『エイリアン:ロムルス』意外な健闘? 評価と興収が連動してこなかったシリーズの歩み
9月第2週の動員ランキングは、『ラストマイル』が週末3日間で動員31万7000人、興収4億7500万円をあげて3週連続1位。公開から17日間の動員は213万4000人、興収は30億2700万円。外国映画を含め、実写作品では『キングダム 大将軍の帰還』、『変な家』に続いて2024年に公開された作品では3作目の興収30億円超え。言い換えるなら、今年に入ってから実写の外国映画は1作品も興収30億円を超えていない。 【写真】『エイリアン:ロムルス』恐怖の場面カット(複数あり) そんな「外国映画無風時代」にあって、思いのほか健闘しているのが2位に初登場したフェデ・アルバレス監督の『エイリアン:ロムルス』だ。オープニング3日間の動員は19万3000人、興収は3億1900万円。1979年に始まる『エイリアン』シリーズは、これまで正史と呼べる作品が4作品。『プレデター』シリーズとのシェアード・ユニバース(?)とでも呼ぶべき異色の『エイリアンVSプレデター』シリーズが2作品。そして、1作目『エイリアン』の監督リドリー・スコット自らが手がけた『プロメテウス』(2012年)と『エイリアン:コヴェナント』(2017年)のプリクエルシリーズが2作品。 実はリドリー・スコットは『エイリアン』シリーズの権利を有しておらず、作品によってはノータッチの作品もあったのだが(逆に1作目『エイリアン』で製作を手がけたウォルター・ヒルは監督も脚本も手がけたことがないのに全作品に必ずクレジットされている)、今作『エイリアン:ロムルス』にはプロデューサーとして参加。監督はしないのにシリーズに関与するのはこれが初めてで、実際にフェデ・アルバレスに多くのアドバイスを与えている。 シリーズの興収を振り返って意外なのは、傑作としての映画史的評価が定まっている『エイリアン』やジェームズ・キャメロン監督のヒットメイカーとしての評価を決定的にした『エイリアン2』よりも、デヴィッド・フィンチャーの長編監督デビュー作で、現在は「自分のフィルモグラフィーから消し去りたい」とまで言っている『エイリアン3』がヒットしていること(配給収入19億5000万円、興収換算で約33億円)。また、リドリー・スコット肝入りの力作『プロメテウス』と、B級映画寄りの企画モノ的作品の『エイリアンVSプレデター』の興収がほとんど変わらないこと(前者は18億1000万円、後者は16億8000万円)。 つまり、『エイリアン』シリーズにおいては作品評価と興収は歴史的に連動してこなかったとも言えるのだが、もう一つ言えるのは『エイリアンVSプレデター』にせよ、『プロメテウス』にせよ、久々に新しいシリーズを立ち上げると、最初の1作目はそれなりにヒットしてきたということだ。製作費8000万ドルの『エイリアン:ロムルス』は、既に北米興収で約1億ドル、世界興収で約3億1500万ドルのヒットを記録しているが、続編についてまだ決定のアナウンスがないのは、そんなシリーズの特性も影響しているのかもしれない。
宇野維正