「ゴールドフィンガー」公開60周年記念 ミス マネイペニーよ永遠に
さてそんな時期に公開されたショーン コネリー出演、パメラ セーラムがミス マネイペニーを演じる作品は、「ネバーセイネバーアゲイン」と、なんとも意味深なタイトルを持ち、MもブロフェルドもQも出演するが、当然本家とは全くの別役者が演じている。ボンドガールはこの映画がデビュー作となるキム ベイジンガーだが、ボンド役のショーン コネリーに体全身を(お尻さえ触りながら!)、なでなでとマッサージされる場面さえあり、このことからも、この映画がショーン コネリーに忖度して作られたものであることが透けて見える。そんな作品のミス マネイペニーとして抜擢されたのがパメラ セーラムだったが、なぜ彼女が選ばれたかと言えば、ショーン コネリーの強引なまでの推薦であっけなく決まったそうで、その逸話からも映画全体がショーン コネリーによるショーン コネリーのためのボンド映画であることが分かろう。
この「ネバーセイネバーアゲイン」の中で、彼女の演じるミス マネイペニーは本家の流れを組むもので、ボンドに思いをかげながら寄せるという女性を演じている。ところが彼女が登場するシーンは劇中3ヶ所。そのうち一ヶ所はMの後ろで台詞もなく映り込む遠景だし、残り2ヶ所も台詞は合計3つくらいで、トータル出演時間は52秒(実測)。もうちょっと出演してくれて、皮肉っぽい台詞や、ボンドの帽子投げ(決まりの演出)に驚くシーンなどあってもいいのにさ、と思う処遇はあった。 そんな映画の内容自体は、「サンダーボール作戦」の焼き直しだし、当然のことながら本家の「007」に使われている音楽は一切使用することができなかったため、ミッシェル ルグラン(!)がムード音楽のようなゆるいメロディを奏でるなどやや盛り上がらない部分もあるが、なんとなく平日の午後にまったりと観るようなボンド映画としては、なかなか面白いとは思う。ただし緊張感はゼロだし、ショーン コネリーも「歳をとって身体がなまったボンド」というストーリーにそって、なんとなく緩くキム ベイジンガーの身体を嬉しそうにスリスリ触りながら進む、そんなボンド映画である。