「お疲れ様」中上貴晶選手がラストレースを終えて自分にかけた言葉【MotoGP第20戦ソリダリティGP】
20番手からスタートした最後のスプリントレースは17位でした。「予選まではほとんど無かったリアの挙動が、スプリントレースをスタートして出ていました。原因がわからないので、明日に向けて心配ですね」と語っていました。 コメントからもわかるように、土曜日までの中上選手は、いつもと同じレースウイークを過ごしていたようです。この日も翌日のラストレースに向けて心境を尋ねられたものの、意識はむしろ、「スプリントレースで起こったリアの症状」に向いていました。 「全く(心境の変化が)無いというわけじゃないんです。でも、今はそれ以上に、今抱えている問題の方が心配です。自分の最後、ということを考えるのに加えて、いろいろなものを考えないといけない。こうしたい、というのがいっぱいあるから、あまりゆっくり考える自分の時間がないんです」 「よく聞かれるんですけど、期待されているようなことが言えない」とも言い、中上選手は笑いました。 「(質問の意図は)わかるんですけど、言えないんです。その感情がないから(笑)! “最後なんですよ……”と、どーんとくるものがね、無い……」 そうして迎えた日曜日の決勝レースで、中上選手はどんな表情を浮かべたのでしょうか。
グリッド上で流れた涙
日曜日の決勝レースは、よく晴れた空の下で行なわれました。 この日、中上選手には2つの「感情的になったシーン」がありました。スタート前、お母さんとお姉さんがグリッドに来たとき、中上選手の目から涙があふれたのです。家族をグリッドに招いたことは、これまで「いつものレースウイーク」を過ごしていた中上選手のなかで、「いつもとは違っていたこと」のひとつでした。
「最後のレースなので、(チームマネージャーのルーチョ・)チェッキネロさんに“スタート前に家族で一緒に過ごしたい”と相談して、初めて家族をグリッドに招きました。泣くだろうな、とは思っていたけど、母に“ありがとう”と言われた瞬間に、きましたね。とくに母には“これまでありがとう”という気持ちがありました。母も泣いていました。ずっと、同じような思いで来たから。数分だけど、いい時間を共有できました」 その数分後には激しいレースを戦わなければなりませんでしたが、中上選手は感情の渦に身を置いたのち、すぐに切り替えることができたそうです。 「感情が揺らいだままスタートしてしまうのではないかと、ちょっと心配だったんですけど、意外に切り替えることができました。(家族との時間のあと)すぐに準備をして、意外にすっと集中できました。だからこそ、グリッドに家族を呼べてよかったと思います」 中上選手はソリダリティGP・オブ・バルセロナの決勝レース24周を完走し、17位でゴールしました。