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支持率で維新が立憲に追いつく。代表戦で国民の求める政権選択政党に変われないと、期待は維新に流れる

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事
(写真:つのだよしお/アフロ)

今週から立憲民主党の代表戦が始まっているが、まったく盛り上がっていない。

一方で、選挙直後で世論的に大きなニュースになってはいないが、政界としてはより大きなインパクトがあるのは、政党支持率で維新が立憲を超える、並ぶといったことのように思う。

各社11月の政党支持率一覧

出典:筆者作成
出典:筆者作成

今週報道されたテレビ朝日の世論調査では、立憲と維新が並んだことが報道されたが、今月実施された各社の政党支持率の調査は、多少の前後はあるものの概ねどこも同じような数字が出ている。

主要な調査の平均を取ってみたので、紹介したい。

自民党は引き続き38.8%と他党との比較ではまだまだ圧倒的に高いが、立憲民主党の10.1%に対して、日本維新の党が11.1%と高くなっている。

代表選挙が盛り上がらないと言われている立憲民主党だが、単に代表の首をすげ替えるということではなく、長期的に政権選択政党をどう作っていくかを真剣に考えないとまずい段階まで来ているのではないかと思わされる。

高橋亮平のコラムでは、2016年8月、民主党に維新の党から分裂した旧みんなの党系などのメンバーが合併し、新たにできた民進党の代表戦を控え、『蓮舫代表になっても無投票で「社会党末期の道」ならむしろ「小池新党」に期待が集まる』という記事を書き、政界の多くの方々にも読んでもいただき、各政党から呼ばれて話をしに行ったりなどした。

今振り返っても思うが、当時の民進党は、政権交代以降の民主党の負の遺産を清算して、一気に新たな政権選択政党へと変わっていける数少ない可能性を持ったタイミングだった。

当時、この国のためには、5年10年先を考えて、国民が政権を選択できる環境を創っていくことの必要性を訴え、このチャンスを自ら逃すともはや復活の可能性は皆無だと指摘していた。

結果、民進党は、このチャンスを活かす事ができずに、指摘の通りの末路を歩んでいくことになった。

2016年時に指摘した政党ポジションのイメージ図

出典:筆者作成
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2016年当時、指摘をしたのは、左右のイデオロギーによるスタンスより、国民は改革派であるか守旧派であるかの方が重要であり、潜在的な国民の期待はよりセンターからやや右の改革派にあるとした上で、左の守旧派のポジションからセンターの改革派へとシフトしていく必要を指摘した。

いみじくも5年の歳月を経て政党名は異なるが、今回、衆院選惨敗の責任を取る形で代表が辞任し、代表選挙が行われている立憲民主党は、当時程の可能性がある状況でもなくなってきてしまっているが、求められる状況はほぼ変わらない状況にあるのではないだろうか。

ここであらためて指摘をしておきたいのは、重要なのは、野党第一党の党首が誰になるかではなく、この代表戦を通じて、今後、政権選択政党になる政党に変えて行くことができるかである。

政党ポジションのイメージ図

出典:筆者作成
出典:筆者作成

2016年時と現状を比較すると、自民党は安倍政権時と比較して岸田政権はバランスが良くセンターに寄ってきたことで潜在的な多くの国民の期待には近づいてきていると感じている一方で、バランスを取ることから改革要素については安倍政権に比べてそこまで積極的ではないと言える。ただ、野党からは「古い政治」といった形で責められることがあるものの、フラットな国民的に見た場合には、むしろ多くの野党と比較した際に、自民党の方が革新的だと思われているのではないだろうか。少なくとも旧来の守旧派的な自民党のイメージからは脱却し、多くの国民の潜在的な期待に近い位置にいるといえる。

各党の議席数比較(2021衆議院総選挙前後)

出典:筆者作成
出典:筆者作成

一方で、立憲民主党は、本来、政権選択政党として、国民の潜在的な期待に近づいていくために、よりセンターに、そして守旧派から革新的なポジションへとシフトしていくことが求められているにも関わらず、政権交代を実現した民主党から民進党、そして立憲民主党へと、むしろ多くの国民のスタンスと逆方向にポジションを動かしてしまってきてしまった。

