[KWレポート] 「忘れられる権利」扱う“デジタル葬儀屋”なる仕事 (1)
【12月21日 KOREA WAVE】オンラインの世界で「忘れられる権利」は、「デジタル葬儀屋」という職業を生み出した。デジタル葬儀屋は、突然亡くなった人々が残したオンライン上の痕跡を消すことから始まったが、今は「現在」を生きる人々のために働いている。ディープフェイクの違法合成物の削除から、犯罪などの恥ずかしい過去を消したい人が主な顧客となっている。 ◇痕跡を消す ディープフェイク(人工知能ベースの操作技術)の違法合成物(性的搾取物)が社会問題として浮上し、オンラインに拡散された文章や写真を削除する「デジタル葬儀屋」の需要が増えた。デジタル葬儀屋はマスコミ記事やユーチューブ、オンラインコミュニティなどを探し回って依頼人に関する痕跡を消す人たちだ。 ディープフェイク関連のデジタル葬儀屋を求める人々は、被害者にとどまらない。自分の恥ずかしい過去の行跡を消してほしいという加害者たちも彼らを求める。 韓国のデジタル葬儀屋関係者は「最近、マスコミ報道が増え、問い合わせや依頼が以前と比べ20~30%程度多い。当初は被害者の問い合わせが多かったが、時間が経つにつれ、加害者がより多く訪れる」と話した。 別の業者関係者も「以前は1週間に1~2件程度の作業だったが、最近は30件も殺到した日もある。過去にも加害者が依頼する場合がまれにあったが、最近はその割合が圧倒的に多い」と説明した。 もう一つの特徴は、問い合わせの加害者のほとんどが10代やその親という点だ。業者関係者は「親たちは、自分の子どもが犯罪者として永遠に刻まれるのではないか心配して連絡してくる」という。 ディープフェイク関連で検挙された人たちのうち、10代が圧倒的に多い。警察庁は今年1月1~25日、テレグラムディープフェイク虚偽映像物事件関連の容疑者387人を特定して検挙した。このうち10代は324人(83.72%)だった。5人中4人だ。 また、10代の容疑者のうち66人は10歳以上14歳未満の触法少年だった。次いで▽20代50人▽30代9人▽40代2人▽50代以上2人の順だった。 ◇証拠隠滅の疑い? 仕事が増えたからといって喜ばしいことではない。むやみに依頼を受けると、証拠隠滅の疑いを受ける可能性があるからだ。そのため、業者は依頼者の現在の状況、警察の捜査状況、被害者との合意の有無などを確認した後、作業をするかどうかを決めるという。一部は捜査状況を偽ってまで削除を依頼してくることもある。 別のデジタル葬儀屋は「最近、削除を進めてから初めて依頼者が加害者であることを知った。裁判所に『とても後悔している』と嘆願書を出し、参考人として法廷に出席したこともある」と打ち明けた。 韓国警察庁は、テレグラムを通じたディープフェイク性犯罪が相次いで発生したため、9月28日から来年3月31日まで7カ月間、特別取締り期間を設け、集中取締りを実施している。 警察は、テレグラム運営陣などを対象に児童・青少年の性保護に関する法律や性暴力犯罪の処罰などに関する特例法による幇助容疑で立件前の調査(内査)を進めている。具体的な容疑と犯罪事実が特定されれば、立件に転換するなど捜査を拡大する計画だ。 9月25日には、ディープフェイク性搾取物と知りながらこれを所持したり、視聴する場合、罰することができるようにする法案が与野党合意で国会法制司法委員会の門を通過した。この法案は、ディープフェイク性搾取物映像物の所持・購入・保存・視聴する場合、3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金に処せられるように規定している。また、流布目的が立証されなくても作成者を処罰できるようにした。 (つづく) (c)KOREA WAVE/AFPBB News
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