日本のクルマ界には早すぎたのか バカ売れした人気の3代目アコード、"売れない車種"の理由を探った!
デザインのよさが理解されず
それからデザインそのものの評価。美しいと書いておきながら心苦しいが、筆者は現役時代のエアロデッキを見てカッコいいとも美しいともまったく思わなかった。いや、逆にヘンテコリンなデザインにしか映らなかった。これは筆者の友人なども同様で、好き嫌いの好みがわかれ、どちらかといえば否定派のほうが多かった気がする。それが時間を経過して、10年後くらいたってから実車を見て、「美しい」となったのだ。デザインには正解がないなか、これは見る目がなかったんだろうとしか言えない。 そのエアロデッキもカタカナ職業の方や、デリバリー系でオシャレさを強調したい場合には重宝されていた。
ホンダのイメージを爆上げ
チャレンジングだったエアロデッキは一代限りで消滅してしまったが、欧州ではアコードワゴンをエアロデッキという車名で販売していた。 当時のホンダはプレリュードの大ヒットなどもありオシャレなイメージが定着していた。売れたセダンと悲運のエアロデッキという好対照の結果に終わったが、アコード&エアロデッキの存在により、ホンダのオシャレなイメージは爆上がりし、さらに知的なイメージが加わったのは間違いない。 そのアコードは2024年3月から最新モデルが日本でも販売されている。初代モデルから数えて11代目となる。11代続いている日本車は少数派となるが、アコードは日本で買えるモデルはタイヤから輸入。車格もレジェンドクラスに大型化され、ジャストサイズだった3代目のイメージはまったくない。e:HEVを搭載する出来のいいサルーンという評価だが、影が薄すぎるのが悲しい。ホンダのビッグネームとしてはシビックが高らかに復活しているので、その復活の時を待ちたい。 【ホンダアコード2.0Si主要諸元】 全長4535×全幅1695×全高1355mm ホイールベース:2600mm 車両重量:1110kg エンジン:1958cc、直4DOHC 最高出力:160ps/6300rpm 最大トルク:19.0kgm/5000rpm 価格:198万7000円(4MT) 【豆知識】 リトラクタブルヘッドライトはスーパーカー御用達として世界的に人気となったが、特に日本車はスポーティカーを中心に積極的に採用された。日本車の初採用は1967年に登場したトヨタ2000GTで、普及のきっかけとなったのは1978年登場のマツダサバンナRX-7(SA22C)だ。ヘッドライトの最低地上高が規定されているなか、ノーズが低くしてもポップアップさせた状態で規定を満たすことができるため重宝された。しかし、ライトの規定の変更もあるが、衝突時の対歩行者の安全性の問題などから採用されなくなっている。 市原信幸 1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。 写真/HONDA、TOYOTA、MAZDA、ベストカー