J1同士だから「移籍されるのは困る」 25歳の獲得渋られ…退団覚悟も「うちを選んでくれた」
FC町田ゼルビアが始動、積極補強で充実のラインナップ
1月8日に新体制を発表したFC町田ゼルビアはこのオフ、積極補強を敢行し、充実のラインナップが揃った。他クラブから戦力獲得に奔走する傍ら、昨季の躍進に貢献した既存戦力の引き留めにも力を注いできた。なかでも、焦点となったのがレンタル組の動向。獲得に漕ぎ着けるまでは、決して平坦な道程ではなかった。 【画像】「ヘンリーその番号!?」FC町田ゼルビアの34選手「新背番号&メンバーリスト」 黒田剛監督が就任3季目を迎える今季、14人が新加入(新人選手、レンタル復帰含む)。日本代表歴のあるFW西村拓真を横浜F・マリノスから獲得したほか、ヴィッセル神戸からDF菊池流帆、FC東京からDF中村帆高を獲得するなど、積極補強を進めた一方、レンタル加入中だったGK谷晃生、MF白崎凌兵、FWオ・セフンの買取りにも成功している。 昨季チーム最少失点に貢献した守護神GK谷の獲得について、原靖フットボールダイレクター(FD)は「ガンバ(大阪)さんとは去年の時点で話ができいて、完全移籍にっていう話はシーズン中からできていた」と明かした一方、韓国人ストライカーのオ・セフンに関しては「難しかったですね」と苦笑い。25歳の実力を、レンタル元である清水エスパルス側も当然ながら高く評価していた。 「清水さんのほうも今年昇格して、同じJ1のチームに移籍されるのはちょっと困ると。セフン選手がJ1でしっかりプレーできたという実績が彼らにもあって、かつ、韓国代表にも入った。国内に売るより海外のチームに売ったほうがもっと価値が上がることから、非常に困難を極めた」(原FD) オ・セフンはJリーグ3年目の昨季、チーム2位の8得点を挙げ、一躍ブレイク。去就に関して言えば、欧州移籍という夢もあった。そうした背景から「買い取るのは難しいかなっていう印象はありました」と原FD。それでも清水との交渉では、選手のキャリアを考え、慣れ親しんだプレー環境を最優先させる形で話は落ち着き、「そういった中でうちを選んでくれた」(原FD)と感謝の気持ちを隠さない。 今オフの補強を総評し、原FDは「80~85点くらいかなとは思ってます」と明言。日本代表クラスの実力者を新たに加えたのはもちろんだが、昨季の躍進に貢献したレンタル組を残留させた強化手腕も称えられるべきだろう。もちろん、強化が上手くいったからといって結果が出るわけではないが、選手層がより厚みを増し「J1上位定着」というクラブの目標を叶え得る陣容が揃ったとみるべきスカッドだろう。 それでも最低ライン「5位以上」という設定に、慎重な姿勢も見え隠れする。急速に成長を遂げたとはいえ、昨季にJ1初昇格を果たしたばかり。秋以降には、クラブ史上初となるACL(AFCチャンピオンズリーグ)エリートの戦いも待ち受けるなかで、昨季の躍進を“ビギナーズラック”で終わらせない戦いぶりに期待したい。
FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓 / Akira Hashimoto