「上沢直之ソフトバンク入り」は“恩知らず”か? 野村克也監督の“右腕”に聞いた「ストーブリーグの論点」「メジャー挑戦はもう止められない」
「予算はこのくらい必要に…」
「本当に資金を集められるのか、まず決済するチームのトップに承諾を取らなければいけない。当時は衣笠剛社長(現在は会長兼オーナー代行)に直接チームの現状を説明して『もし宣言したら行ってもいいですか? 予算はこのくらい必要になります』ということをお願いして了解をいただいた。その準備が整ってはじめて動き出すことができました」 最終的には成瀬を3年総額6億円、大引を3年総額3億円(いずれも推定)で獲得。2人の旧球団への補償が金銭となったため、計1億2840万円を支出し、合計10億円以上とヤクルトとしては強気の大型補強を敢行した。この決断が功を奏してヤクルトは翌15年、真中満監督のもと14年ぶりのリーグ制覇を果たしている。
上沢ソフトバンク入りの衝撃
若い選手たちが揃ってメジャーを目指す中で、野球界には新たな問題が出てきた。波紋を呼んだのが、レッドソックス傘下の3AからFAになっていた上沢直之投手のソフトバンク入団だ。旧所属先の日本ハムは、ポスティングを利用してマイナー契約からのメジャー挑戦という球団にとって“実入り”の少ない決断を容認した経緯があるだけに、古巣復帰せず新天地を選んだことに批判が殺到したのだ。 「そもそも現状では日本とアメリカの年俸の格差がありすぎて、球団としても選手のメジャー挑戦を止められなくなっているという現状が一つ。それからポスティングを利用した選手が帰ってくるケースで出てきた問題点が一つ。ある意味、ポスティングをOKしている時点で戻ってこなくてもしょうがないという判断ですから、元の球団に戻らなくても現状のルールでは何ら問題がない。ただ心情的な部分をどう考えるのかということですよね」
「この状況を動かすのは…」
同様のケースではすでに、日本ハムからメジャリーグに移籍し2年で日本球界に復帰してソフトバンク入りした有原航平投手の例がある。ある意味で現行のFA制度の“抜け穴”となる可能性もあり、ポスティングを直訴する選手は増え続ける現状を考えれば、何らかの対策が必要となってくるだろう。 「選手側も球団側もそれぞれの立場上、何か言いたくても言い出せないというのが現状です。ただ、ソフトバンクが悪者になったり、逆に復帰させなかったケースで元の球団が批判されたりということになれば、そのままにしておくわけにはいかない。この状況を動かすのはファンの声でしょうね。それをNPBがどう受け止めるかで今後、何らかのルールを作るという動きは出てくると思います」 松井氏は最後に、選手獲得を巡る今後の変化についても触れた。一つは今季限りでNPBが主催終了を検討している「12球団合同トライアウト」だ。今年は11月14日に行われた、参加した45人のうち、NPB球団へ入団が決まったのは鈴木康平投手(巨人戦力外→ヤクルト育成)ら3人でいずれも育成契約だった。
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