石川の星稜、センバツ選出 被災者に「一生懸命な姿を見せたい」
第96回選抜高校野球大会の選考委員会が26日に開かれ、能登半島地震の被害が大きい石川県から昨秋の明治神宮大会優勝の星稜が選ばれた。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 1日の能登半島地震で被害を受けた星稜は、野球部の始動も遅れた。さらに新型コロナウイルスの部内での流行、大雪の困難にも直面したが、石川県出身者が大半を占めるチームは野球ができることに感謝し、郷里の被災者のためにも聖地で活躍することを誓った。 能登半島地震で学校のある金沢市も震度5強を記録した。甚大な被害を受けた能登地方に地震発生時にいた部員はおらず、人的被害はなかったが、エース左腕の佐宗翼投手(2年)は「生まれてから地震はほとんど経験しておらず、怖かった。余震も続いたので……」と振り返る。校舎では棚が倒れて資料が散乱するなどし、安全確認や片付けのため始業式は1日遅れの10日にオンラインで実施された。 野球部は4日に始動予定だったが、練習は11日からと遅れた。グラウンドは亀裂が一部入るなどしたため、現在も使用禁止という。 1月中旬には山下智将(としまさ)監督や2年生部員らに新型コロナウイルス感染が相次ぎ、1月下旬は大雪で登校禁止となった時期に部活動もできなかった。山下監督は「全員でみっちり練習、というのは今年に入ってからほとんどできていない」と説明する。それでも、選手たちは「野球ができることは当たり前ではない」と口をそろえ、室内練習場で自主トレーニングに励んできた。 26日は午後4時ごろ、鍋谷正二校長からセンバツ出場決定を告げられたが、選手たちは被災者をおもんぱかって控えめに喜び、さらに全員で黙とうをささげた。 芦硲(あしさこ)晃太主将(2年)は「今、野球ができることへの感謝の気持ちを忘れず、(被災地のためにも)自分たちができることを頑張っていきたい」と強調した。 昨秋の明治神宮大会を32年ぶりに制し、優勝候補の一角として臨む2年ぶりのセンバツとなる。センバツ初采配の山下監督は「今も大変な苦労をされている方がたくさんいる。とにかく一生懸命やる姿を見せたい」。芦硲主将は「勇気と元気を与えられるかは分からないが、一生懸命な姿を見せて、(被災者に)少しでも楽しい気持ちになってほしい」と力を込めた。【大東祐紀】