個人ベースでは84%…インターネットの普及率の推移をさぐる
パソコンやスマートフォンをはじめとした携帯電話はもちろん、家庭用ゲーム機、さらには各種家電製品にまで実装されるようになったインターネットへのアクセス機能。多種多様な場面・部門でインターネットは活用されており、生活に欠かせないインフラ的な立ち位置を示している。それではそのインターネットは日本において、どれほどの人達にまで普及しているのだろうか。複数の視点でこの「インターネット普及率」は推し量ることができるが、今回は総務省が2017年6月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を中心に、その実情を確認する。
最新版(2016年版)「通信利用動向調査」によると、2016年9月末時点のインターネットの普及率(過去1年間にインターネットを一度でも利用したことがある人の率)は83.5%・利用者人口は1億0084万人となっている。
この調査結果での「インターネット利用」の定義は「6歳以上」「過去1年間にパソコン・携帯電話(スマートフォンやPHS含む)・ゲーム機・タブレット型端末などあらゆる端末でインターネットにアクセスした経験がある」となっている。つまりプライベート、仕事、学業上などの目的や、該当機種の所持の是非は範ちゅうにない。例えばインターネットカフェからのアクセス、スマートフォンでのブラウザによる閲覧も「利用者」にあたる。
1997年末には個人普及率は9.2%でしかなかった。しかし20世紀末から21世紀にかけて急速に上昇し、2005年末には70%を突破する。以後、成長率は鈍化しているが、上昇は継続している。
一方、2000年前後から現在に至るまで、学校など一部を除き、「パソコン」≒「インターネット」との図式が成り立っている。パソコン所有者はほぼ同数が、それを使ってインターネットを利用する次第。そのような状況から考えれば当然なのだが、今グラフはパソコン普及率とほぼ同じ動きを示している。
2005年以降普及率が鈍化しているのは、その時点までで導入・使用意向の高い世帯・個人の多くが環境を導入したことによるものと考えられる。残りの未導入の個人はインターネットを利用する意志の低い人、あるいは利用しにくい環境にある人など。それら利用者対象外が利用をはじめるのは、容易なことではない。ハードルそのものは少しずつ低下しているものの、全員がスムーズにその障壁をこえることは難しい。あるいはハードルをこえることに意義を感じない人もいる。
ただし昨今では通信利用動向調査自身でもいくつかの項目から判明している通り、スマートフォンが気軽なインターネットへのアクセスツールとして普及浸透している関係で、若年層を中心に「パソコン離れ」的な現象が起きているのも事実。ここ数年ではパソコン普及率とインターネット人口普及率との間の連動性が薄れている気配がある。実際、パソコンの普及率そのものは減退の値動きを示している。そして今件通信利用動向調査のインターネット人口普及率では、スマートフォン経由のアクセスでもインターネット利用に該当する。結果としてかい離が生じているのも当然の話ではある。
インターネット普及率を上げる方法の一つに、スマートフォンも含めた「モバイル端末」の積極的な普及展開がある。パソコン経由のインターネット接続に比べ、モバイル端末は手続きや事前準備、環境整備がきわめて単純化している。アクセス制限や表現能力など、パソコンと比べて限られている面もあるが、いつでも手持ちにできるなどの「携帯電話をはじめとしたモバイル端末ならではのメリット」も多い。今や若年層にとってはパソコンではなく携帯電話(多分にスマートフォン)がインターネットへの主流窓口として存在している。
整備すべきインフラとしてインターネットの普及を目指すのであるとすれば、ブロードバンド環境の一層の整備充実と共に、(インターネットへの接続が可能な)モバイル端末、あるいはタブレット型端末の普及促進にも力を入れた方が好ましい。実際、海外、特に新興国では、モバイル端末の普及を中心にインターネット利用者・利用率が急増しているのだから。
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※通信利用動向調査
2016年11月~12月に世帯向けは都道府県及び都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送・オンラインによる調査票の配布及び回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万7040世帯(4万4430人)、2032企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。