社説:同性婚訴訟の判決 認める法改正厳しく迫った
人権侵害の重大さへの警告を強め、解消への法改正を厳しく迫ったといえよう。 同性婚を認めない民法などの規定を問う訴訟の控訴審判決で、福岡高裁が幸福追求権を保障した憲法13条に違反すると初めての判断を示した。 13条はすべての国民が個人として尊重され、幸福を求めることを保障し、公共の福祉に反しない限り立法や国政で最大限の尊重を受けることが明記されている。 判決は、同性カップルが婚姻制度の対象外で、異性婚なら認められる相続権など重要な法的権利がなく、法的に保護されていないことが幸福追求権の侵害と認定した。 その上で、婚姻は完全に当事者の自由意志で、制約し得る「公共の福祉」にも反せず、「(同性婚を)法制度として認めない理由はもはや存在しない」と言い切った。 同性婚を巡る訴訟は全国5地裁で6件起こされた。二審では今年3月の札幌高裁と10月の東京高裁に続く違憲判決で、法の下の平等を定めた14条1項と、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項の違反認定も引き継いだ。 同性婚を認める司法の流れはほぼ固まり、より強く示されたといえる。 重要なのは、判決が現行の婚姻制度を同性婚に適用すべきとしたことだ。 原告は「特別な権利ではなく、異性愛者と同じように結婚がしたいだけ」と強く求めていた。一審の福岡地裁判決が「同性婚を婚姻と似た別の制度で認める余地がある」と言及したことに強く反発していた。 婚姻制度と別の制度をつくれば、法の下の平等を損なうだけでなく、新たな差別を生みかねない。こうした指摘は夫婦別姓を巡る訴訟でもなされている。重要な論点を踏まえた高裁判決といえよう。 共同通信社の今春の世論調査では「同性婚を認めるほうがよい」が7割を超えるなど、多様な家族観や性的少数者の権利についての社会の理解は深まっている。 石破茂首相は判決を受けた国会答弁で、同性婚の実現により日本の幸福度は増すとの認識を示したが、政府として具体的な動きは見えない。 旧来の家族観に固執する自民党保守層への配慮が要因のようだ。だが、「同性婚は異性婚の権利を妨げる事態は想定できない」「血縁集団の維持・存続目的や宗教的立場からの(婚姻への)介入は許されない」と明快に断じた今回の判決を、正面から受け止めるべきではないか。 判決は損害賠償を認めなかったが、同性婚を認めない現行制度を廃止しなければ国に賠償責任が生じ得るとも指摘し、法制化を強く促した。 政府と立法府の不作為はもはや許されない。