「ゴールドフィンガー」公開60周年記念 ミス マネイペニーよ永遠に
ジェンダーフリーだか、カラリズムだかなんだか知らないが、QがLGBTで自然食品を愛好していたり、ミス マネイペニーが銃の達人の黒人で、彼氏が夜な夜な家に訪れていたりしているといったような、余計な配慮や設定が映画の展開のノイズになってしまうことはどうかご勘弁いただきたい。
以前にも書いたが「007」は世界中の男子たちの、どうしようもない夢物語で良いのであって、そこに現実問題などを持ち込んだらあっという間に浮世の華やかさは消え去り、重くつまらないストーリー展開になるだけではないか。タキシードを着てドライマティーニを飲みながらボンドカーを乗り回し、秘密兵器を駆使して絶世の美女を抱きながら世界を救う。そんなあり得ないけれども、誰もが夢見る世界を楽しむ単純な娯楽映画であってほしい。映画館を出れば誰もが戻らなくてはいけない現実がそこにはあるのだから、映画館の銀幕の前にいる時間くらいは荒唐無稽な夢を見させてほしいと心から願う。
と、話は重い方向になってしまったが、前述の4人に加え、実はもう一人ミス マネイペニーは存在する。それは今年の2月21日に80歳で惜しくも亡くなったパメラ セーラムさんである。パメラ セーラムが1983年に出演したショーンコネリーが007を演じる「ネバーセイネバーアゲイン」は、本家本物のボンド作品ではなく、制作も配給もまったくの別会社である。なぜそうなってしまったかの背景を書くとものすごく長くなるので、思い切りはしょって言えば登録商標でもめた二つの会社が、別々の商品を作ったようなもの、であり、実際に1983年、本家のイオンプロダクションはロジャー ムーア主演で「オクトパシー」を封切している。当時はボンド対決と話題になったものだが、結局「オクトパシー」の方が、圧倒的に興行収入が上で、本家の勝ち、となった。 そんな本家の作った「オクトパシー」のボンドガールは、「黄金銃を持つ男」でスカラマンガに殺されてしまったモード アダムスで、同じ映画に二度ボンドガールとして出演しているのは彼女だけである。映画そのものの内容はものすごく緩いし、インドロケが中心となっているためか、なんだかアジアのコメディ映画を観ているような雰囲気の一本ではあるが、僕はそういうギャグ娯楽007映画としての「オクトパシー」がかなり好きである。