当初のリベラルの旗印を立て、排除された国会議員たちが現職を維持するということのためには、より自らの存在意義と、支持層に対する共感を高めるために、リベラルのポジションを明確にすることは正解だったと思うが、このポジションを取る限りは、国民的な政権選択政党にはなり得ないことは、今回の衆議院総選挙で明らかになったと言える。

立憲民主党の代表選挙の各候補者のコメントなどを見ていても、現在のところ選挙における共産党との選挙協力の方法程度の議論にしかなっていない。

2016年にも指摘したことだが、今回の代表選挙で、また大きく変われるチャンスを失うと、立憲民主党にとっては取り返しのつかないことになりかねない。

立憲支持者に限らず、自民党支持者も含めた国民の皆さんには、こうした野党第一党が国民的な政権選択政党になる気があるのかどうかという点にぜひ注目をしてもらいたい。

そのためには世代交代はもちろん、これまでのリベラルポジションからのシフトを考えると、4人の中では少なくとも泉健太 政調会長になることが大前提で、その上で、この代表選挙の中で、どれだけ方向転換を提示できるかが重要になってくるのではないだろうか。

一方で、立憲民主党がこの代表選挙で、国民的な政権選択政党へとシフトチェンジができなかった場合、もはや国民の期待は別のところに行くのではないだろうか。

本記事の冒頭で、政党支持率の現状を伝えたが、既に世論調査のレベルでは、野党第一党を日本維新の会にとの期待が高まりつつある。

先の衆議院選挙の結果について議席数の増減だけで見ると、日本維新の会の一人勝ちだったことが見て取れる。

次いで、国民民主党、公明党といったところだろうか。

少なくとも、政権に対しての支持率が暴落し、自民党の大敗と報じられていたような状況から考えれば、15減の自民党も結果的には単独で絶対安定多数を超える261議席ということを考えれば、むしろ勝ちきった選挙。

逆に、野党共闘のある意味完成形の形で挑んだ立憲民主党と共産党は、状況なども踏まえて考えれば、大惨敗だったとも言えるのではないだろうか。

一方で、こうした状況だけでは説明できない事象についても今回の総選挙では起こった。

現職の自民党幹事長であった甘利明議員が小選挙区での落選、派閥の領主である石原伸晃議員の落選、ニュースではそれ程取り上げられないものの、政界関係者の中では、野田毅議員の落選などはかなりインパクトも大きかったのではないだろうか。

ただ大物議員の落選は与党だけではない。

小沢一郎議員の小選挙区での落選、中村喜四郎議員も小選挙区で落選となった。

こうした状況に関して感じるのは、与野党関係なく、これまで以上に国民の潜在的なニーズとして、守旧派への評価、古い政治への評価が厳しくなってきているということだ。

これは同時に、政界に世代交代を求める流れにもなってきているのではないだろうか。

政党ポジションのイメージ図2

出典:筆者作成
出典:筆者作成

先程の図に、衆議院選挙で勝者となった日本維新の会と国民民主党を当てはめてみる。

おそらく国民的な意識で、現在の主要国政政党の中で、良くも悪くも最も革新的な改革を提示し続けているのは、日本維新の会と言える。

またもう一つの今回の総選挙の勝者とも言える国民民主党もまた、野党共闘の枠組みに加わらず、政策の提案による実現を訴えるスタイルそのものが、守旧派のイメージが少なく、革新的に映ったのではないかと思われる。

総選挙後、国民民主党は、野党共闘による国対委員長会談に参加しない方針を打ち出し、日本維新の会に近づいているとも言われる。

現在の政党支持率だけをとっても、日本維新の会が立憲民主党と競っている現状を考えれば、仮に日本維新の会と国民民主党の合併ということにでもなれば、むしろこちらの政党の方が国民の潜在的なニーズに近い政権選択政党になる可能性がある。

衆議院総選挙が終わった直後ではあるが、来年には参議院選挙がある。

数年後というスパンで考えれば、政局で最も重要なトピックは、この国に国民のニーズにあった政権選択政党ができ、どちらの政党がその時代における社会課題を解決できる政党なのかと選択できる土壌を創っていくことは本当に重要である。

こうした事を考えた上で、これから半年の野党における動きは、今後を決める重要な選択になりかねず、日本維新の会と国民民主党、場合によってはさらにファーストの会や首長新党などと言われる動きも含めて政界がどうなっていくのか、また、今回の立憲民主党の代表選挙についても注目していきたいと思う。

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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