選挙を見据えた経済対策は財政状況も意識する必要も。国債利回りが跳ね上がると一気に負担が増加しかねない
菅義偉首相の自民党総裁任期満了に伴う自民党総裁選挙は9月17日に告示、9月29日に投開票が予定されていると報じられた(ただしまだ流動的?)。「出馬は当然」と続投に意欲を燃やす菅義偉首相に対し、岸田文雄前政調会長が立候補を表明している。
菅首相は党刷新をアピールするため、衆院選前に二階俊博幹事長の交代を柱とする党役員人事を行う方向で調整に入ったと伝えられた。自民党総裁選挙の行方にも絡んで二階幹事長の処遇が注目されたが、どうやら交代するようである。
現時点で自民党総裁選挙の行方には不透明感が漂う。支持率や横浜市長選挙の結果などからみても菅首相には非常に厳しい情勢となっている。しかし、岸田氏に支持が集まるのかも不透明。別なダークホースが登場してくるかもしれない。
しかし、いずれにしても自民党総裁選挙、さらには衆院選も控えて、大型の経済政策が打ち出される可能性が出てきている。
野党側が求めている9月上旬からの臨時国会について、政府・与党は、召集を見送る方向となった。これにより補正予算案の編成も選挙後となることが予想される。
しかし、菅首相は、自民党の二階幹事長らと会談し、感染対策と並行して経済対策にも取り組みたいとして、党として追加の経済対策を取りまとめるよう要請した。
自民党の岸田前政調会長も29日、記者団に「来年の春までしっかりと見通せるような数十兆円規模の経済対策を早急に取りまとめて、打ち出すべきだ」と述べていた。
コロナ対策とともに経済対策で有権者にアピールするつもりかと思われる。むろん、コロナ禍にあって苦しんでいる人達がいることは確かであり、その対策は必要であろう。
しかし、GDPも回復しつつあるなか、総じて経済は回復基調にあることも確かで、メリハリをつけることは大事であり、規模ありきの対策となってしまうのは避けてほしいところである。
首相との会談後に二階氏は記者団に対し「経済対策を打つなら思い切ったものをやらなければならないが、財政との問題もある。財政が極めて厳しい状況のなかで、どういう経済対策を打っていくか両立していかなければならず、しっかり対応したい」と述べた(NHK)。
昨年度の新規国債の発行額は、大規模な補正予算を経て、112兆5539億円という異常とも言える規模に膨らんだ。これは国債発行によって補われることになり、来年度の概算要求における国債の償還や利払いに充てる「国債費」は、今年度の当初予算より6兆円余り増えて、30兆2362億円に膨らむ。
国債相場そのものはしっかりしている。しかし、債務の増加はじわりじわりと予算編成等にも影響を与える。国債利回りが低位というかゼロ%近くでは、利払い負担は見えにくい。しかし、国債利回りが多少なり跳ね上がると一気に負担が増加しかねないことも念頭に置く必要があろう。