[社説]21回も拒否権行使した尹大統領、「拒否権」で国政運営するつもりなのか
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が16日、野党主導で国会で可決された「黄色い封筒法案(労働組合および労働関係調整法改正案)」と「全国民25万ウォン(約2万7千円)支援法案(民生回復支援金支給特別措置法案)」に対して再議要求権を行使した。対話と妥協どころか、野党との真っ向からの対決ばかりに没頭する尹大統領の態度は、非常に懸念される。 大統領室のチョン・ヘジョン報道官はこの日、「野党の一方的な強行処理により、またも2つの法案に対して尹大統領が再議要求権を行使することになった」と述べた。拒否権行使の責任を野党に押し付けたのだ。「全国民25万ウォン支援法案」は、民生経済回復を目的として政府が全国民に1人当たり25万~35万ウォン(約2万7300~3万8200円)を有効期間4カ月の「地域愛商品券」で支給するとの内容を含んでいる。黄色い封筒法案は労働者のストライキに対する会社側の無分別な損害賠償請求および仮差し押さえを制限することを骨子とする。 チョン報道官は「全国民25万ウォン支援法案」について、「無分別に現金をばらまくポピュリズム的福祉、持続可能でない1回きりの現金支給」だと規定した。この法案に満足できないなら、政府与党は民生のためにどのような方策を取るべきか野党と協議しながら民生対策を導いていくべきだ。それが政府与党のなすべきことだ。さらに、今の国会は少数与党だ。しかし国会での議論の過程において、政府与党は反対の立場を繰り返すばかりで、対象や金額の調整などの合意点を見出すための最小限の努力もしなかった。 大統領室は、黄色い封筒法案については「『違法ストライキ助長法』と呼ばれるほど被害がそのまま雇用市場の萎縮と産業エコシステムの崩壊へとつながることが懸念される」と述べることにとどまっている。黄色い封筒法案は、間接雇用が広がっている労働現場において「使用者」の範囲を拡大し、損害賠償の仮差し押さえに耐えられず労働者が自ら世を去るという悲劇を防ぐとの趣旨を持つ。尹大統領があれほど強調してきた「労働弱者」のための法案だ。これもやはり野党や労働団体との対話を拒否し、反対の立場ばかりをオウムのように繰り返してきた。このように無責任な政府があったろうか。 尹大統領はこの日の拒否権行使で、就任から2年3カ月で実に21の法案を国会に送り返したことになる。李承晩(イ・スンマン)大統領(45件)を除くと、歴代大統領の拒否権行使の回数をすべて合わせた数と同じだ。行使を最小限にとどめるべき憲法上の権限を最大限に乱用し、政局を「無限政争」の渦に陥れたのだ。任期は半分以上残されているのに、引き続きこのように「拒否権」ばかりを行使して国政を運営していくつもりなのか。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )