今まで安すぎた?SL列車、引退だけでなく「値上げ」も増えた事情 JR各社が指定席料金アップ
JR西日本中国統括本部によると、料金の見直しはSL列車の魅力や価値が高まっていることを背景に踏み切ったという。SL列車が減っていく中で、存在感が高まっていることが理由となっているともいえる。料金の決定については、ほかのJRの金額を参考にしたとのことだ。 SL列車のどこにコストがかかっているかについては回答を得られなかったが、SLは機関士のほかに機関助士も必要であり、運転には相当の熟練が必要だ。老朽化にともなって整備費用もかかるうえ、石炭の価格も上がっている。
■JRのSL列車は軒並み値上げ 実はすでに、ほかのJR各社のSL列車は料金の値上げを実施している。そう考えると、これまでのSLやまぐち号は格安で、良心的ともいえる価格設定だった。 JR北海道が冬期に運行する「SL冬の湿原号」は指定席(子ども半額、以下JRは同様)1680円で、2022年1月の運行の際に840円から値上げして倍額となった。JR九州のSL人吉も2021年5月に料金を改定し、840円から1680円に上がった。
客車が特徴的なJR東日本の「SLばんえつ物語」は、指定席840円、グリーン料金(大人・子ども同額)は150kmまで2000円、151km以上は3000円となっている。指定席料金はSL冬の湿原号やSL人吉の値上げ前の料金と同じであるため、比較すると安いといえるが、2023年9月末までの指定席料金は530円(時期により330円)だった。 グリーン料金は一般のグリーン料金と同じで、50kmまで780円、100kmまで1000円、150kmまで1700円、151km以上1990円だったが、専用のグリーン料金設定によって上記の額となった。
もっとも、JR東日本はこの際に「当社を取り巻く経営環境の変化」を理由として、各地の「のってたのしい列車」(観光列車)の指定席料金をすべて840円に改定しており、SLばんえつ物語の指定席料金値上げもその一環である。 いずれにせよ、このところSL列車の値上げは広がっていたのだ。稼働するSLの減少やメンテナンスコストの増大、そしてコロナ禍以降の鉄道各社の経営環境の変化の中、値上げはやむをえないという状況になってきたといえる。各社はSL列車の指定席料金などを改定するほか、JR九州のようにSLの運行を終えるケースもある。