国内「パレスチナ反戦デモ」の裏でうごめく過激派 公安当局、新たな組織拡大活動に警戒
パレスチナ自治区ガザで続くイスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘をめぐり、警察当局などが日本国内で散発するパレスチナ反戦デモに警戒を強めている。反原発デモなどを主導してきた過激派が関与しているとみているためだ。外国人を巻き込みつつ、組織拡大に向けた勧誘の場に利用している可能性があり、党派(セクト)を超えた緩やかな〝連帯〟に当局が神経をとがらせている。 【データで見る】パレスチナ自治区「ガザ」はどんなところ? 5月26日、福岡市中央区の天神交差点近くで「ラファ反戦アクション」が開かれた。呼びかけ人は両親がガザ出身で福岡市内に住む中学3年生、エルジャマル・モハメド君。パレスチナ自治区に縁のある人やパキスタン人、エジプト人らのほか、差別や人権問題などに関心のある日本人ら約300人が参加した。 「大量虐殺をやめろ」「パレスチナに自由を」といったプラカードに交じって「改憲・戦争阻止!」といった集会の趣旨とは少しずれた主張が書かれた幟(のぼり)もなびいていた。一行が「フリー、フリー、フリー、ガザ!」「虐殺やめろ!」などとシュプレヒコールをあげながら、福岡市の繁華街・天神地区を40分ほどかけて練り歩いた。 その数日前にデモ参加を呼び掛ける記者会見を行ったモハメド君の狙い通り、抗議活動は盛況に終わったが、この日、彼の姿はなかった。会見に同席した福岡パレスチナの会の沖園理恵氏は「デモ当日は中学校の運動会だったようだ。彼のスケジュールを最優先したが、運動会のことが頭から飛んでしまっていたみたい」と説明した。 そもそも日本の過激派はパレスチナ問題を長く闘争テーマとし、テロやゲリラ事件を国内外で引き起こしてきた。政府関係者は「反イスラエルという受け入れやすいテーマを掲げ、デモや勉強会を開いて自らのセクトに若者を勧誘している」と指摘。警備当局者も「社会に対して素朴な反感を持つ学生や青年たちが左派政党や過激派の標的になっている」と話す。 平成23年の東電福島第1原発事故後、全国的に反原発デモが広がった際にも左派政党や過激派の関与が疑われ、関心を持った参加者らが取り込まれる事例が相次いだ。先の政府関係者は「今回も反原発デモのときと同じ手法で過激派や学生組織などがうごめき、新たなオルグ(勧誘)の機会に利用している」と警戒を強める。