旧駅舎にさよなら、71年間親しまれ…「三角屋根が見られなくなるのはさみしい」
高架駅の完成で9月28日をもって役目を終えたJR松山駅の旧駅舎で4日、「二代目松山駅さよならイベント」が開かれた。71年間、県都・松山市の玄関口として親しまれた駅舎は今後、取り壊される予定で、来場した約2500人の家族連れらが別れを惜しんだ。 【写真】解体される旧松山駅舎(松山市)
旧駅舎は、国鉄時代の1953年に2代目として誕生。2000年には、三角屋根の外観に改装された。
イベントはJR四国が企画し、午前9時半の入場開始を前に約400人が駅舎前に並んだ。ホームでは、約130種、約650点の鉄道部品を販売。構内に掲示されていた運賃表や駅長室の案内板、運転士に停止位置を示す標識のほか、特急列車「しおかぜ」「いしづち」の座面や、観光列車「伊予灘ものがたり」のヘッドマークなど、貴重な品々がそろい、鉄道ファンらが興奮した様子で買い求めた。
駅名板を購入した岡山市の建築業の男性(63)は「松山駅から伊予灘ものがたりに乗車し、愛媛の海岸線を眺めたのはよい思い出。シンボルの三角屋根が見られなくなるのはさみしいけれど、自宅で保管すれば、また思い出せる」と話した。
旧駅舎の「裏側」を特別に見学できる探検ツアーも開催された。駅員が機器を操作して手動で信号を切り替えていた「信号扱所」や駅長室などを、同駅長経験のある同社社員のガイドで巡った。
松山名物「 醤油(しょうゆ)めし」など各地の人気駅弁を販売するコーナーは、約200食を約45分で完売する好評ぶり。線路内に立ち入り、レールの上を歩いたり、砕石や砂利を袋に詰めて持ち帰ったりできる催しもあった。
家族4人で訪れた松山市の会社員男性(39)は「身近な旧駅舎がなくなるのはさみしいけれど、歴史ある建物のよさを改めて感じることができた。これからは新駅舎の魅力も知っていけたら」と話した。 ◇
地上駅だった旧駅舎は、西側に造られた高架駅が9月29日に開業したことで閉鎖された。現在、東側から新駅に歩いて行くには旧駅の改札跡やホーム、線路をまたぐ仮設の通路を通る必要がある。JR四国は、旧駅舎や線路の撤去後、表玄関にもなる跡地の利用の方針は公表していない。
読売新聞