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【自治体ランキング】転出超過ワースト3は小山市、成田市、長崎市…新宿区が11位の驚き

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事
(写真:つのだよしお/アフロ)

人口の転出超過については、これまでも高橋亮平のコラムでも、何度も自治体レベルにおける最も考えていかなければならない重要課題として紹介してきたが、今回は、2019年の最新データを元に、あらためて自治体の人口流出について全国815市区のデータまとめてみたので、紹介していきたい。

今回のデータは2019年のものだが、こうしたトレンドに加えて、今年度はさらにこれに新型コロナによる影響が重なって来ることになる。

今後10年スパンでの自治体経営を考えると、本年度にどういった対応ができるかは、今後に大きな影響を与えるように思う。是非、自治体関係者の皆さんには、こうした視点での取り組みにも期待したいと思う。

転入超過は首都圏4都県が上位4位を独占。あらためて見える東京一極集中

図表1: 都道府県別人口流入数・流出数・人口流入超過数(2019)

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出典: 総務省住民基本台帳人口移動報告から筆者作成

では、まず都道府県比較から見ていこう。

1年間の転入が転出よりも多い転入超過となっているのは、47都道府県のうち、わずか8都府県しかない。

1位が82,982人の東京都、2位が29,609人の神奈川県、3位が26,654人の埼玉県、4位が9,538人の千葉県と、上位4位までを首都圏が占めており、東京一極集中などと言われていることがデーターでも示される結果となった。

かろうじてプラスなのは、大阪府、福岡県、滋賀県、沖縄県までだった。

逆に転入数より転出数の方が多い転出超過が最も多かったのは、▲8,018人の広島県、次いで▲7,495人の茨城県、▲7,309人の長崎県と並ぶ。転入や転出の数で見ると人口移動の多い愛知県や北海道なども転出超過となっている。

23区で転出超過は新宿区と豊島区だけ。最も転入超過だったのは世田谷区

図表2: 23区別人口流入数・流出数・人口流入超過数(2019)

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出典: 総務省住民基本台帳人口移動報告から筆者作成

都道府県別で圧倒的に転入超過となっている東京都をまず23区から見ていこう。

23区で転出超過になっているのは、▲1,827人の新宿区と▲273人の豊島区だけ、後はすべて転入超過だった。新宿区は全国815市区中でもワースト11位とその転出超過の多さが際立っていた。

転入超過については、最も多かったのは、7,509人の転入超過となった世田谷区(全国7位)、次いで6,340人の練馬区(全国8位)、6,012人の品川区(全国9位)、5,336人の大田区(全国10位)と全国815市区のトップ10に4区が入った。

図表3: 東京都内市別人口流入数・流出数・人口流入超過数(2019)

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出典: 総務省住民基本台帳人口移動報告から筆者作成

続いて、東京都でも23区以外の市について見ていくことにしよう。

グラフで見ると、極端な転入超過や転出超過は見られないが、26市のうち転出超過は、▲576人の福生市、▲102人の青梅市、▲67人の東大和市、▲48人の羽村市の4市だけ、こう見ていくとあらためて東京都全体が安定の転入超過エリアであることも分かってくる。

転入超過は、2,465人の八王子市(全国29位)と、2,122人の西東京市(全国32位)が2千人以上の転入超過があった。

首都圏4都県で最も流入超過だったのは川崎市、次いで横浜市、転出超過県最多は横須賀市

図表4: 神奈川県内市別人口流入数・流出数・人口流入超過数(2019)

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出典: 総務省住民基本台帳人口移動報告から筆者作成

首都圏4都県の市区の中で最も流入超過だったのは、10,618人の川崎市(全国3位)、次いで10,306人の横浜市(全国4位)だった。神奈川県内ではこの2市が圧倒的だが、2,966人の藤沢市(全国24位)、2,220人の大和市(全国31位)についても2千人以上の転入超過となった。

一方で神奈川県で最も転出超過となったのは、▲1,356人の横須賀市(全国ワースト19位)。次いで▲445人の厚木市、▲407人の小田原市、▲320人の伊勢原市、▲260人の南足柄市、▲228人の三浦市と続き、6市が転出超過となった。

一般市で全国最多転入超過は流山市。千葉県転出超過最多は全国ワースト2位の成田市

図表5: 千葉県内市別人口流入数・流出数・人口流入超過数(2019)

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出典: 総務省住民基本台帳人口移動報告から筆者作成

千葉県内で最も転入超過が多かったのは、4,353人の流山市だった。流山市の転入超過は、全国11位にあたり、政令指定都市や中核市、23区などを除いた一般市の中では、全国で最も転入超過が多かった市となった。県内では次いで4,000人の柏市(全国14位)、3,739人の千葉市(全国16位)、3,715人の船橋市(全国18位)と続き、2千人以上の転入超過が4市だった。

ちなみに筆者の地元、市川市は1,892人の転入超過で県内5位(全国34位)だった。

一方で、千葉県内37市ある内で転出超過は14市に限定されており、袖ヶ浦市、木更津市、旭市を除けば、その殆どは東京に近い北西部の自治体が並んでいるなど、転入超過県でありながら、県内の地域差が大きく出た。

千葉県内で転出超過が最も多かったのは、▲3,272人の成田市。成田市の転出超過は、全国ワースト2位という結果となった。次いで▲1,675人の八街市(全国ワースト12位)、▲999人の鎌ケ谷市(全国ワースト12位)と、全国の転出超過ワースト50にも3市が含まれた。

転入超過全国2位、4都県最多は、さいたま市

図表6: 埼玉県内市別人口流入数・流出数・人口流入超過数(2019)

