40度の熱出たスタッフが入居者をケア…新型コロナで壊滅寸前の福祉施設を救った「県境なき介護団」/福祉業界の救世主、岡山から全国展開 ~土屋後編
「救済型M&A」という手法で、廃業危機だった介護事業者の救済を進め、創業3年で全国展開した介護企業「土屋」。地域に根づいてきた介護事業者の事業を、全国展開するグループの一員にすることで、スケールメリットを生かした取り組みも進める。その好例が、新型コロナ禍でクラスターが発生した施設に派遣した「県境なき介護団」だった。介護業界の救世主「土屋」(岡山県井原市)の高浜敏之代表取締役社長に、経緯や福祉業界の将来について聞いた。 【動画】なぜ事業承継が大切なのか専門家に聞いた。
◆コロナ禍、クラスターの施設を救った「県境なき介護団」
――地域に根づいた活動をしてきた小規模の介護事業者が、全国展開するグループに入るメリットとは何でしょうか。 グループ傘下の認知症対応型グループホームで、新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生しました。 入居者18名、ほぼ同数のスタッフが全員、コロナに罹患してしまったのです。 しかし、入居者へのサービスを止めるわけにはいきません。 40度の高熱を発症したスタッフが、コロナ患者の入居者をケアするという、壊滅的な状況に陥ってしまいました。 他施設から応援を求めようとしても、どの施設もギリギリの人数で運営しているため難しい。 そこで私たちは、全国の事業経営者やマネジメント層に呼びかけました。 手を挙げてくれたグループ内の10人で急きょチームを編成し、国境なき医師団ならぬ「県境なき介護団」として現場に入ってもらい、やっと施設のスタッフが休めたのでした。 ここまでの支援ができるのは、同じ志を持つ全国組織のよいところだと思います。 施設の関係者の方々にも、グループに入ってよかったと実感してもらえたようです。 もう一つのメリットは、株式会社土屋がホールディングスとして、金融支援を行えることです。 経営状態の悪化で問題を抱えている業者は多数あります。 九州でデイサービスや訪問介護事業を営むある事業者もその1つでした。 物価高、水道光熱費の高騰、さらにコロナによる利用者数の激減で限界を迎え、グループインを決めてくださいました。 寸前まで事業主さんは「首を括るしかない」と追い詰められていたそうです。 資金的な支援を行った際、「命びろいした」と言われました。