生理になると、なぜお腹がゆるくなるのか?...女性ホルモンと消化器の関係を専門家に聞く
<なぜ生理直前や生理中に便秘や下痢になるのか? 女性の体の中で起きていることと対処方法について>
■月経中の便は「臭くなる」 多くの女性にとって生理の血は、さほど問題ではない。むしろ、腹痛などの生理痛、ニキビ、気分の落ち込みなどが問題としてよく知られている。しかし、「月経時の便」についてはあまり問題として認識されていない。 【動画】生理中にお腹がゆるくなる仕組み ロンドンの婦人科の栄養療法士(食事療法の専門家)のローラ・サザン氏によると、月経中は通常時と異なり、便の臭いが強かったり、下痢になりがちで、特にホルモンや消化器の不調を抱える患者に顕著な現象だという。 また、[子宮内膜炎や骨盤内炎症性疾患(PID)など]炎症性疾患を抱える患者の中には外出することが困難なほど下痢に悩まされる女性がいることを、同じく栄養療法士のデュトリー・ヴァン・ヘーフテン氏が述べる。 それは、主にプロスタグランジンと呼ばれる子宮の収縮を引き起こすホルモンが骨盤の部位に局所的に放出されるため、子宮や消化器に影響を与えて収縮や炎症を引き起こし、それが下痢につながるためだという。 また、便の変化は食事とも関連していることについてもサザン氏は言及。 「月経時には食欲が増し、普段と少し違うものや、普段よりも多くの食べ物を食べたくなります。砂糖が多い加工食品を体が欲することが多く、それが消化不良を引き起こすこともあるのです」 それに加えて特に重要なのが、生理痛にも関わっている女性ホルモンの一種であるプロゲステロンだ。 プロゲステロンの値は月経前の2週間(黄体期)で高くなり、月経が始まると低下する。プロゲステロンが消化器を弛緩させ、食べ物を体外に移動させるための蠕動(ぜんどう)運動が遅れることによって、一部の人は黄体期に便秘になってしまうのだという。 つまり、月経前の数週間は食べ物の消化が遅くなり、月経中に消化が速くなるために詰まっていた腸がすべて排出される、いわゆる「月経便」が起こるのだ。 また、月経中のプロゲステロンの低下が気分に悪影響を与えることで、食欲の増加やストレスを引き起し、それが腸の不調につながることもあるという。腸内細菌検査を行うと、ディスバイオシス(菌のバランスが崩れた状態)が見られることをデュトリー・ヴァン・ヘーフテン氏は指摘する。 しかし他方で、月経の症状をやわらげ、便の頻度や症状を軽減する方法も多数あるという。特に腸内細菌のバランスを整え、健康で規則正しい便通をサポートするために繊維の摂取が推奨される。 「繊維をたくさん摂るようにしてください。種子はとても良く、チアシードや亜麻仁パウダーは、便通とホルモンバランスを整えます。 また、煮りんごも腸に優しく、抗炎症作用があるため、補助になります。砂糖、アルコール、加工品などはすべて消化器の不快感を増す要因となるので、できるだけ避けてください」 また、月経の2週間前から食物繊維サプリメントを取り入れたり、酵母の一種であるサッカロマイセス・ボウラルディ(Saccharomyces boulardii)を補うことも効果的であるという。 他にも抗酸化物質が豊富な鮮やかな色の果物や野菜などをたくさん摂取し、良質な睡眠を十分にとり、自然の中で過ごしたり、軽い運動をしたり、オメガ3脂肪酸が豊富な魚を食べることもおススメだという。 この時期には、自分の体と十分に向き合うことが重要となる。デュトリー・ヴァン・ヘーフテン氏は次のように述べる。「自分の月経サイクル(卵胞期、黄体期、月経期)を知り、自分をケアすることが、症状の管理に非常に役立つのです」
ハッティ・ウィルモス