【バレー】トヨタ車体・周田夏紀 春高優勝、文武両道の優等生が経験した戸惑い。「コートに入るのが怖かった。”すべてをやろうとしなくていい” 同期・大川愛海の言葉に救われました」 Ⅴ1女子
バレーボールV1女子、トヨタ車体クインシーズ・周田夏紀選手のインタビューをお届けする。 インタビューは5月4日、第72回黒鷲旗の大会中に行った。 ミドルブロッカーの周田選手は就実高校で春高優勝を経験。学業も優秀(学年主席級)で、文武両道に秀でたプレーヤーとして今後の活躍が期待されている。 今シーズンはリーグ前半戦こそスタメンとして活躍したものの、姫路から移籍加入した同ポジションの長野有紗選手が徐々に結果を出していったこともあり、後半戦は控えに回ることが増えた。周田選手にとってほろ苦い思いのシーズンになったかもしれない。 プロフェッショナルな世界での厳しさも味わった周田選手だが、黒鷲旗ではVNLに出場するタイ代表バムルンスック・ハッタヤ選手に代わってスタメン入り。長野有紗選手と対角を組んで躍動感のあるプレーを見せてくれた。 シーズン後半に苦しんだ経験が周田夏紀を次のステージに押し上げるか。 周田選手に今季を振り返ってもらった。
――入団して3シーズンが経過しました。年齢は若いですが、プレーヤーとしてはだんだん中堅に差し掛かってきますね。今季を振り返っての感想は? 周田:ここ半年間くらい、気持ちの変化がすごくありました。シーズンの前半はスタメンで試合に出してもらっていましたが、前半戦の終わり頃から 「全然ダメだな、もうちょっとやらなきゃ」 「自分がチームの足を引っ張ってるな」 って感じていて。 そこから半年ぐらい、その感情を引きずったというか。コートに入るのが怖かったんです。笠井(季璃)とか年齢が下の子たちも入ってきて頑張っているのに、私は全然上手くプレーできなくて。こんな状況でいいのかなって。年齢はまだ若いのかもしれないですけど、もうそれを言い訳にしてはいけない入団年数になってきたとも思っていて。 ――具体的にどういうことが怖いと感じた? 周田:ミドルってエースアタッカーみたいに打数がすごく多いわけではないですよね。だから1打1打が大事というか。 状況的にも相手のブロックが2枚ガッツリついてくるわけじゃなくて、1対1になったり、いい状況で使ってもらえることが多い。そういう場面でミスした時に焦ってしまって、「取り返さなきゃ、取り返さなきゃ」って。 数字も意識し過ぎてしまっていたと思います。 「3本打ってるけど、1本ミスしちゃった」 とか。 「ミドルが効かないとサイドを助けられないのに、自分のせいでサイドにマークがついてしまった」 …そんなことをずっと試合中に考えてしまっていて。 コンビが合わなかったらどうしよう、決まらなかったらどうしよう。 「自分にトスが来るのが怖い」 そんな状況でした。 ――周田選手は学業も超優秀、想像力も豊かだと聞きました。それがかえって仇になるというか、いろいろ考えすぎてしまうことに? 周田:高校生の時は「こういう状況になったらこう考えよう」とか、事前に何パターンもメンタルの切り替えを用意していたんです。試合の時は、こう考えれば上手く行くよねっていう(鉄板のパターンも)自分の中ではあったんですけど、この半年はそれを心の中で自然な感情として生むことができなくて。感情ってやっぱりコントロールできないから…すごく難しい時間でした。 実力不足が大きいのだとは思いますが、そうですね…考えすぎなところもあるし。チームに入ってからここまで思うようにできないことは初めてで。 ――そんな大変なことになっていたんですね。しかし、黒鷲旗でのプレーには気持ちが入っているなと感じましたし、活躍も光っていました。この大会にはどういう思いで臨んだのでしょうか? 周田:実は黒鷲旗が始まる2、3日前まで、やっぱりスパイクが全然決まらなくて。 でも、そういう状況でも周りに「上手くプレーできない」とか「どうしたらいいかな」って言えなかったんです。 人に言ったことがなかったんです。そういう弱気な戸惑いみたいなことは…。 それを初めて相談しました。相手は同期の大川愛海です。 大川は親身になって話を聞いてくれて、「全部やろうとしなくていいから」って言ってくれて。自分の中ですごく心が楽になったんです。 そうか、「全部やろうとしなくていいし、焦らなくていいんだな」って。 大川のその言葉にすごく助けられて。 明らかにそこからですね。心の持ちようが変わりました。 本当に大川には感謝してもしきれないですね。黒鷲はそれがあったからちょっと調子が上がったというか、コートに向かって行けたのかなって思っています。