「自分は10億なんてすぐ稼げる」就職マッチングサイトで「外資系即戦力人材」を採用した企業の「悲惨な末路」
大の大人がブチギレて…
半年経過した時点でさすがに業を煮やした社長が、竹内に直接対峙することになりました。ところが彼の反応は予想外ものでした。 「今まで黙っていましたが、そもそも自分は月給100万円以上の人材です。それを10万円や20万円で使っているわけですので、そこは考慮してくれませんか?それとも、報酬を5倍10倍にしてくれますか?」 と、竹内はまるでA社に非があるかのように、論点をズラしてきました。 さすがにこれには社長も我慢の限界。「結果が出る様子もないので、契約書に基づいて1ヵ月前告知として、解除させてください」と申し出ました。すると、竹内の態度が更に豹変します。いい歳をした大人が声を荒げたんです。 「この俺が忙しいなか時間を作って頑張っているのに、お前らのデキが悪いから結果に向かうのが遅いだけやろうが。お前らには能力もなければ誠意もないのか? こっちも自分が悪者にされたらたまらんし、お前らは誠意がない会社だってのを、この業界で言いふらしたるわ。SNSで大っぴらに書くと警察沙汰になるから、ちゃんと個別連絡でやるからな」 など放言し、揺さぶりにかかってきたのです。逆ギレどころか、恐喝まがいです。しかも、それまで全く発してなかった関西弁には、その場にいた全員が言葉を失ったそうです。 逆ギレしてからはほぼ悪態で、契約解除にもいろいろないちゃもんをつけてきました。しかしその目的は、関係性を立て直して良い結果に向かおうということでもなければ自分をわかってもらおうとしているとは到底思えません。なぜ、ダラダラとこんなことに時間を使うのか。当初はそのことが不思議だった安東さんですが、やがて巧妙に仕掛けられた罠に気が付きました。
「違約金で誠意を見せろ」
「あれはただの時間稼ぎであり、この間にも業務委託料は発生しました。思い返せば、契約を結ぶ際に報酬形態を決めるときに、当初こちらは高めの設定での時給報酬を提案していました。 他の業務委託者との間でモメたことはなかったのですが、その時だけ、笑顔を交えながらではありましたが色んな理由を言って頑なに月単位での報酬設定にこだわったのです。 こちらとしてはそこそこの業務量になるミッションだと思っていたので時給換算のほうが得だと思いますという話もしていたので、その時は不思議に思っていました。でも、この気づいた時には手遅れでした」(安東さん) 契約書面の解釈によっては会社としては竹内の態度を理由に報酬の支払いを止められますが、その点も弁護士を立てて戦うことを匂わせてきたことで「解釈で争えば、より面倒な出費と時間がかかるだけ」と、会社も思ってしまうという戦術なのでしょう。 そして会社が面倒くさくなっていることを見計らい、竹内から提案が飛んできました。 「違約金で誠意を見せるなら、大人しく解除に応じたるわ。何も妨害せん」 しかも最初は1年分の報酬を言ってきたのが、4ヵ月分で決着をつけるというのです。 「あの時はホッとしました。ようやくあの面倒な奴と縁が切れると。でも、冷静になって考えると、こちらは何も得ていないし、悪いこともしてないんですよね……」(安東さん) 事態が鎮静化してからようやく、BRSと関わってきたこの期間、実質的には何も課題が解決していない、BRSへの依頼事項は進んでいないことに会社は気付きます。お金に加えて時間も失ってしまいました。 表面的な印象と序盤のやり取りの好感触で目がくらんだものの、いつまで待っても待ち焦がれた良い結果はやってこない。いつまでもああだこうだという進まない理由を色々聞かされて時間が経つ(その分、報酬を払う)こと、そして出会いは手軽でポップなマッチングサービスというあたり、まるでロマンス詐欺の企業版です。 なんとかBRSと縁が切れたA社でしたが、さらなる悲劇が訪れます。むしろA社の悲劇はこれからが「本番」でした。