広島・矢野、飛躍の24年からさらなる進化を期す 新春インタビューで語った3つの誓いとは
広島・矢野雅哉内野手(26)が本紙の新春インタビューに応じ、新たな一年に向けて誓いを立てた。昨季は遊撃のレギュラーに定着するなど飛躍を遂げたが、さらなる進化を期す。巳(み)年の今季は、(1)遊撃でのフルイニング出場、(2)盗塁王、(3)チームの顔を目指し、走攻守全てにおいて、ヘビの脱皮のごとく?もうひと皮むける覚悟を示した。(取材・構成 長谷川 凡記) ――明けましておめでとうございます。 「明けましておめでとうございます。スポニチ読者の皆さま、今年もよろしくお願いします」 ――年賀状に“覚悟”と記したが、どういう思いがあるのか。 「まだレギュラーではないので。昨年一年やったからといって、今年も出られるとかではない。もう一回、競争で一からスタートという思いで、誰にも負けたくない、と。しっかり覚悟を持って挑まないといけない」 ――今季はどんな一年にしていきたい。 「1軍で(レギュラーとして)試合に出て、2年目が大事だと思っている。チームメートから信用されるためにも、昨年経験したことをつなげられるようにやっていきたい」 ――昨季はゴールデングラブ賞を初受賞。今季につながる。 「自分が思っているよりも周りが評価してくれているんだと、初めて知った。それが自分の自信につながる。なおさら、もっと守ってやろうという思いが自分の中で湧いたので、もっと投手やチームを助けられる守りをやっていきたい」 ――昨季の12失策を減らす覚悟で。 「はい。昨季はほとんどが簡単な打球処理でのミスだった。後から反省した時に、ほとんど防げたミスだなというのがあった。それを1個でも2個でも減らせれば、守備で力になれると思いますし、投手を助けられると思うので、減らしていきたい」 ――菊池選手は20年に守備率10割。究極はそこを目指す。 「守備率10割というのは、守っていて一番いいことだと思うので、そこを目指していきたい。簡単にはできないので、それを分かった上で一つでもミスをなくしていきたい」 ――一方、昨季は打撃において、どんな収穫があったのか。 「開幕直後は直球に狙いを絞ると決めたら“全部いこう”と思っていたが、終盤は、コースも設定して“内角の直球を狙うなら、外角は無視しよう”とか、1つだけではなくて2つのことを設定して入っていけた。それで、もったいない打席も減ったので、手応えはある」 ――その取り組みを踏まえて。 「昨季は、10打席ちょっとで四球が1個取れるか取れないか(495打席で38個)だった。それが5、6打席に1個取れたら、打率も変わってくるし、出塁率も上がってくると思う。出塁率も上がれば、盗塁の機会も増えると思うので。また、与えられたバントやエンドランなど、細かい仕事をしっかりこなせる選手でありたい」 ――今季も正遊撃手の座を守る。 「誰にも遊撃を守らせたくない思いはある。途中で代えられないように、大事な場面も任されるような選手になりたい。若い選手もいっぱいいるので、その選手たちに負けないように振り込んで、守備をたくさんやった中で、春季キャンプに入っていきたい」 ――さらなる活躍でチームの顔になる。 「最終的にカープの中心になって、チームを引っ張っていく選手にならないといけない。今はそうではないですけど、少しでも早くそうなれるように頑張りたい」 ――昨季は優勝も見えてきた中で9月に失速。終盤の難しさを感じた。 「ワンプレーで全て流れが変わって、勝敗も変わった。ミスをしなくてもワンプレーの怖さを感じた。簡単にプレーできないなということが、はっきりと分かった」 ――今季に向けての手応えは。 「昨季一年経験させてもらった分、走攻守全てにおいて、今年につながることは多かった。それを生かすか、殺すかは自分次第。そこを考えて、練習して、キャンプまでに仕上げていきたい」 ――盗塁の意識も強く持っていく。 「一人でも走れる人が出てきたら攻撃の幅も広がると思う。それは自分の役目だと思う。理由を持った中で、走っていって、盗塁王を獲れるように頑張りたい」 ――成績向上へ、覚悟や割り切りも必要。 「相手のことを研究しながら自分の中で整理してグラウンドに立たないといけない。しっかり理由を持った中で、守ったり、打ったり、走ったりできるか。そこは、しっかり考えてやらないといけない」 ――菊池選手と二遊間を組み、どんなサポートがあったか。 「一年間、良い時も悪い時も声をかけてもらった。自分のこともあると思いますが、ミスした時に声をかけてくださることで、自分を楽にしてくれたので、本当に助けられた」 ――助言で大事にしていることは? 「攻撃と守備では切り替えろ、と常に言われている。どれだけ打てなくても守備に持ち込むなと、ずっと言われているので、守備と打撃で区切りをつけてやっている」 ――背番号は「61」から「4」に変更。 「自覚を持ってやりたい。(4番の前任者)小窪さん(1軍打撃コーチ)は選手会長も務めて、チームの中心選手だったので、僕もそういうふうになりたい」 ――春季キャンプまでに、どこにフォーカスしてレベルアップを図るのか。 「今は量をこなして、その中で見つかることもあると思うので、量を多く練習したい」 ◇矢野 雅哉(やの・まさや)1998年(平10)12月16日生まれ、大阪府出身の26歳。育英(兵庫)では甲子園出場なし。亜大では3年秋に首位打者、ベストナインを獲得。20年ドラフト6位で広島に入団した。4年目の昨季は自己最多137試合に出場し、キャリアハイとなる打率.260をマーク。セ・リーグの遊撃部門でゴールデングラブ賞を初受賞した。1メートル71、71キロ。右投左打。 ≪取材後記≫ 近い将来、チームの顔になって、引っ張っていきたいという気持ちが表れていた。亜大時代に主将を務めるなど学生時代からリーダーシップを発揮してきた矢野。「チームを引っ張っていけるようになれば、チーム全体を上げていける自信もある」と言い切った。 昨季もピンチになれば投手の元に駆け寄るシーンが多く見られたが、ただ声をかけるだけではなく、明確な意図があって鼓舞していたという。「自分はしっかり勉強して、相手のことも理解した上で守っている。だから、もうちょっとこうだな、とか言える。理由があった中で指示を出したり、声をかけたりしている」。守備範囲も広いが、視野の広さも人一倍。その強みを生かし、チーム力アップに貢献してくれることだろう。 (長谷川 凡記)