客型スポーツよりテレビ的イベントを優先するメリットがある。最終的にはテレビで観戦できるから、それほど不都合もあるまい」

実は23日の時点ですでに「無観客」「無キャラバン(公告隊パレード)」「無ヴィラージュ(宣伝ブース村)」の可能性をほのめかしていた大臣は、改めて「無観客」を示唆した。この発言はあっという間に世界中を駆け巡った。あまりの反響の大きさに驚いたか、大臣は当夜にこうツイートしている。

「ツールはスポーツの記念碑的存在。決定を下すにはまだ早すぎる。まだ時間はある。現在我々はもっと急を要するバトルを戦っている。その後のことを考える前に、この山を全力で乗り越えることに集中しよう」(@RoxaMaracineanu

憶測が憶測を呼ぶ

その2日後には、ベルギーのフランス語ラジオ局RTBFが、新情報をリークした。

ステージ開催自治体の証言をもとに組み立てられた仮説によると、ASOが定めた最終決定のデッドラインは5月15日。すべては5月1日の状況次第だという。

もちろん前述の通り、開催委員会は完全黙秘を決め込んでいる。やるのかやらないのか、無観客を検討中なのか、デッドラインがいつなのか……「表向き」にはなにひとつ公表されていない。

フランス全土は、3月17日から、厳しい外出制限下に置かれている。すべてのスポーツイベントは中止され、アスリートの自宅外での練習は固く禁じられている。

最短でも4月15日まで同措置は続く。

自転車ロードレースジャーナリスト

フランス・パリを拠点に、サイクルロードレース(自転車競技)を中心とした取材活動を行っている。「CICLISSIMO」「サイクルスポーツ」誌(八重洲出版)、サイクルスポーツ.jp、J SPORTSサイクルロードレースWeb等々にレースレポートやインタビュー記事を寄稿。

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