グリーンランドの防衛費拡大へ トランプ氏の「購入」には反発
デンマーク政府は24日、北極海と北大西洋の間に位置する自治領グリーンランドの防衛費を拡大すると発表した。22日にはトランプ次期米大統領がソーシャルメディアへの投稿で、グリーンランドの「購入」に意欲を示したが、エーエデ自治政府首相は「我々は売り物ではない」と反発していた。 英BBC放送などによると、デンマークのポールセン国防相は「これまで北極圏に十分な投資をしてこなかった」と認め、グリーンランドの防衛予算を少なくとも15億ドル(約2350億円)にすると述べた。長距離ドローン(無人機)購入などに充てるという。 ただ、今回の発表は事前に準備されており、トランプ氏の投稿への反応ではないという。ポールセン氏は「皮肉」なタイミングだと語った。 グリーンランドが近年注目される背景には、その地政学的な重要性がある。米ニュースサイト「ポリティコ」によると、仮にロシアが米側に向けて核を搭載した長距離弾道ミサイルを発射した場合、グリーンランド上空を通る可能性が高いという。グリーンランド北部には米軍の宇宙軍基地(旧空軍基地)もあるが、視界の悪い北極圏上空では十分に対抗できない懸念もあるとされる。 近年は北極圏でロシアが軍備を増強させているほか、中国も資源開発を進めている。トランプ氏はこうした状況を念頭に「米国はグリーンランドを所有し、管理することが絶対に必要だ」と訴えた。 米メディアによると、1946年には当時のトルーマン米大統領もグリーンランド購入をデンマークに打診していたという。 グリーンランドは面積が約217万平方キロと日本の約6倍で、8割は氷で覆われている。人口は約5万6000人。主産業はエビや魚の輸出だが、近年は地球温暖化の影響で氷が解け始め、地下資源の調査も容易になっている。豊富なウラン、金、レアアース(希土類)などに加え、石油や天然ガスにも恵まれる。【ロンドン篠田航一】