米の地雷供与に反対運動 カンボジア被害者「地雷のない世界を」
米政府がロシアの侵攻を受けるウクライナへの対人地雷の供与を容認したことに対し、内戦中に埋められた地雷による被害が今も続くカンボジアで反対運動が起きている。24日には北西部シエムレアプにあるアンコールワットに地雷で手足を失うなどした被害者らが集まり、「地雷のない世界を」と声を上げながら行進した。 行進は対人地雷禁止条約(オタワ条約)に関する国際会議がシエムレアプで開催されるのに合わせて実施された。ウクライナは条約の加盟国だが米国やロシアは非加盟。オースティン米国防長官は20日にウクライナがロシアに対して地雷を使用することを容認すると明らかにした。供給するのは一定期間後に電池が切れるなどして使用できなくなる種類だとしているが、市民が事故に巻き込まれる懸念はぬぐえない。 AFP通信によると、行進には地雷除去作業の従事者や探知犬も参加した。内戦中に右足を失った元兵士は「私のような被害者が生まれることになる」と話したという。 カンボジアでは1990年代初めまで約20年続いた内戦で、推定400万~600万個の地雷が埋められたとされる。日本、ドイツ、フランスなどの支援で地雷処理が続けられてきたが、今も一般市民が爆発事故に巻き込まれる被害が出ている。 カンボジア地雷対策・犠牲者支援庁によると、79年から今年6月までの地雷や不発弾による死傷者数は6万5072人で、うち死者は2万人近くにのぼった。2024年1月以降だけでも死者8人を含む35人が被害に遭い、12人は18歳未満だった。畑仕事中や遊んでいる最中などに事故に遭うケースが多いという。 ウクライナにもロシア軍が敷設した地雷や不発弾が多数埋まっているとされる。カンボジア政府は23年1月、日本政府と協力してウクライナの地雷除去作業員に訓練を実施していた。【バンコク武内彩】