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出典: 総務省住民基本台帳人口移動報告から筆者作成

埼玉県の転入超過は、11,252人のさいたま市の一人勝ち。さいたま市の転入超過数は全国2位、首都圏4都県で最も多い市区となった。この年話題となった映画では、「ダサい」、ひらがなの地名など「バカっぽい」などと散々にディスられていたさいたま市だが、映画公開の年に首都圏4都県で最も人口が集まった自治体になっているというのが面白い。

埼玉県内で次いで転入超過となったのは、3,370人の川口市(全国21位)、1,996人の越谷市(全国33位)となっている。

埼玉県内40市の中で転出超過になったのは9市。▲359人の秩父市、▲300人の坂戸市、▲201人の入間市、▲179人の羽生市、▲173人の北本市、▲155人の幸手市、▲29人の鶴ヶ島市、▲21人の蓮田市、▲6人の日高市となった。

転入超過ベスト3は、大阪市、さいたま市、川崎市・・・ベスト50の8割が首都圏4都県

図表7: 市区別人口流入数・流出数・人口流入超過数ランキングベスト50(全国815市区 2019)

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出典: 総務省住民基本台帳人口移動報告から筆者作成

ではいよいよランキングを紹介しよう。

今回の調査で、全国815市区をランキングして見たが、最も転入超過が多かったのは、13,762人の大阪市、次いで、さいたま市、川崎市、横浜市と並び、5位に9,812人の札幌市、6位に8,191人の福岡市が入った。

トップ20に首都圏4都県以外で入ったのは、あと19位の名古屋市だけ。

ベスト30で見ても東京都の市区が16、千葉県が4、神奈川県が3、埼玉県が1と首都圏4都県への転出超過が目立つ。

また、トップ30の中に、23区が15、政令指定都市が8、中核市が4と並ぶ中で、一般市で入ったのは、11位の流山市(千葉県)、23位のつくば市(茨城県)、24位の藤沢市(神奈川県)だけだった。この3つの自治体は、とくに検討が光る。

転出超過自治体ワースト3は、小山市、成田市、長崎市。ワースト50に県庁所在地が13…

図表8: 市区別人口流入数・流出数・人口流入超過数ランキングワースト50(全国815市区 2019)

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出典: 総務省住民基本台帳人口移動報告から筆者作成

最後に、今回の本題でもある転出超過自治体について見ていく。

2019年に全国で最も転出超過となったのは、▲3,534人の小山市(栃木県)だった。次いで、▲3,272人の成田市(千葉県)、▲2,887人の長崎市、▲2,841人の取手市(茨城県)、▲2,569人の福山市(広島市)、▲2,525人の豊橋市(愛知県)、▲2,373人の古河市(茨城県)、▲2,305人の北九州市(福岡県)、▲2,200人の羽島市(岐阜県)、▲1,989人の岡山市と続く。

とくに切実に捉えるべきは、長崎市、岡山市は、県庁所在地でありながら転出超過となってしまっていることだ。

転出超過の課題は、大きく2つある。

1つは、地方区分や都道府県といった単位での大きな流れとして転出超過になっていってしまっている構造。

もう1つが、都道府県内においても都市部への人口集中など、都市環境層の中での転入超過による勝ち組と、転出超過による負け組とが出てきてしまっている状況である。

今回、ワースト50自治体を見ると、長崎市、岡山市以外にも、▲1,626人の那覇市(全国ワースト13位)、▲1,406人の金沢市(全国ワースト16位)、▲1,363人の青森市(全国ワースト18位)、▲1,316人の岐阜市(全国ワースト21位)、▲1,220人の広島市(全国ワースト24位)、▲1,136人の静岡市(全国ワースト26位)、▲1,045人の高知市(全国ワースト28位)、▲870人の鹿児島市(全国ワースト41位)、▲831人の神戸市(全国ワースト46位)、▲828人の山形市(全国ワースト48位)、▲822人の長野市(全国ワースト49位)と13もの県庁所在地が含まれているというのは、大きな問題として捉える必要があるように思う。

自治体は、新型コロナの非常事態だからこそ、この先の中長期的な戦略が求められる

地方創生ということが騒がれた時期があったが、本来の地方創生の目的のように、どう地方における中核となる地域を創りながら地方を維持していくのかは、大きな課題である。

もう一方で、今回のランキングでワースト50市区を都道府県別に見ると、愛知県4市、千葉県、茨城県、広島県、福岡県でそれぞれ3市、長崎県、静岡県、青森県、北海道、三重県、長野県、大阪府、兵庫県でそれぞれ2市など31都道府県におよび、特定の都道府県や地域に偏っているということではなく、首都圏4都県を含め、それぞれの地域の中で、全国のワーストとなる転出超過自治体が発生している。

その発生要因は、自治体ごとに異なりそうだが、例えば、転入超過のベスト6だった福岡市の隣で北九州市は転出超過のワースト8になっているケースなどもある。

転出超過自治体ランキングについては、これまでも何度も書いてきたが、3年前に書いた

【自治体ランキング】転出超過ワーストは3年連続で北九州市。転出超過率は夕張市、転入超過率は中央区。』の際と比較すると、多くの自治体が入れ替わっていることなども見える。

是非こうしたものも参考にしてもらえればと思う。

2020年は、新型コロナウイルスの影響で、これまでとは異なる新たな動きが出てくることも予想される。

非常事態の中で、どの自治体も現状の対策で一杯のところもあると思うが、是非、こうした人口問題についても中長期的問題意識を持って行ってもらいたいものだと思う。

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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