真夜中に聞こえた虎主砲の“唸り声” ドラ1衝撃のキャンプ…萎縮した同部屋の大エース
小林繁氏に「すごくかわいがられた」
同室だったエースからも「すごくかわいがられた」という。「キャッチボールもいつも小林さんでしたしね。アドバイスとかは特になかったんですけど、小林さんもみんなが見ているところでは、あまり見せないって感じでした。シーズンに入ってからは移動日も必ず球場に来てポールからポールを10往復ダッシュ。僕も一緒にやりました。小林さんは『これを1年間やったら全然違うぞ』って言っていましたね」。 キャンプ、オープン戦と緊張&刺激の毎日の中で、中田氏は奮闘した。「甲子園での巨人とのオープン戦に先発して7回を0点に抑えたのは覚えていますね」。公式戦でのプロ初登板は開幕4戦目の4月8日の広島戦(広島)。2番手で2回2失点(自責0)だった。2試合目の登板だった4月11日の巨人戦(甲子園)で初先発。0-1で敗戦投手も、9回1失点完投と力を発揮した。 「4回に中畑(清)さんにソロを打たれましたね。こっち(阪神)は北村(照文)さんが先頭打者で二塁打を打って、その後は(巨人先発の)定岡(正二)さんにパーフェクトだったんです。まぁ、勝てればもっとよかったですけど、全国放送だったので、親とかに(自身の好投を)見せることができて、それはそれでよかったなっていうのはありましたね」 だが、プロは甘くなかった。4月23日の中日戦(ナゴヤ球場)に先発し、中尾孝義捕手、谷沢健一内野手、レイ・コージ外野手に被弾するなど、わずか2/3で4失点KOされた。翌4月24日のヤクルト戦(甲子園)では3番手で登板し、角富士夫内野手とチャック・マニエル外野手に一発を浴びて2/3回を3失点でマウンドを降りた。そんな苦い経験を経ながら、中田氏はルーキーイヤーで必死の投球を続けた。 6試合目の登板だった5月4日の巨人戦(後楽園)で先発。5回2/3を4失点でプロ初勝利をつかんだ。試合は8-4。「大町(定夫)さん(3回1/3を無失点)にリリーフしてもらったんですよねぇ……」。テンピキャンプで小林や掛布の姿に驚き、刺激を受けて本格的に始まった中田氏のプロ野球人生は1年目から山あり谷あり。この後は右肩痛との闘いも始まることになる。
山口真司 / Shinji Yamaguchi