優勝4回の〝ミスター熊本城マラソン〟 29歳古川さん(熊本・八代市出身)が箱根駅伝へ 関東学生連合チーム主将に 出走なら東大院初の快挙
熊本城マラソンを4度制した東京大大学院博士課程4年の古川大晃[ひろあき]さん(29)=東京、熊本県八代市出身=が、来年の正月に開かれる憧れの箱根駅伝に挑む。高校時代からの願いを実現するため、過酷な暮らしも経験して博士課程の修了を遅らせた。「子どもたちに箱根を目指したいと思ってもらえるような走りをする」と気持ちを高めている。 熊本のスポーツ
10月19日の予選会を経て関東学生連合チーム(オープン参加)に選ばれた。選出は3度目で、過去2回は走れなかった。関東学生陸上競技連盟などによると、出走すれば東大院生として初の快挙だ。 古川さんは日中、大学院の研究室で、「人の後ろに付いて走る追尾走」をテーマにスポーツ科学を学んでいる。朝や夜に、大学のグラウンドや代々木公園(渋谷区)で約20キロを走る。今年は睡眠時間を増やしたり、練習内容を見直したりするなど工夫。一層の体調管理に励んだ。 予選会のハーフマラソン(21・0975キロ)では、最初の1キロを先頭で通過するなど序盤から果敢に攻めた。「10キロ手前で苦しくなった」が、粘って個人60位。晴れて3度目の連合チーム入りを果たし、主将を任されることになった。 2014年に八代高を卒業し、熊本大-九州大院に進んだ。九州の大学陸上界で好成績を残したが、関東の大学で争う箱根駅伝には縁がなかった。
転機は20年夏。九州大院2年時に進路を決める際、自身が研究する分野を扱う研究室が東大院にあることを知った。「東大院に行けば、箱根駅伝で走れるかもしれない」。全国の注目度も高い大会を身近に感じ、21年春に東大院に進んだ。 ただ東大院が単独チームで予選を突破するのは厳しく、古川さんは連合チームでの出走を狙った。22、23年大会と2年連続で選ばれたが、いずれも補員。「今度こそ」と意気込んだ24年の第100回大会は全国から参加可能とした影響もあり、限定的に主催者が連合チームを編成しないと決めた。 「連合チームはさまざまな境遇の学生にチャンスを与え、モチベーションになる。大会の発展や関心を集めるために必要」。古川さんは連盟の臨時総会で諮るため、他大学の同志と署名集めに奔走した。臨時総会の開催にはこぎ着けたが、決定は覆らなかった。 古川さんは、日本学術振興会の特別研究員制度を利用し、月20万円ほどの収入を得た年もあったが、レース出場の旅費や書籍購入費などもかさむため、節約生活を送った。昨年度までは、月1万円、広さ4畳の学生寮の一室で過ごした。貪欲な気持ちを持ち続け、陸上と研究に没頭した。
来春から京都工芸繊維大で博士研究員として働く。なぜ「歩きスマホ」で歩行者同士がぶつかりそうになるのかを実験で調べて21年に「イグ・ノーベル賞」を受賞した村上久助教に学ぶ。「ランナーの集団形成のメカニズムや効果を研究する。箱根は学生生活の集大成。悔いを残さず、次のステージへ進みたい」。研究者としての道を歩む前の大一番が近づいてきた。(岡本遼)