公的医療保険料に「月500円」弱を上乗せ。子ども・子育て支援金制度だけに注目してしまうと、家計全体のお金の流れが見えにくくなる
※この記事は2024年2月19日時点の情報を基に執筆しています。 2024年2月16日、政府は「子ども・子育て支援法」などの改正について閣議決定しました。この改正では、児童手当や育児休業給付金の拡充などが盛り込まれ、同時に財源を確保する手段として「子ども・子育て支援金制度」を創設し、国民1人当たり平均で月500円弱を公的医療保険料に上乗せして徴収することが示されています。 医療保険料への上乗せに反対する声がかなり強くなっているようですが、確かに保険料が増えると可処分所得が減るため、家計にとってはマイナスです。しかしながら政府は、賃上げを積極的に行うことにより国民の所得が増えるので、実質的な負担は生じないとしています。 そこで今回は、2026年度からの段階的な導入が打ち出されている子ども・子育て支援金制度を踏まえ、今後の家計をどのようにイメージしていけばいいのか考えていきます。
医療保険料の上乗せは支出増。賃上げは収入増。家計全体では?
図表1は、左側を「家計簿」、右側を「資産・負債表」として、家計全体のお金の流れを示したものです。
<図表1> ※筆者作成 家計簿は収入と支出、純利益でできており、収入から支出を差し引いたものが純利益、つまり余るお金と考えてください。 また、資産・負債表は資産と負債、純資産からできており、資産から負債を差し引いたものが純資産です。純資産は家計の体力のようなもので、純資産が多いか少ないかで家計の健全性を測ることができます。 冒頭の子ども・子育て支援金制度(以下、支援金制度)が創設された場合、毎月支払う医療保険料は増えることになります。医療保険料は社会保険料の一部なので、支出に占める社会保険料の割合が増えます。 つまり、収入が同じ場合は必然的に純利益が減ります。これは毎月、毎年、余るお金が減るという意味です。支出が増えて、お金が余りにくくなるわけですから、支援金制度に反対するのは当然といえるでしょう。 しかし、政府は賃金上昇率を引き上げると言っています。賃上げにより収入が増えるので、仮に支援金制度により医療保険料が増えても“実質的”な負担増にはならないとしています。 これを家計簿で見ると確かにそうです。収入が増えるので、その伸び率よりも医療保険料の伸び率が低ければ純利益が増えます。つまり、支出だけに目を向ければ負担増と感じますが、収入も含めて考えると負担増にはならないということになります。 それでは、どちらの言い分が正しいのかといえば、どちらも正しいといえるでしょう。なぜなら、計算の範囲が違うだけで、それぞれの答えが出てくるからです。