“無駄な会議を10人で2時間”行う場合、費やすコストはいくらか?
会議の生産性を高める
会議の生産性を上げる方法として、会議のアジェンダを数日前に参加者に送っておくことが挙げられる。事前情報を持たずに会議に集まるのは非生産的だ。もちろん緊急会議が必要なこともあるが、少なくとも定例会議にはアジェンダの準備が必須だ。 自分以外が会議の案件を知らなければ、自分のエゴは満たされるかもしれないが、会議の質は犠牲になる。アジェンダを作ってすべての議案をリスト化し、案件ごとの予定時間も明記しておこう。できる限り、予定時間どおりに議事を進行したい。予定終了時刻を超えて続く会議ほど腹立たしいものはない。 予定終了時刻が近づいてもまだ議案が残っている場合には、会議を延長するか、再招集をかけるか、次回に持ち越すかを決定しよう。時間が足りなくなったら、アジェンダを修正して、残り時間で緊急案件から片付けるようにしよう。 議案によって議事進行の担当を替えるのも妙案だ。担当者は、より会議に主体的に関わるようになるし、リーダーシップやファシリテーションのスキルを獲得する機会にもなる。 参加者の主体性を高めるには、次の会議で発言して意思決定に貢献できるよう部下に準備させるのもよい方法だ。気づかなかった組織課題や今後のビジネスチャンスを指摘してくれるかもしれない。 会議は常に時間厳守で始めよう。開始時間を過ぎても誰かを待つようでは、貴重な時間と労働力が無駄になってしまう。必ず定時に開始すると周知されれば、参加者の時間に対する意識も高まるはずだ。それに、時間どおりに来た参加者たちに「私たちより、遅刻してくる人のほうが大事なのか?」と感じさせてはまずい。 アジェンダは、重要な順に議論するのが鉄則だ。些細な案件が冒頭に設定されているため、そこに時間を食われるダメな会議の経験はあるだろう。これでは重要案件を議論する時間は永遠に足りない。
マネジャーのやりがちな会議での過ち
会議のプロセスに慣れていないマネジャーは、すべての案件で自分の意見を述べなければならないと考えがちだが、そんな必要はない。問題だとあなたが思う案件に対して意見すべきであって、喋ったほうがよさそうだから喋るのでは意味がない。 すべての議案にガチャガチャと口を挟むよりも、案件を絞って考え抜かれた意見を述べるほうが、ずっと効果的だ。会議に同席する上長に「ジョンはいつも何か発言しているが、たいして大事なことは言わないな」と思われるのではなく、「ジョンは思慮深いね」と思わせたいところだ。 かといって、会議中まったく黙っているのは問題外だ。発言する自信がない、会議に何も貢献できない、あるいは議題に興味がない、などと思われてしまう。そんなイメージを持たれるのは嫌だろう。たとえ本当は緊張していても、狼狽ぶりを見せてはならない。 会議では自分の部下をけなすような発言をしないこと。自分の部下を信用できないのかとネガティブに受け止められる。対処すべきは状況であって、個人攻撃は不要だ。 上級役員の前で自分の部下をボロカスに言ったために、キャリアが終わったマネジャーもいる。冗談のつもりだったのかもしれないが、この手の場違いな行動は損をするのでやめておきたい。 上級役員の参加する会議を、自分のマネジメント能力と判断力のお披露目の場だと捉えているマネジャーもいる。それが上手にアピールできるなら問題にはならないのだが、他のマネジャーとの競争だと勘違いすると、おかしなことになる。 マネジャーの目標はチームの一員として生産性を高め、組織貢献することであって、他のマネジャーに恥をかかせることではない。会議の議論に競争を持ち込むのは間違いだ。 他にありがちなマネジャーの間違いとしては、経営トップがどちらの判断をするかを読んで、その意見の側につくことだ。 上長は自分に賛同してくれるマネジャーを気に入るはずだ、あるいはマネジャーは上役には賛同すべきだ、と思い込んでいるのだろうが、これは経営者には瞬時に見抜かれて、気骨のない奴だと思われるだろう。 上司と意見が違う場合には、攻撃的にならずに感じよく、論理的に説明をするべきだ。何にせよ、反論はあるべきだ。全員が何でもトップに賛成するなら、そもそも会議など不要である。 とはいえ、経営トップと異なる立場を取る勇気のないマネジャーは多い。何の意見も持たずにトップに賛成するだけよりも、たとえ反論であっても考え抜かれた意見を言えるマネジャーのほうが、キャリア上、おそらく有利になるはずだ。 さらには、あえて間違った意見を投げてみて、権力に従順な奴は誰かをチェックしてから、正しく反論を述べた側に同意する役員もいる。太鼓持ちのスキルだけで役員まで出世できた人は少ないだろう。 プロジェクトの議長や、会議出席者の中で役職が上の人は、他の全員が意見を述べた後で自分の意見を言うほうがうまくいくだろう。 たとえば、メンバー7人の企業再編プロジェクトを社長が束ねている場合、他の6人が意見を言うまでは、社長は意見を言わずにいるのが賢明だ。これで社長に媚びた発言も防げるし、社長の反応を恐れて反論や不都合なデータを出しそびれる事態も避けられる。 経営者は自分と意見を合わせてくれる部下やプロジェクトメンバーを求めているわけではない。トップが最後に意見を言う方式を取れば、新人マネジャーは「違う意見があっていいんだ」と学習できるだろう。 もちろん、先述のように、「イエスマンは不要だ」と言いながら、実際には真逆の態度を取る役員もいる。こういう経営者のもとでは、上司におもねった発言しかしない部下と、たいして検討せず承認印を押すだけのチームになってしまう。これでは全員の時間の無駄使いである。
ローレン・B・ベルカー, ジム・マコーミック, ゲイリー・S・トプチック